「BUKATSUDO」――大人のためのシェアスペース

Posted : 2014.06.27
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「BUKATSUDO」という名の新しい創造的な活動拠点が6月25日にプレ・オープンした。横浜ランドマークタワーの敷地内にあるドックヤードガーデンの地下1階。「大人の秘密基地」の誕生だ。このスペースづくりに関わったお二人に、プレ・オープンまでの道のりと、展望を聞いた。

 


「BUKATSUDO」って何?

お話を伺ったのは、NUMABOOKSの内沼晋太郎さんと、株式会社リビタの北島優さん。内沼さんは「BUKATSUDO」のプロジェクト・チームのクリエイティブ・ディレクター。北島さんは「BUKATSUDO」を企画・プロデュース・運営する株式会社リビタのプロジェクト・マネージャーとして「BUKATSUDO」の立ち上げに関わった。

————そもそもこの「BUKATSUDO」はどのように始まったのだろうか?

北島|

ここ、ドックヤードガーデンの地下1階にはレストランやカラオケなどの店舗が入っていましたが、三菱地所株式会社からヨコハマ創造都市センター公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)が借り受け、それを活用する民間事業者を公募したんです。株式会社リビタが活用事業者として選ばれたのが昨年11月のことでした。選ばれた理由は、「BUKATSUDO」として実を結ぶことになるコンセプトにあったと思います。

ドックヤードガーデンは国重要文化財という素晴らしい歴史的建造物ですが、JR桜木町駅やみなとみらい線みなとみらい駅から近いのに、いざ行こうとするといったいどこから入るのかアプローチがわかりづらい。また、地下1階は細長い構造で、窓からの外光が入らない部分もあるという、「物件」としての特徴がありました。
その特徴と、造船ドックであった歴史やたたずまいと関連付けながら、「秘密基地」や「隠れ家」のような魅力を持たせることができそうだと感じて、横浜に務めるオフィスワーカーが仕事帰りに立ち寄れる場所、近隣の住民の方が家でも会社でもないサードプレイスとして寛げる場所として提供できるのではないか、と考え始めました。
スペースの半分はカラオケの小割りの部屋がずらっと並んでいたこともあり、これを有効に活用するとしたら「部室」しかない!と思って、「大人の部活が生まれる、これからの街のシェアスペース」というコンセプトを立て、事業モデルを組み立てていきました。
そして、クリエイティブ・ディレクターとして内沼さんやumari古田秘馬さんにお声掛けをしました。内沼さんには、施設名称のネーミングを含むブランディングや、デザインチームの人選、講座やワークショップの企画などをお願いしたのです。

内沼|

最初はどうして僕にご依頼が来たのだろうかと不思議に思いましたが(笑)、下北沢の本屋「B&B」を見てくださったのだと思います。「B&B」は本屋ですが、毎晩開催しているトークイベントを軸に、自分たちでコンテンツを企画することを通じて、街の文化的な渦の中心のような存在を目指して場づくりをしています。

お話をいただいたのは昨年の10月ころでした。単なるシェア・オフィスではない「秘密基地」や「隠れ家」といった要素を説明されて、そのとき既に「部活動」というのもひとつのキーワードとして挙がっていました。

まず最初に行なった仕事が施設名称のネーミングです。「BUKATSUDO」に決まるまで、ずいぶん議論を重ねました。「DO」には、「動」や「道」、「DO」 、それに「堂(人々が集う場所)」の意も込めていて、従来の「部活動」という言葉のイメージに引っ張られないように、「BUKATSUDO」は語尾を下げずにフラットに発音します。ネーミングやコンセプト、仕組みづくりの作業と並行して、デザイン面で、アート・ディレクションをgroovisionsに、インテリア・デザインをHIROYUKI TANAKA ARCHITECTSに、それぞれお願いして進めていきました。

 

 

「BUKATSUDO」を使いこなそう

 ————「BUKATSUDO」のコンセプトは?

内沼|

「大人の部活が生まれる、これからの街のシェアスペース」がコンセプトです。
学生の頃、放課後にふらっと部室に行ったら誰かがいて、そこで何となく時間を過ごした楽しい思い出を持っている人も多いと思います。部室は、教室と家の間にある第三の場所、いわゆる「サード・プレイス」だったと思うんですね。
ところが大人になったとたんに、職場と家の往復だけになってしまう。もちろんカフェや本屋に寄ったり、飲み屋で仲間と飲んだりすることもあるでしょうが、そうしたものとはまた違った、働く人たちに豊かな放課後を提供する場所でありたいと考えています。
ふらっと行くと、自分と感覚の合う仲間と会えて、ちょっとおしゃべりができる場所。みんなが新たな活動をし始めたくなる、能動的な活動を促すようなシェアスペースになればと考えています。
じつは僕は7,8年前は横浜で会員制の本屋をしていました。今はもうなくなってしまいましたが、北仲WHITEという、様々なアーティストやクリエイターが入居する建物にいました。いわば横浜のクリエイター側の一人だったわけですが、一方、横浜の高層ビル群で働いているオフィスワーカーの人たちと、接点を持つ機会はあまりなかった。
今回、横浜を離れてしばらく経ってあらためて見ても、その状況はあまり変わっていないように感じました。けれど仕事を離れれば、クリエイターであれ、近隣のオフィスで働いている人、タワーマンションに住んでいる人であれ、共有できる共通の趣味や、目的意識はあるはずです。
今まで出会いにくかったそうした人たちが、部活という形で交わっていくような場を目指しています。

自発的に活動をはじめられるタイプの人には、施設のポテンシャルを最大限に生かして仲間を集めて自由に使っていただく。
まずは決められたプログラムに参加したいというタイプの人には、様々な講座やトークショー、ワークショップなどに参加していただく。
そしてそれぞれの枠を超えて、共通の趣味や目的を持った人たちが繋がっていく。そんな場を目指しています。
始めてみるまでどうなるかわからない部分も大きいですが、ぼく自身、横浜には愛着がありますから、この新たな試みにじっくり取り組んでいきたいと思っています。

 

————「BUKATSUDO」のこれからは?

北島|

6月25日に「BUKATSUDO」はプレ・オープンを迎えました。
コーヒースタンドの一般営業、会員制ワークラウンジ、ホール、キッチン、スタジオ、アトリエといったレンタルスペースの提供を開始しました。
「BUSHITSU(部室)」も13室できましたが、10月のグランド・オープンに貸し出しを開始します。それまでの期間は部活づくりの期間と考えています。
部活が生まれるきっかけとしての講座やワークショップを随時開催しますので、ぜひ参加してみてください。
例えば「バリスタ講座」を考えています。講座でコーヒーを学んだ人達がここのコーヒー・スタンドでバリスタをやりましょう、と施設の運営にコミットしてくれることになったら大歓迎です。
あるいは「DJ講座」の受講者から昼はサラリーマン、夜はDJという人たちが誕生して館内BGMを担当するようになる、など、この施設自体が発表の場所であり、運営に自治的精神で関わってくれるようになったら、楽しいですね。
こうしたアイデアはこれまでのシェアハウスの運営の経験から生まれています。
場所を提供して、きっかけづくりをして、手を挙げてくれた人を後押しして応援するのが私達運営側の役割だと任じています。どんな部活が生まれて、どんな活発な活動が展開されるのか、とても楽しみです。

 


 ドックヤードガーデンという横浜の誇る歴史的建造物を活用し、横浜のクリエイター達のパワーを生かしつつ、横浜で働く人、住む人、訪れた人、皆がクリエイティブに自発的に活動できる————そんな新しい創造的拠点が誕生した。

どんどん利用して、日常の中に新しい有意義な時間と価値をみつけてみよう。
まずはプレ・オープン期間に開催されるイベントに参加して、部室の仲間を探してみてはいかがだろうか。

 

 

- PROFILE -

内沼晋太郎
ブック・コーディネイター/クリエイティブ・ディレクター。今回の「BUKATSUDO」のクリエイティブディレクション / コンテンツディレクションを担当したNUMABOOKSを主宰。「DESCENTE SHOP TOKYO」「d-labo 二子玉川」など、本を中 心とした場づくりのプロジェクトを数多く手掛ける。読書用品ブランド「BIBLIOPHILIC」 のプロデュースで「red dot design award 2012」を受賞。博報堂ケトルと協業で、これからの街の本屋「B&B」を下北沢にオープン。著書に『本の逆襲』など。

株式会社リビタ
「リノベーションで暮らしをかえる」をテーマに、既存建物の改修・再生を手がける会社として設立、リノベーション分譲事業やリノベー ションコンサルティング事業のほか、シェア型賃貸住宅の企画、運営、PM・サブリース事業を手がける。現在リビタが運営するシェア型賃貸住宅「シェアプレイス」シリーズは、都内近郊に13棟835室。商業・オフィス・住宅からなる原宿神宮前のシェア型複合施設「THE SHARE」、UR 団地を再生した多世代交流・地域連携が盛んなシェア型賃貸住宅「りえんと多摩平」、印刷工場をオフィス商業複合施設にコン バージョンした港区海岸「TABLOID」など。また、全 99 室のシェア型賃貸住宅「SHARE PLACE 東神奈川 99」を昨年オープン。