トークセッション「革命のためのリハーサル」、The CAVEで

Posted : 2016.09.15
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イセザキモールの入り口にある洞窟のような地下空間が、新たなクリエイティブスペース「The CAVE」としてスタートする。去る8月27日、プレオープンとして初のトークイベントが開かれ、カルナバルフェスティバル(フィリピン)のディレクターと、日本人参加アーティスト3名が登壇した。熱気あふれる「革命のためのリハーサル」の会場を訪れた。
むき出しの天井や塗装がはがれかけている壁、遺跡のような壁画が印象的な「The CAVE」の空間

むき出しの天井や塗装がはがれかけている壁、遺跡のような壁画が印象的な「The CAVE」の空間

 
関東大震災後の歴史を刻むイセビル地下1階に「The CAVE」がオープン

関内駅徒歩3分、イセザキモール入り口のすぐ右側にレトロな雰囲気のビルがある。関東大震災のあと間もなく建設された「イセビル」だ。このビルの地下一階に誕生する新たなクリエイティブスペース「The CAVE」は、現在リノベーションの工事が入っていて、9月末には飲食店「伊勢佐木バル333」のオープンが予定されている。

昔の飲食店時代の装飾絵画が風化して、遺跡のような壁画

昔の飲食店時代の装飾絵画が風化して、遺跡のような壁画

満席の来場者が地下一階に集まり“アジト感”があふれる会場

満席の来場者が地下一階に集まり“アジト感”があふれる会場

 
トークセッション「革命のためのリハーサル 〜フィリピン・カルナバルフェスティバルを手がかりに」

この日のトークセッションは、アーティストで俳優の武田力さんが参加する「Team Exchanger」が企画した。

批評家・編集者の藤原ちからさん、劇作家・文筆家の石神夏希さんとともに、昨年度から3年間にわたりフィリピン・マニラの「Karnabal(カルナバル)」というフェスティバルにアーティストとして参加している武田さん。トークプログラムを企画した思いを語った。 

img_3738「『カルナバル』は、フィリピンで地域やコミュニティのことを考えながら、JK・アニコチェが自分たちで獲得してきた“場”で、ひとつの革命だと思います。この場を『革命のためのリハーサル』と名付けたのは、カルナバルと僕たちが3年間をとおしてやろうとしていることを共有し、これからのことを考えたいと思ったからです。」

 

 

ディレクターのJK・アニコチェが語る「カルナバル」

続いてディレクターのJK・アニコチェさんが、カルナバルのコンセプトを語った。

img_3693「カルナバルは独立系のフェスティバルとしてスタートしました。条件がないなら、自分たちでつくる。そういう気概でやっています。文化的な活動は、ソーシャルワーク(社会福祉)や地域の開発とは別ものだという考え方があります。またフィリピンでは一般的にはコミュニティ活動に美学的な側面はなく、時にはプロパガンダとしても用いられてきました(マルコス政権時代)。

 


2013年ごろから、フィリピンには
これらの領域の“あいだ”をつなぐものが必要だという問題意識をもつようになりました。これまでの歴史にとらわれず、新しいアイデンティティをつくればいい。そんな思いから2015年にカルナバルが正式にスタートしました。カルナバルでは、ソーシャルイノベーション(社会変革)とパフォーマンスをテーマに掲げています。」

日本とフィリピンの社会的背景の違い/アーティストができること

このようなJKさんの考えに共鳴し、カルナバルに関わることになったアーティストたち。それぞれがフィリピンのコミュニティに関わるプロジェクトに取り組んでいる。

フィリピンと日本の死生観の違いに触れながら、マニラの急速な発展の一面でもあるストリートチルドレンらとともに、走馬灯を作成した石神さん。国内外の複数都市で展開している“演劇クエスト”をマニラでいかに構想するかを考えた藤原さんは、フィリピンの人たちの“感情”がどこに由来しているかに興味をひかれたという。そして武田さんは、長期にわたる滞在で現地のコミュニティに受け入れられるなか、フィリピンと日本の権力関係に着目した“タコ焼き”プロジェクトを展開した。

クロストークの議論では、日本とフィリピンの社会背景の違いから、ソーシャルイノベーション(社会変革)の捉え方も異なることを、藤原さんが指摘した。

右から武田力さん、藤原ちからさん、石神夏希さん、JK・アニコチェさん、通訳の福岡里砂さん

右から武田力さん、藤原ちからさん、石神夏希さん、JK・アニコチェさん、通訳の福岡里砂さん

「JKたちの親の世代は、無血革命でマルコス政権を駆逐した経験があります。カルナバルでも、監獄で生まれた私的な出自をモチーフに作品を発表したアーティストがいました。フィリピンは急成長を遂げていて平均年齢が23歳ですし、新しい大統領のふるまいも物議をかもしている。一方、日本では、私自身は演劇批評をしていますが、日本の若手作家の作品にはわかりやすい意味での政治性を見出すことが難しい。カルナバルではそれをどのようにつなげていけばよいか、考えていきたいと思っています。」

 

続いて、武田さんと一緒にマニラのスラムを歩いたとき、武田さんが歩くスピードをゆるめたことで、周囲との緊張関係が変わった経験を話した藤原さん。石神さんも、コミュニティと関わるとき、そのやり方に正解があるわけではなく、その人の“居方”や“身体性”が大切であることを指摘した。

当日は観客がイベントの価値を決めるブランク・チケット・システムが実施された。カルナバルと同じシステムだ。

当日は観客がイベントの価値を決めるブランク・チケット・システムが実施された。カルナバルと同じシステムだ。

今回のイベントで、多くの人が初めて訪れたであろう「The CAVE」。これから本格稼働するこのスペースは、石神夏希さんが発起人として名前を連ねている。The CAVEは補助金などに頼らない自律的な場を目指し、有志のメンバーが集まって立ち上がったスペースだ。この日のカルナバルの話を聞くと、“今ないものを自らの手で新たにつくり出す”という志をもつという点で、カルナバルとThe CAVEに共通する思いを感じた。そういった点で、今回のトークセッションの内容と場の力の相乗効果もあり、集中した様子の観客の姿が印象に残った。

 

登壇した石神さん、武田さん、藤原さんは、カルナバルへの3年間の参加が決まっているが、「3年間」という時間の捉えかたも、JKさんは流動的に考えているという。3年経ったら終わりではなく、アーティストたちの交流は続いていくことになりそうだ。

新しいフェスティバルのあり方を探る、エネルギーにあふれるカルナバル。次の開催は2017年5月末〜6月を予定している。3名の日本人作家たちのプロジェクトが、3年目にどのような展開を迎えるか。来年もまたこの場所で、今回のようなクロストークが聞けることを期待したい。

(文・及位友美/voids

【イベント概要】


トークセッション

「革命のためのリハーサル 〜フィリピン・カルナバルフェスティバルを手がかりに」

日時:2016年8月27日(土)19:00 – 21:00
会場:The CAVE 
登壇者:
JK・アニコチェ(フィリピン・カルナバルフェスティバルディレクター)
藤原ちから(批評家、編集者、BricolaQ主宰)
石神夏希(劇作家、文筆家)
武田力(アーティスト、俳優)
日英通訳:福岡里砂
入場料:ブランク・チケット・システム

主催:Team Exchanger
助成:公益財団法人アサヒグループ芸術文化財団、 アーツコミッション・ヨコハマ(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)
協賛:アサヒビール株式会社
協力:Karnabal Festival、The CAVE、伊勢佐木バル333
※武田力さんは、今年度アーツコミッション・ヨコハマのクリエイティブチルドレン・フェローシップの対象者です