
ショーウィンドーとしても使える細長いガラスのテーブルの正体は、銀行時代に使われていた看板なのだそう。モノの文脈をずらす発想が随所に見られる。左のオブジェは、不要になった貯水槽を稲吉さんが作品化したもの。
横浜・若葉町に根差した創造の場――“アップサイクル”の発想
6月12日にオープン5周年を迎える「nitehi works」。若葉町というエリアに根差した、横浜の創造拠点だ。若葉町は、伊勢佐木町と黄金町の間に位置し、横浜の大衆文化や風俗など、少しディープで雑多な雰囲気を感じる街でもある。
若葉町の一画にあった元銀行の空きビルを、昭和41年築のアンティークな趣を残しながらも、スタイリッシュな空間へと改修したのは、niethi worksの代表で美術家の稲吉稔さんだ。天井が高く広々とした1階は、用途に応じて利用できるオープンな空間。レンタルスペースとしても人気が高い。吹き抜けの1階を見下ろすことができる2階は、展示での利用が多い。3~4階は、アーティストのスタジオとクリエーターのオフィスになっている。
このビルを改修する際、稲吉さんはスペースそのものを作品化し、日々の中にアートを同居させた。こういった「場」へのアプローチには、かつてそこにあったモノや、街、文化に対して敬意をもって接する、稲吉さんの美術家としての思いがある。もともとある素材をただ再利用(リサイクル)するのではなく、そこに新たな価値を見出して機能を更新する発想は、“アップサイクル”と呼ばれ近年話題になってきた。
nitehi worksでは、これまでの活動の軌跡を祝う6月12日(金)の5周年パーティーを皮切りに、6月13日(土)、14日(日)には、アコーディオンとコントラバスによるインストゥルメンタル・デュオのmama!milkによる演奏会が開かれる。mama!milkの2人がnitehi worksに滞在しながら、空間をともにつくり上げる演奏会だ。タイトルは「process-似て非なる日々- 」。
niethi worksがこれまでこだわってきた「場」から発想する取り組みが、演奏会という形で結実する今回。いったいこの2日間、どのような場が生まれるのか――。空間演出を手掛けるのは、もちろん稲吉さん。13日はmama!milkのライブと空間演出をじっくり堪能できるプログラム、14日にはライブにトークセッションとフードの提供が加わり、3日間のプロセスの集大成として3部制のプログラムが企画されている。
3日間、nitehi worksに通い詰めるのもよし、これぞというプログラム目がけて訪れるもよし。この機会をお見逃しなく!
【イベント情報】
nitehi works 5th anniversary presents
会場:nitehi works
最寄り駅:京急本線急行停車駅 「日ノ出町駅」より徒歩7分 各停停車駅「黄金町駅」より徒歩5分
http://nitehi.jp/space.html
「nitehi works 5周年パーティー」
6月12日(金)19:00 – 23:00
参加費無料
「process-似て非なる日々-」
6月13日(土)「月影」
開場 19:00/開演 20:00 CHARGE:\3,000(+1drink)
ライブ:mama!milk
空間演出:稲吉 稔 ( nitehi works )
6月14日(日)「うつりかわる陽」
開場 11:30/開演 12:00 CHARGE:¥6,000 (+food、talk show)
(第1部:ライブ 第2部:トークセッション 第3部:コミュニケーション)
ライブ:mama!milk
空間演出:稲吉 稔 ( nitehi works )
トークゲスト:山野真悟(黄金町エリアマネージメントディレクター)
フード:福島健士(知塾/食を通して世界とコミュニケーション)
mama!milk
生駒祐子(アコーディオン)、清水恒輔(コントラバス)による、インストゥルメンタル・デュオ。世界各地の古い劇場、客船、廃墟、寺院、美術館等でのサイトスペシフィックな演奏を重ね、異国情緒溢れるその音楽は、クラシカルな香りと新鮮さをあわせ持ち、「旅へいざなう音楽」「 Cinematic Beauty 」「まだ見ぬ映画のサウンドトラック」、あるいは「Japanese New Exotica」とも評されている。