横浜美術館で若手日本画家の個展 New Artist Picks  「谷保玲奈展—共鳴」

Posted : 2018.03.28
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横浜美術館は、企画展とともに「New Artist Picks (NAP)」シリーズを毎年開催し、将来活躍が期待される若手作家を紹介している。今回紹介するのは、日本画家・谷保玲奈(たにほ れいな)さん。「これが日本画?」と驚かされるような鮮やかな色彩、吸い込まれそうな深みを体感できる作品群に出会える展覧会は、4月22日まで。 

《ウブスナ》2017年、岩絵具・雲肌麻紙、194.0×650.0cm

 

谷保玲奈さんは1986 年生まれ、本格的な創作活動を開始して5年目ながら、すでに数々の受賞歴のある、注目の若手日本画家だ。会場の横浜美術館アートギャラリーに入るとすぐに目に飛び込むのは、幅6メートル以上もの大作『ウブスナ』の圧巻の光景だ。ザクロなどの植物やキノコ、金魚などの生物が微細に緻密に、かつうごめきだしそうな躍動感をもって描かれている。その鮮やかな色彩はアクリル絵具か油彩かと見まごうが、じっくりと目を凝らすと岩絵具ならではの煌めきもある。また複雑な構図のため、海の中なのか森の中なのかそのどちらでもあるような不思議な世界に引き込まれてしまいそうになる。

《共鳴》 2018年、岩絵具・雲肌麻紙、227.3.×291.0cm

 

谷保さんの制作の背景には、生命発生の始原に対する強い関心や生命記憶の神秘への共感や共鳴がある。この展覧会のために制作された新作『共鳴』にもそれは如実にあらわれている。幅3メートル近く、300号の大作のテーマはまさに「自分と他者との共鳴」という。
「人と人との偶然の出会いや、モチーフとの出会い。日々の暮らしのなかで何も感じないものもあれば、強く惹かれあうひとやものもあります。そうした言葉では説明できない「共鳴」を、描き続ける理由や、運命的な課題のようなものとして感じています」
と谷保さんは話す。また、
五島記念文化賞受賞後、スペイン研修から帰国した後に、じっくり取り組んだ作品です。自分に足りないものや課題などを感じながら、今の自分にできることを出し切って描きました。このタイミングで展示の機会をいただいたことに感謝しています」とも。
見れば見るほど思いがけない発見があり、不思議な感覚に浸れる谷保さんの作品を、じっくりと目を凝らして感じてみてほしい。

《ウブスナ》に加筆する谷保玲奈さん(横浜美術館・アートギャラリー1にて)

 

会場の「アートギャラリー1」を出た後には、「Café小倉山」に立ち寄るのをお忘れなく。作品1点と制作過程を伺い知れる素描が展示されている。スケッチブックの精密なデッサンや色彩の重なりを試みる断片にも、谷保さんの生命観の捉え方が見て取れる。

画材ラボ「PIGMENT」にて岩絵の具を選ぶ、谷保玲奈さん

 

 

【プロフィール】

谷保玲奈 TANIHO Reina 

1986 年 東京生まれ、多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画領域修了、2014 年 第 25 回五島記念文化賞 美術新人賞、2015 年 第 6 回東山魁夷記念 日経日本画大賞 選考委員特別賞、2016 年第 52 回神奈川県美術展 県立美術館賞ほか受賞多数。展示歴に、2016 年「はじまり、美の饗宴展」(国立新美術館)、2016 年「日本画、新 しき風にのせて」(茨城県天心記念五浦美術館)など。

 

 

【イベント概要】

New Artist Picks     谷保玲奈展——共鳴

http://yokohama.art.museum/exhibition/index/20180317-503.html

会期:2018年3月17日(土)~4月22日(日)
開場時間:11時~18時 *Café小倉山は10時45分から
休館日:木曜日 
会場:横浜美術館 アートギャラリー1、Café小倉山
住所: 神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1
アクセス
みなとみらい駅(みなとみらい線)〈3番出口〉徒歩3分 
桜木町駅(JR京浜東北・根岸線、横浜市営地下鉄ブルーライン)徒歩10分(<動く歩道>を利用)
観覧料:無料