岩渕貞太ら「急な坂スタジオ」拠点アーティストの公演、ぞくぞくと!

Posted : 2016.02.05
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横浜の創造界隈拠点のなかで舞台芸術の分野に特化し、アーティストの創作のための稽古場としてさまざまなサポートに取り組んでいる急な坂スタジオ。現在開催中の国際舞台芸術ミーティングin横浜2016(TPAM2016)では、急な坂スタジオのレジデントアーティストやサポートアーティストが、ぞくぞくと作品を発表する。注目の公演を紹介しよう。
2014年『斑(ふ)』

2014年『斑(ふ)』

 
アーティストの活動をサポートする舞台芸術の創造拠点・急な坂スタジオ

舞台芸術の創造拠点として2006年に横浜・野毛にオープンした急な坂スタジオ。「稽古だけじゃない稽古場」というスローガンのもと、横浜の舞台芸術シーンを下支えする施設として重要な役割を担ってきた施設だ。

その取り組みのひとつに、レジデントアーティストの活動があげられる。急な坂スタジオでは、ともに考え新しいことに挑戦するパートナーとして特定のアーティストたちを迎え、彼らの創作活動の場をサポートしながら、横浜ならではの創造・発表のあり方を模索してきた。急な坂スタジオ近隣の文化施設である野毛山動物園などと連携した、急な坂スタジオのプロデュースによるレジデントアーティストの公演にも多くの実績がある。

また近年は急な坂スタジオ・横浜にぎわい座(のげシャーレ)・STスポットによる3館連携のもと、稽古から作品上演までをトータルサポートする若手舞台芸術家の創作支援プログラム「坂あがりスカラシップ」を実施している。若手アーティストが横浜で時間をかけて作品づくりに取り組み、企画段階や稽古場での創作から劇場での発表に至るまでアーティストの課題や挑戦に寄り添ったサポートで、若手アーティストの次のステップを後押ししている。本スカラシップを卒業したアーティストは、急な坂スタジオのサポートアーティストとして引き続き創作のサポートを受けていることも魅力のひとつだ。

レジデントアーティスト、岩渕貞太『斑(ふ)』2月12日からのげシャーレで

そんな急な坂スタジオのレジデントアーティストのひとり、振付家・ダンサーの岩渕貞太さんは、2014年に発表して話題を呼んだ作品『斑(ふ)』をTPAM2016のショーケースの公演として再演する。

動き続ける3名のパフォーマーと、光、音が影響しあいながら舞台空間がつくられる本作。岩渕さんとともに出演するのは、モモンガ・コンプレックスをはじめ多くの舞台作品でさまざまな表情をみせる北川結さんと、自身のソロ作品でも高い評価を得ている小暮香帆さんだ。即興的な要素を含みながらも緻密な振り付けをする岩渕さんの独自のスタイルを、本作『斑』ではぞんぶんに堪能することができる。再演に際し、作家・舞踊評論家の乗越たかおさんがコメントを寄せている。

2014年『斑(ふ)』

2014年『斑(ふ)』

「(中略)『斑(ふ)』は豊穣な時間であると同時に、リスキーな舞台でもあった。ほぼ即興で緊密な時間を保ち続けなければならないため、刹那の迷いが空間を崩壊させる。共演した北川結と小暮香帆は岩渕の動きを深く理解したうえで自分の持ち味を載せ、創作過程における意思疎通の充実ぶりを示した。この舞台は一般の観客のみならず、ダンサーや振付家にも多くの刺激と示唆を与える舞台なのである。」(乗越たかお、『斑』公演フライヤー 推薦コメントより)

本公演は2月12日から14日までの3日間、横浜にぎわい座・のげシャーレで4公演の上演となっている。待望の再演をお見逃しなく!

TPAMディレクション 加藤弓奈(急な坂スタジオディレクター)ディレクション公演

TPAMでは、独自の視点で活動を行なう制作者達がディレクターとして選任され、自由なコンセプトと新鮮な目線から作品を紹介している。今年のTPAMディレクションには、急な坂スタジオでディレクターを務める加藤弓奈さんが参加している。

今回加藤さんがディレクションしたのは、山本卓卓さん(範宙遊泳)のソロプロジェクト「ドキュントメント」が北尾亘さん(Baobab)とタッグを組んで制作された『となり街の知らない踊り子』と、チェルフィッチュの『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』の2作だ。

Photo: Manaho Kaneko

Photo: Manaho Kaneko

チェルフィッチュの岡田利規さんは、立ち上げ当初のレジデントアーティストとして急な坂スタジオを拠点に創作活動を重ねてきたアーティスト。北尾亘さんは現在サポートアーティストとして活動しており、いずれも急な坂スタジオとともに創作を行ってきたアーティストたちだ。加藤さんは今回のディレクションにどのような意図を込めているのだろう。

「劇場で、あるいは他の特別な会場や空間で作品を観るとき、私は『ひとり』であることを強く意識します。(中略)今回のディレクションでは舞台上に『ひとり』しかいない作品を選んでみました。その『ひとり』から複数の人物・存在・状況がみえてきます。豊かな言葉や、雄弁な身体。パフォーマーとあなた自身の1対1の時間を感じてください。贅沢で濃密な時間になるはずです。そしてそれは、自分と社会の距離感を改めて問い直す時間になるでしょう。」(加藤弓奈、急な坂スタジオディレクター)

©おおいたトイレンナーレ実行委員会 Photo: Yasunori Takeuchi

©おおいたトイレンナーレ実行委員会 Photo: Yasunori Takeuchi

 

加藤さんのTPAMディレクションには、舞台芸術の創造拠点として急な坂スタジオが育んできたアーティストとの関係が反映されている。残念ながら本2作はすでに完売してしまっているが、急な坂スタジオのレジデントアーティスト、坂あがりスカラシップ対象者、サポートアーティストのこれからの活動にぜひご注目を。

レジデントアーティスト:岩渕貞太、柴幸男、矢内原美邦
坂あがりスカラシップ対象者:野上絹代
サポートアーティスト:北尾亘、木ノ下裕一、酒井幸菜、白神ももこ、藤田貴大
これまでのアーティストたち:岡田利規、橋本清


○プロフィール
岩渕貞太
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1980年神奈川県生まれ。2005年より、「身体の構造」や「空間や音楽と身体の相互作用」に着目した振付作品を発表する。2010年から大谷能生や蓮沼執太など音楽家と共に身体と音楽の関係性をめぐる実験作を継続的に発表。その他にもアニメーション作家・現代美術家など、他ジャンルの作家とのコラボレーションにも精力的に取り組んでいる。世田谷美術館のエントランス、横浜美術館グランド・ギャラリー、六本木アートナイトでの野外公演など劇場外でも空間の特性を活かしたパフォーマンスを発表。その他ワークショップの開催など多方面で活躍している。関かおりとの共同振付作品『Hetero』で、横浜ダンスコレクションEX2012「若手振付家のための在日フランス大使館賞」を受賞。急な坂スタジオレジデントアーティスト。アトリエ劇研アソシエイトアーティスト。

 
 
○公演情報

『斑(ふ)』
2月12日(金)19:30
2月13日(土)14:00 / 18:30
2月14日(日)14:00
http://teita-iwabuchi.com/
上演時間:60分 
会場:のげシャーレ(横浜にぎわい座)
神奈川県横浜市中区野毛町3丁目110番1号
最寄り駅:JR線・市営地下鉄線「桜木町」駅下車、徒歩3分
料金:前売3,000円、当日3,300円、TPAM参加者特典:¥2,800(前売のみ)
ご予約:https://www.quartet-online.net/ticket/fu2016
お問い合せ:電話 070-3537-0866 /メールinfo@teita-iwabuchi.com