OPEN STUDIO 2015:東京藝術大学メディア映像専攻

Posted : 2015.07.17
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新港校舎に研究室を構える東京藝術大学映像研究科メディア映像専攻。今月18~20日、25・26日に、修士2年生と1年生による「OPEN STUDIO 2015」が開かれる。映像研究科は「制作の現場」をもつ実践的な教育の場として知られる。学生は日々どのようなことに取り組んでいるのだろう? 準備まっただ中のスタジオを訪ね、本展への意気込みを聞いた。

new media

 

ストレートな表現をしていない――既存のメディアの枠を超えようとする作品群

 

2005年に横浜市を拠点に開設した東京藝術大学大学院映像研究科。教育はもちろん、公開講座やオープンスタジオ(OPEN STUDIO)にも取り組んでおり、学生以外の方も訪れることができる。来年度から東京藝術大学大学院映像研究科の校舎が移転するため、毎年夏に開催してきたメディア映像専攻のOPEN STUDIOは、新港校舎での開催は今回が最後になる。

修士2年生(7月18~20日)は修了制作の中間発表として、修士1年生(7月25・26日)は特別演習の成果発表として取り組む本展。学生がただ自分の作品を発表するだけでなく、広報活動や会場づくりなどの運営にも力を合わせて取り組んでいる。そのプロセスを修士2年で「OPEN STUDIO 2015」広報担当の青柳菜摘さんに聞いた。

「だいたい4月ぐらいから今年のOPEN STUDIOについて2年生を中心に考えはじめます。5月頭からウェブ、PR映像、チラシなどの広報展開について話し合い、6月に入るとチラシやポスターの印刷や、PR映像の撮影などの準備をしました。7月には壁を立てたり、ペンキを塗ったりして会場をつくって、実際の展示にこぎつけます。」

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壁を立てたりペンキを塗ったりといった会場の準備も、学生たちが自ら手掛けるOPEN STUDIO。

 

特設サイトをクリックすると、修士2年生が制作した軽やかなラップのPR映像が流れてくる。出演・撮影・音楽・編集のすべてを2年生が手掛けたPR映像にも、学生たちの試行錯誤が詰まっている。

OPEN STUDIO 2015 特設サイト:
http://www.fm.geidai.ac.jp/openstudio/2015/

 「アイデアを決めるのにも紆余曲折ありました(笑)。修士2年生は出たがりの人が多いので演劇仕立てにしようとか、港の船乗りさんと仲良くなった学生から船に乗って映像をつくろうというアイデアも出た。撮影方法を試している時に、ラップをしている人をみんなで囲み、それぞれがiPhoneで撮影して編集するという撮影手法がとても合っていたので、これでいくことになりました。」

ドローンでの撮影など、映像研究科の環境があるからこそ実現できる技術もさらりと使いこなしている。メディア映像専攻では、佐藤雅彦氏、藤幡正樹氏、桐山孝司氏、桂英史氏をはじめ各分野の第一線で活躍する先生が教べんをとっている。学生にとっても大きな環境だ。

「メディア映像専攻で一番良かったと思うことは、4名の先生方から違う意見を聞けることです。作品を見てすごくいいと言う先生もいれば、全然ダメと言う先生もいる。答えがひとつじゃないということも学んでいます。同級生にも恵まれました。今回のOPEN STUDIOでは、ひとり一人は違う作品をつくっていますが、お互いにどういう展示にするかを話し合いながら、展示をつくっていくことができました。」

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修士 2 年生の山内祥太さんの作品。3D 設計ソフト「スケッチアップ」のスケールフィギュアのおじさんをモチーフに、3DCGを扱い ながら平面の“裏側”を探求する、映像とインスタレーション。

 

メディア映像専攻の修士1年生は入学してすぐに、4名の先生それぞれの3週間に及ぶ特別演習に参加し、課題の制作に取り組まなければならない。会期後半ではその成果を展示する。修士1年生の寺澤佑那さんに、特別演習の感想を聞いた。

「これまでのバックグラウンドも考え方も異なる学生が集まっているので、特別演習では複数人で一緒にグループワークに取り組むのが大変でした。3週間みっちり課題制作に取り組むので、想像以上にハードでした。今年の修士2年生のOPEN STUDIOの準備の様子を見ていて、来年は自分たちがこれをやるんだなあと考えはじめています。」

自身の作品では、虫を探しに行くドキュメンタリーの制作に取り組み、映像というメディアにとらわれずドキュメンタリーのあり方を考えているという青柳さん。最後に「OPEN STUDIO 2015」の見どころを聞いた。

「メディア映像の学生たちはストレートな表現をしていないと思います。映画だったら、劇場で見られるような映画にはない表現を考えているし、写真だったらただ写真を壁にかけるのではない表現に発展させている。今まではお金をかけて作られていた3Dの技術を身軽に取り入れている作品もあるし、一方で繊細なビジュアルの表現にこだわっている人もいる。メディアアート、絵画、映像といった“メディア”の枠に当てはまらない作品に挑戦していると思います。」

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会場で映像をチェックする青柳菜摘さん。「パープルーム大学物語」7月11日(土)~8月15日(土)@アラタニウラノにも作品を出展している。

 

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手持ちのiPhoneでの撮影と、青柳さんの姿を映すカメラの2画面による構成。

絵やイラストもインスタレーションとして展示している。

青柳さんの絵やイラストもインスタレーションとして展示している。

 


【イベント情報】

「OPEN STUDIO 2015」
東京藝術大学大学院 映像研究科 メディア映像専攻
http://www.fm.geidai.ac.jp/openstudio/2015/

会期:
修士二年 修了制作中間発表:7月18日(土)、19(日)、20(月・祝)
修士一年 特別演習成果発表:7月25日(土)、26日(日)

開催時間:11:00~19:00 ※入場は閉場の30分前まで
会場:東京藝術大学 横浜校地 新港校舎
最寄り駅:みなとみらい線「馬車道」駅 4、6出口より徒歩約15分
みなとみらい線「みなとみらい」駅 クイーンズスクエア連絡口より徒歩約15分
入場:無料
主催:東京藝術大学大学院映像研究科、横浜市文化観光局