カラフルな布にフラフープで絵を描くように: アーティスト・鬼頭健吾さんインタビュー

Posted : 2017.08.17
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この夏、横浜はアートが熱い。8月4日から3年に一度の「ヨコハマトリエンナーレ2017」が開幕し、合わせて黄金町エリアでは「黄金町バザール 2017」、馬車道エリアではBankART1929でのグループ展「BankART Life Ⅴ 〜 観光」など各地でアートイベントが行われている。 馬車道駅直結のYCC ヨコハマ創造都市センター(以下、YCC)では、国内外で精力的に活動するアーティスト・鬼頭健吾さんの最新作が見られる「YCC Temporary 鬼頭健吾」もスタート。歴史的な近代建築の外観を残しながらもクリエイティブな拠点として現代に息づくYCCで、鬼頭健吾さんを取材した。

鬼頭健吾《eraser cave》2017年、「YCC Temporary 鬼頭健吾」(YCC ヨコハマ創造都市センター)の展示風景
Photo: Shinya KIGURE

 

有機的に、相反するものを組み合わせる

内部がカラフルな布で覆われた台形空間を、無造作に埋め尽くすような白いフラフープ。部屋の中へ進むと壁と床の境界線が曖昧になり、フワっと宙に浮いたような感覚を覚える。このインスタレーションを制作したのは、アーティスト・鬼頭健吾さん。日常で使う既製品を素材に、インスタレーションや立体、平面、映像などあらゆる方法で作品を制作している。大学在学中から作家活動をはじめ、1年間のニューヨーク滞在、2年間のベルリン滞在を経て、現在は京都造形芸術大学で教鞭を取りながら、群馬県高崎市に住む。

鬼頭健吾《untitled (hula-hoop)》2017年、「Multiple Star I」(ハラミュージアムアーク、群馬)の展示風景
Photo: Shinya KIGURE

 

10年ほど前から赤、青、黄色、ピンクなどビビットな色のフラフープを使ったインスタレーションを手がけているが、白一色のフラフープを使う展示は今回が初めて。そのきっかけはごくシンプルなものだった。
「昨年、別の展示のためにカラーのフラフープを注文したとき、白いフラフープがあるというのをたまたま知ったんです。僕は身近な素材を使って作品をつくることが多いですが、絵の具を選ぶような感覚で素材を選んでいます」

鬼頭健吾さん。YCC ヨコハマ創造都市センターの1階にて。
Photo: Ryusuke OONO

 

大学では油絵を専攻していた。今回のインスタレーションも絵を描くように布を張り、フラフープを配置したという。「これまでのフラフープの作品では、白い空間に色をつけていくイメージでしたが、今回はカラフルな布の色を、白いフラフープで削っていくような感覚」で制作した。

空間全体が一つのキャンバスだとしたらあまりにも巨大な絵画だが、「設計図はない」と語る鬼頭さん。頭の中にあるもやっとしたものをどのように実現していくかが面白いそう。
「オーガニックな形が好きで、枠がカチッと決まらないようなものが気になります。常に動いているようで、どういう形か判別できないもの。そういう形状を意識しています」

見る場所や角度によって、さまざまな表情に変わるインスタレーション。フラフープのような工業製品と柔らかい布を組み合わせ、有機的に見せている。固いものと柔らかいもの、密集しているけれどとても軽いもの。こうした「真逆なもの、相反するものを同居させる」ことも制作の中で一貫して続けているという。

鬼頭健吾《eraser cave》2017年、「YCC Temporary 鬼頭健吾」(YCC ヨコハマ創造都市センター)の展示風景
Photo: Shinya KIGURE

 

横浜は、特異点となった縁のあるまち

横浜で初めて展示をしたのはBankART1929。その後、日本大通りにあるZAIM(現・「THE BAYS」)で同年代のアーティスト同士で企画した展覧会「THE ECHO」を行ったことが、自身のなかでも大きな出来事として記憶に残っているそう。
「アーティスト自身が仲間と一緒に自主的に企画することで、キュレーターやディレクターに選ばれて作品を発表するのとは違うモチベーションで作品を制作できました。それによって仲間同士のフレンドシップな関係からクオリティの高いものをつくることができます。その後『THE ECHO』は国内外で3回ほど開催していますし、各地でも大きな反響を得ています」

こうしたことから横浜には縁を感じているそう。「アーティストも一人で展示はできません。声をかけてくれる人、設営で手伝ってくれる人、それを広めてくれる人、記録してくれる人、とさまざまな関係性や縁のなかで成り立っています」。

鬼頭さんの奥に見えるのは、平面作品。
Photo: Ryusuke OONO

 

さらに「横浜は好き」と話す鬼頭さん。今回の展示は「ヨコハマトリエンナーレ2017」開幕と同じくするので、横浜には、さまざまなアーティストが集まっていた。YCCでの内覧会を終えた鬼頭さんも彼らとの打ち上げに駆けつけた。
「昨日はタクシーで湾岸を走って、港近くの老舗のバーに行きました。こんないい場所があるんだ、としみじみ思いました。外国のアーティストもすごく喜んでいましたし、世界中探してもこんなところはないんじゃないでしょうか」。

鬼頭さんの最新作が見られる「YCC Temporary鬼頭健吾」は9月17日まで。「ヨコハマトリエンナーレ2017」会場へも徒歩圏内のこの機会に、ぜひお出かけください。

 

(文:佐藤恵美)


Photo: Ryusuke OONO

 

鬼頭健吾(きとう・けんご)

1977年愛知県生まれ。群馬県高崎市在住。1999年、アーティストによる自主運営スペース「アートスペースdot」(愛知県西春町)の設立、運営に参加するなど名古屋芸術大学在学中から作家活動を開始。フラフープ、糸、鏡など、日常的な既製品を用いて、インスタレーション、平面、立体、映像など多様な表現方法にて作品を制作・発表し続けている。2008-09年、五島記念文化財団の助成を受けニューヨークに滞在。2010年、文化庁新進芸術家海外研修員としてドイツ・ベルリンに渡る。近年の主な展覧会に「Migration 回遊」(群馬県立近代美術館,2015年)など。2016年より京都造形芸術大学准教授。

http://www.kengokito.com


YCC Temporary鬼頭健吾

会期:2017年8月4日(金)〜9月17日(日)
時間:11:00~18:00(金土祝19:30まで)
※入場は閉場の30分前まで
会場:YCC ヨコハマ創造都市センター 3階
住所:神奈川県横浜市中区本町6-50-1
アクセス
馬車道駅(みなとみらい線)1b 出口(野毛・桜木町口・アイランドタワー連絡口直結)
桜木町駅(JR京浜東北線・根岸線、横浜市営地下鉄ブルーライン) 徒歩5分
関内駅(JR京浜東北線・根岸線、横浜市営地下鉄ブルーライン) 徒歩7分
http://yokohamacc.org/access.html

入場:500円(高校生以下入場無料)
※高校生は要学生証提示
※3階の入場のみ有料。1階ギャラリーの展示(不定休)は鑑賞無料

http://yokohamacc.org/yct/kengokito/