クリエイティブとスポーツの交差点~THE BAYSから

Posted : 2018.01.30
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日本大通り、多くの文化を受発信してきた開港の地「象の鼻」から横浜公園まで一直線に伸びる道。その交差点、横浜スタジアムの近くにTHE BAYSが生まれてから約1年が経とうとしている。横浜スポーツタウン構想を掲げる横浜DeNAベイスターズの拠点として生まれ変わったこの場所で、今何が起こっているのか。先日行われたイベントの様子からTHE BAYSの近況をまとめた。

 昨年度(2017年)、ホームゲームの観客動員数が約198万人という球団史上最多を記録した横浜DeNAベイスターズ。2020年のオリンピックイヤーを目処にスタジアムの改修にも着手し、収容人数は現状の約2万9000人から約3万5000人に増やす計画という。
 観客数の増加は、スアジアム周辺の地域活性化にも影響を及ぼしている。横浜DeNAベイスターズは、昨年からまちづくりや地域産業の創出を目的に「横浜スポーツタウン構想」を始動。同3月には、この構想の拠点として日本大通り沿いに「THE BAYS」をオープンした。
 築90年の由緒ある建物をリノベーションしたTHE BAYSの2階には「CREATIVE SPORTS LAB」という会員制のシェアオフィス&コワーキングスペースが開設されている。個人から大学、企業まで、多方面で活躍するクリエイターやビジネスパーソンが仕事場として利用し、定期的にトークセッションやワークショップなどを開催。今後は、そうした異業種間の交流によって生まれる新たなイノベーションの実現にも期待がよせられている。

 

THE BAYSのコンセプトは?

 横浜DeNAベイスターズの執行役員 事業本部 本部長を務める木村洋太さんに聞いた。
 「THE BAYSは横浜市の指定有形文化財の建物を、弊社が借り受けて運営しています。横浜スタジアムから一歩外に出て、野球以外にも街に賑わいをつくろうというのが大きなコンセプトです。地下1階のスタジオがあり、ヨガなどのフィットネスやアウトドアプログラムのあるスポーツクラブやキッズチアスクールを運営し、1階には「&9(アンドナイン)」というカフェと、「+B(プラスビー)」というグッズショップを併設しています。中でも、この建物でもっとも特徴的なのが、2階にある『CREATIVE SPORTS LAB』です。ふだんはコワーキングスペースとして機能しつつ、新しいテクノロジーやアイディアをお持ちの会員の方々と私たちとがコラボすることで、未来のスポーツ産業を生み出す触媒になっていければと思っています」

THE BAYS1階、グッズショップ「+B」©YDB

 

CREATIVE SPORTS LABでは夜な夜な熱い議論が…。

 さる12月6日、CREATIVE SPORTS LABでは、「スタジアムアリーナを中心としたまちづくり」というテーマでトークセッションが行われた。パネリストは、これまでマツダスタジアムなど多くのスポーツ施設の設計に携わってきた、上林 功さん(スポーツファシリティ研究所代表)、THE BAYSなどでコンセプトメイキングを手がけるデザイナーの太刀川瑛弼さん(NOSIGNER代表)、そして横浜DeNAベイスターズからは、前出の木村さんが参加。それぞれ異なる立場から、三者三様の白熱した議論が交わされた。

 「スタジアムをつくろうとすると大抵の会社はゼネコンに頼みますよね。彼らは美しい屋根をつくることばかり考えますが、横浜DeNAベイスターズがやっているような『街レベルのスケール』ではまだまだ考えられないのが実情です」(上林さん)

 「僕はふだんからさまざまな課題を因数分解しながらデザインしています。150年前に横浜が開港されたときに、野球が日本に入って来ました。だから日本のボールパークの原点は横浜にあります。つまり横浜DeNAベイスターズをブランディングするということは、横浜をブランディングすることにもつながるはずですね」(太刀川さん)

 「みなさん、それぞれ職種も表現手段も違うけど、言っていることはじつは一緒なんだと思います。これからは、それぞれの得意分野で意見を補完し合うことが大切で、まちづくり自体もそういうものだと思います」(木村さん)

 話し合いは約1時間半に及んだ。終了後の懇親会では、1階の『&9』からドリンクとタコスなど人気のメニューが振る舞われた。パネリストと参加者たちは和やかな雰囲気の中で時を忘れて語り合っていた。

 

(左)トークセッションで語る、横浜DeNAベイスターズの木村洋太さん。(右)懇親会ではパネリストと参加者たちとの交流の場も設けられた。

 

 このトークセッションと連動するカタチで、2日後に行われたのが、「システム×デザイン思考でNEXT SPORTSTOWNを考える」というテーマのワークショップだ。講師を務めたのはCREATIVE SPORTS LABの会員でもある慶応SDMの富田欣和先生。
 ここで言う「デザイン思考」とは、デザイナーがデザインを考える時のマインドを、システマチックに分析し、デザイナーではない人でも同じプロセスで思考できるようにすること。今回は、デザイン思考がどんなプロセスで生まれるのかを参加者に体感してもらうことが目的だ。
 「新しいスポーツタウンをつくるのですから、みなさん、既存の街を考えても意味がありません。記憶を整理整頓するのではなく、新しい街をつくっていくための軸を考えてほしい」
 富田先生の丁寧かつ的確なレクチャーによって、ワークショップは終始手際よく進行した。30名ほどの参加者が5つのチームに分かれ、アイディアを思いつくまま付せんに記しながら、チームごとに意見をまとめていく。試行錯誤しながらもとても楽しそうに作業しているのが印象的だった。
 「みなさん、横浜の街やベイスターズっていうチームが共通ワードとしてあるので、他のワークショップと違って、とてもやりやすかったです」(会社員・女性)
 「スポーツタウンと言われて、最初はまったくイメージが湧かなかったけど、頭がほぐされていくようでした。もっとやっていたかったです」(映像クリエイター・男性)
 そう語る参加者たちの表情を見ていると、この日のワークショップがいかに有意義だったのかがうかがえる。

ワークショップの成果を発表し合う場面では、チームごとのカラーが浮き彫りになって、皆、興味津々の様子。

 

 CREATIVE SPORTS LABの企画運営を取り仕切る担当者に聞いた。
 「この2日間は個人的にも非常に学びの多い時間でした。今後も『こんな街に住みたいね』とか『行きたいね』っていう共感につながるような企画に取り組んでいきたいと思います。思考がこり固まっていたのは自分自身だったのかもしれないと感じました」
 担当者によると、ワークショップは基本的に会員向けだが、今回は「コミュニティナイト」と銘打って、特別に一般の方にも参加募集を行なったという。結果として、CREATIVE SPORTS LABの存在をより多くの方に知ってもらうきっかけにもなったとうれしそうに話してくれた。
 再び、木村さんに聞く。
 「我々だって企画を考えるとき、一人の社員が、いきなり“0”から“1”を生み出すことなんて、なかなかできません。でも、“0.1”だけでも誰かが提案してくれたら、そこをきっかけにみんなでアイディアを“1”以上に広げることもできます。ここでも、できるだけそういう『集合知』をつくっていきたい」

参加者は、ほぼ初対面だったが、「横浜」や「ベイスターズ」を通してチーム内に連帯感が生まれていたのが印象的だった。

 

「THE BAYSがある生活」、メンバーも募集中

 今後の取り組みについて、木村さんと会員でもある富田先生が話してくれた。
 「横浜市役所が2020年に移転して、跡地の再開発はそこから数年を目途に行う予定と聞いています。その頃にはきっと街の風景もだいぶ変わっているでしょう。でもTHE BAYSは、横浜DaNAベイスターズの情報発信地として、街の象徴的な建物であり続けたいと思います。歴史が刻んだ佇まいはお金じゃかえない価値がありますから」(木村さん)。
 「ここから新たなベンチャーを創出して行こうという意気込みは大切ですよね。それは変わらずやっていくべきだと思います。ただそろそろ次の段階として、周辺の住民や働いている人たちのシビックプライドをもっとアピールできたらいいと思います。野球のことが全然わかない人でも、この歴史的な建物に愛着がある人って結構いると思うんです。『THE BAYSがある生活』っていうのは、ここの会員でなくても感じられるし、一歩足を踏み込んで、これまでとは質の違う愛着が今後重要になってくるように思います」(富田先生)

 地域の風景に根ざした歴史的建造物THE BAYSの中核にある、CREATIVE SPORTS LAB。ここを発信地として、スポーツやエンタメの新たな産業創出を推進する「横浜スポーツタウン構想」は、今後もさまざまな企画を準備中だ。個人、法人ともに随時会員も募集中というから、興味のある方は是非、問い合わせをしてほしい。

(取材・文/宮下 哲)

【今後のイベント】

「ペチャクチャナイト横浜vol.8 @CREATIVE SPORTS LAB」

20秒のスライドを20秒ずつで紹介するプレゼンテーションイベントで世界900以上の都市で開催されているペチャクチャナイトの横浜版であるペチャクチャナイト横浜をCREATIVE SPORTS LABで開催します。

日時:2018年2月5日(月) 19:30
会場:THE BAYS 「CREATIVE SPORTS LAB」
住所:横浜市中区日本大通34
アクセス
日本大通り駅(みなとみらい線)徒歩4分
関内駅(JR京浜東北・根岸線、横浜市営地下鉄ブルーライン)徒歩7分
参加費:¥1,000(1ドリンク込み)
申込方法:申込不要(先着70名)
※ 会場定員に達し次第、受付を締め切らせていただくこともございます。

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