Artist Interview シャオ・クゥ × ツゥ・ハン Xiao Ke × Zi Han

Posted : 2015.02.04
  • mail

Director Interview 丸岡ひろみ | Artist Interview シャオ・クゥ × ツゥ・ハン|TOPへ戻る

TPAM アーティストインタビュー

どんな作品になるかは、その場のリサーチによって決まります

中国と日本の両国に共通する芸術形態「ミニアスケープ=盆栽や庭園芸術」をテーマにした作品で2月12日(木)KAAT神奈川芸術劇場に登場する2人の中国人アーティスト、シャオ・クゥ×ツゥ・ハン。ダンス、音楽、ビデオアートといった領域を横断しつつ、舞台上に抽象的なランドケープを作り出す「ミニアスケープ」とはどんな作品になるのか? 2か月間日本に滞在し、作品のためのリサーチを続けているお二人におうかがいしました。


まずはお二人のこれまでの活動について教えてください。

ツゥ・ハン(以下ツゥ):2010年から共同作業をはじめています。私はオーディオビジュアルを専門として視覚、音響の分野で、彼女は元々ダンスのバックグラウンドがあり、演劇や現代美術の分野でもコラボレーションしてきました。

シャオ・クゥ(以下シャオ):ダンス、社会的な問題を扱ったもの、特定の場所のために特別に制作するサイトスペシックな作品、コンセプチュアルなもの、大きく分けるとこの4つの分類で作品を創っています。

ツゥ:中でも社会的な問題を扱ったライブパフォーマンス、我々はソーシャルシアターと呼んでいますが、これについて少し説明を。私たちを取り巻く生活や、社会的な環境を扱っているのですが、作品を創る際には、それを発表する場でリサーチをします。昨年、初めて参加したTPAMでも、短期の滞在ではありましたが、丹念にリサーチをして作品につなげました。

シャオ:どんな作品が出来上がるかは、その場のリサーチニよって決まってきますので、現場のスタッフを困らせてしまうやり方でもあります。ただしこの有機的な作業は私たちを駆動させる重要なものなんです。

シャオ・クウ(写真左)とツゥ・ハン(右)

シャオ・クウ(写真左)とツゥ・ハン(右)

シャオ・クゥ×ツゥ・ハン「Miniascape」公演詳細はこちら

ツゥ:以前、ヨーロッパで過去の作品の再演というオファーがきたことがありましたが、私たちにとって別の場所のために創られた作品を再演することはまったく意味がないんです。現地の観客とのコミュニケーションを介した作品を創り上げることが重要であり、発表する場所に基づいた作品を常に創っています。


 2か月間の日本滞在。いろんな方との対話に費やしました

昨年、TPAMに初参加したときの感想は?

シャオ:アメイジング(素晴らしかった)!ただ、前回は滞在期間が非常に短く、10日間のうち4日間が本番で、パフォーマンスをしながらリサーチもするという方法をとりました。

ツゥ:1つの作品ではありながら、パート1~4まで分かれており、それぞれが別の場所で行われる。全体を通して見るとようやくコンセプトが見えてくるという作品になりました。1つのパートしか見ていない観客は困惑したかもしれません。TPAMが私たちのアイデアを全面的にサポートしてくれたので何とか実現できました。

シャオ:前回の滞在時に強く感じたことは、日本と中国の社会問題が非常に似ていたこと。ちょうど都知事選をやっていて、日本の政治はより市民に開かれているようで実はそうでもなかったり、投票率が低かったり、そういった政治に対しての問題もどこか共通するものがあるなと思いました。

ミニアスケープ(=盆栽や庭園芸術)というテーマはどんなところから?

ツゥ:私たちの活動のテーマに「Useless(役に立たない、無用な)」というキーワードがあります。これを最初のモチーフとしました。

シャオ:私たちの感じる「Useless」とは、現代の日本ともつながるのではないか?というのも2011年の震災からの復興、そして東京にオリンピック招聘。これは2008年に起こった2008年に中国で起こった四川大地震のときと非常によく似た状況です。私たちはこのとき、政府が一気に流れを作ろうとすることに対しての、個人としての「Useless」を痛感しました。この思いはもしかしたら日本で作る作品とつながるのでないかと考えたのです。

ツゥ:それと、盆栽は中国でもよく見られるもので、日本とも共通する文化です。美しい自然を装っているけれども実はかなり人工的、という部分が面白いなと。もうひとつ、なぜ盆栽または箱庭に魅かれたかというと、自分たちの活動は、箱庭のように小さな、物事を俯瞰できるようなものを作っているのではないかと思ったのがきっかけです。日中の違い、政治の問題など考えれば考えるほど複雑でシリアスになりがちですが、今回の作品を通してその問題を抽象的な形で表現したいなと思っています。

シャオ:盆栽は、1つの小さな木から宇宙や世界を感じることができるものですが、現代の視点で見てみると、無理矢理に木を仕立てあげるというある種の暴力性が含まれているのではないか? そして日本人はそのことについてどう感じるのか? そんな考えが、私たちが日本を考えるうえで興味深い起点となりました。盆栽は日本を語るうえで1つの要素に過ぎないですが、リサーチを続けることで切り口となって表現できることが出てきているなと感じています。

ツゥ:今回の作品は、滞在期間が2ヶ月ありますので、制作のために時間を割くことができました。芸術家だけでなく、若い方、年配の方、そしていろんな職業の方々と対話することに費やしました。

左:ツゥ・ハン、右:シャオ・クゥ


 「Useless」と「禅」は今回のリサーチで重要なポイントでした

滞在の成果はいかがですか?

ツゥ:(取材時点で)だいたい1ヵ月ほど滞在したわけですが、いろんな方と対話をすすめていく中で鍵となるポイントがいくつも出てきました。たとえば、先ほどお話した「Useless」ですが、日本においては必ずしもマイナスのイメージではないということが分かりました。日本人は「どうしようもできなさ」に対して、とても自然に付き合っている感じがしています。地震や原発の問題に直面したとき、自分にはなす術がないのでそれを許容するしかない、というスタンスをいろんな方との対話から感じました。

シャオ:「Useless」という言葉は、日本人にとってネガティブでもなければポジティブでもない。しかし強い作用があることは間違いないので、それがどういった感覚で日本人の生活に影響を与えているのか、ということが気になっています。これは「禅」の思想と密接な関わりがあるとも思っています。京都にも滞在し、いろんなお寺なども見て分かったことは、中国人の思う「禅」と日本の「禅」はやはり違ったニュアンスがあるということです。中国から渡った禅思想が、なぜ違うものへ変容していったのか。広大で肥沃な大陸である中国に対し、日本は海に囲まれ、周りから切り離された島国であること、ここに理解の鍵があるように思います。置かれた環境ゆえのもったいない、無駄にしちゃいけないといった精神が日本人には根付いているのではないか。もちろん、日本人だからといって禅のことを常に考えて生活しているわけではないでしょう。でも生活の中にしっかりと刷り込まれている。日本人の気質としてのプラティカル(=実用主義)な側面に私たちは禅が違ったものになった理由を見出しました。

ツゥ:Uselessと禅は今回のリサーチで重要なポイントでした。今回は大きなトピックを掲げているわけですが、そこからどう抽象的にしていくか。現時点のイメージとしては、ステージに小さなランドスケープを並列するような、そんな形を考えています。

シャオ:この「Miniascape」という作品、TPAMでは2度目となります。前回は香港で発表したものに基づいたものでしたので、日本でのリサーチを重ねた今回は、まったく違った内容になると思います。

 

シャオ・クゥ シャオ・クゥ Xiao Ke
6歳より中国伝統舞踊の訓練を受け、上海の復旦大学に入学後はモダン・ダンスを学ぶ。1998年、「XKダンス・スタジオ」を設立。2002年、現代美術家たちとのコラボレーションを開始する。2005年「ZuHe Niaoフィジカル・シアター・カンパニー」をZhang Xianやその他のアーティストと共に旗揚げ、2006年にチューリヒ・シアター・スペクタクルでZKB賞を受賞。2007年「アグリー・パフォーミングアート・スタジオ」を北京に設立。2011年、Zhou ZihanとZhang Yuanと共に、越境と多様性をテーマに社会に切り込んでいくことを目的とした「Cannot Help Art Collective」を設立。これまでに、上海、北京、香港、オランダ、ドイツ、イタリア、フランス、オーストリア、ノルウェー、シンガポール、スイス、イギリス、アイルランドで公演を行なっている。近年では演劇というジャンルに留まらず、現代中国が抱える現実に訴えかけるような、ソーシャル・シアターの先駆者として多様な芸術活動を展開している。

ツゥ・ハン ツゥ・ハン Zi Han
写真家としてキャリアをスタートし、独立系アート施設CANARTを上海に設立。2008年から2010年にかけて、数多くの現代アート展や演劇の上演を友人たちと主に行なう。2009年、劇作家・演出家のZhang Xian、オランダのアート・インスティトゥートBorneocoと共に「Shanghai Transboundary Art Festival」を立ち上げ、国内外の多くのダンサーや振付家たちと交流を深め、現代舞台芸術の世界へと足を踏み入れることになった。
2010年、上海のアーティスト集団Zu He Niaoに参加し『紅い部屋の夢』で映像担当およびパフォーマーとしてツアーに参加した。
 引き続き、ビジュアル・アートやライブ音楽、演劇と多ジャンルにわたり、写真・ビデオ・現代美術・音楽作品を発表している。
これまでにクリエーションに関わった作品は、オランダのJULIDANSや、ドイツのTanzhaus Nrw, HELLERAU、フランスのRencontres Choregraphiques やイギリスのエジンバラ・フェスティバル・フリンジ等で上演されている

 


Director Interview 丸岡ひろみ | Artist Interview シャオ・クゥ × ツゥ・ハン|TOPへ戻る