川村美紀子×横浜ダンスコレクション――舞台をつくれる “奇跡”

Posted : 2017.01.27
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横浜ダンスコレクション(以下、ダンコレ)2017で、2月2日~5日に『インナーマミー』と『地獄に咲く花』の2演目を上演する、振付家・ダンサーの川村美紀子さん。音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」への振付など、カルチャーシーンでも幅広く活躍する振付家だ。コンテンポラリーダンス界の新星として国内外で注目を集める川村さんに、ダンコレへの意気込みを聞いた。
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Photo by OONO Ryusuke

 
 

初演から 2 年、“お母さん”をテーマに深化を見せる『インナーマミー』

1 月中旬、横浜赤レンガ倉庫 1 号館に『インナーマミー』稽古前の川村美紀子さんを訪ねた。川村さんとダンコレとの関わりは 6 年以上に及ぶ。2011 年にコンペティションⅡ(新人振付家部門)で「最優秀新人賞」を受賞し、2015 年にはコンペティションⅠで「審査員賞」と「若手振付家のための在日フランス大使館賞(以下、フランス大使館賞)」のダブル受賞を果たした。その後、フランス大使館賞の副賞として半年間ほどフランスでのレジデンスを行い、今回「ダンスクロス+アジアセレクション」に、2015 年の受賞作『インナーマミー』と、フランスで制作・発表した『地獄に咲く花』の 2 演目を発表する。

『インナーマミー』は強烈な身体のリアリティやエネルギーあふれる構成が評価され、トヨタコレオグラフィーアワード2014の受賞、ダンコレでのダブル受賞に至った。初演時は複数の振付家が連続して同じステージで上演するコンペ形式の発表だったため、作品の尺や照明などに物理的な制限があったが、「ダンスクロス+アジアセレクション」では試したかったことに思い切り取り組める環境での上演となる。川村さんに本作の手ごたえを聞いた。

Photo by OONO Ryusuke

Photo by OONO Ryusuke

「今回はより一層マグナムに仕上がっています。初演の時はゴールのテープしか見えていかったのですが、今はグラウンドが見えるようになったという感じです。」

振付家として全体の動きを把握するために、初演時の創作に比べると自分が一歩引いて見ている時間が長くなったと語る川村さん。感覚的につくっていて言葉になっていなかったという作品のテーマも、今年は創作ノートを執筆し言葉で伝えることにも取り組んだ。

「『インナーマミー』はお母さんをテーマにした作品です。誰もが皆、お母さんから生まれて きた。そう考えると、自分の細胞はお母さんやそのまたお母さんから続いているわけで、それを自分と言えるのだろうか――という疑念がありました。“出産は人類最大の創作活動”ではないかと思います。」

 

フランスレジデンスから生まれたソロ作品『地獄に咲く花』

2015年のダンコレ後、半年間のフランスレジデンスへと旅立った川村さん。いくつものダ ンスセンターを訪問しながら、現地で活躍する振付家のリハーサルを見たり、レッスンやワークショップに参加したりと、大いに刺激を受けたという。その成果発表として制作したソロ作品『地獄に咲く花』が、ダンコレで待望の日本初演を迎える。

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Photo by OONO Ryusuke

「日本初演に向けて、今はえぐるようなブラッシュアップをしています。フランスと日本で は、創作に関わる人や観客の佇まいが違うように感じます。フランスでは周りがみな自然体で、作品を上演することに対して祝福のムードが強かったです。日本の観客に向けて、自分には何ができるだろうと考えています。

クリエーションの過程では、 “生きること”を身体でいかに体感するかという課題に向き合っています。日本ではよく、八百万(やおよろず)の神と言ってそこらへんにあるものや言葉一つひとつにも魂が宿っていると考えますが、フランスでは “言霊”という概念を伝えるのが難しかったです。」

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Photo by OONO Ryusuke

本作には川村さんがつくったアイロンビーズで書いた般若心経が舞台美術として使われる予定だ。音楽も自ら制作し、川村さんのイメージが凝縮した舞台になりそうだ。最後に、ダンコレに対する想いと、その観客に向けてのメッセージを聞いた。

「活動を長い目で見てくださっているので、とてもありがたいです。私は舞台以外の仕事もしていて、すぐに結果を出さなければならないこともたくさんありますが、舞台はじっくり時間を使って自分自身とも向き合える空間です。私が舞台をつくることができるのは奇跡だと思っています。」

2月のダンコレで、初めて作品を観るひとにも楽しんでもらいたいと語る 川村さん。これからも更なる飛躍が期待される気鋭の振付家・川村美紀子の舞台をお見逃しなく。


【プロフィール】

川村美紀子(かわむら・みきこ)

1990 年生まれ、16 歳からダンスを始める。日本女子体育大学(舞踊学専攻)卒業。2011年より本格的に作品創りに取り組み、『へびの心臓』(2012)、『まぼろしの夜明け』(2015)等を発表。「どこからかの惑星から落下してきたようなダンス界のアンファン・テリブル」(Dance New Air 2014/石井達朗氏)とも紹介されるその活動は、劇場にとどまらず、屋外やライブイベントでのパフォーマンス、映像制作、弾き語りライブ、自作品の音楽制作、レース編みなど、表現活動を多彩に展開。2013-16 年度(公財)セゾン文化財団ジュニア・フェロー。横浜ダンスコレクションEX2011「最優秀新人賞」。トヨタコレオグラフィアワード2014「次代を担う振付家賞」。横浜ダンスコレクションEX2015にて「審査員賞」「若手振付家のための在日フランス大使館賞」をダブル受賞。

【イベント情報】

横浜ダンスコレクション 2017

http://yokohama-dance-collection.jp/

『ダンスクロス+アジアセレクション』

「ダンスクロス」は、横浜ダンスコレクションにおける「若手振付家のための在日フランス大使館賞」受賞者のフランスレジデンスおよび成果発表をはじめ、日仏の振付家支援プログラムとして、2007 年よりアンスティチュ・フランセ日本および横浜とのパートナーシップにより実施されています。
「アジアセレクション」は、横浜ダンスコレクションを通じて、国内外で活躍する振付家が、アジアのパートナーと共にレジデンスや作品制作を行うプログラムです。
2017 年は、韓国「Seoul Performing Arts Festival」との協働、またシンガポール「M1 CONTACT」との協働による作品上演を行います。

【イベント概要】

日時:
2 月 2 日(木)19:30 川村美紀子 A / 奥野美和 × ツオ・ツーハオ
2 月 3 日(金)19:30 川村美紀子 A / 高橋萌登 × ユン・ボラム
2 月 4 日(土)16:00 川村美紀子 B / 奥野美和 × ツオ・ツーハオ
2 月 5 日(日)16:00 川村美紀子 B / 高橋萌登 × ユン・ボラム / 田村興一郎
会場:横浜赤レンガ倉庫 1 号館 3F ホール
料金:前売り:3,000 円 当日:3,500 円 U-25:2,500 円(全席自由)
チケット購入方法:
・チケットカンフェティ http://confetti-web.com/ydc2017 TEL:0120-240-540
 (平日10:00-18:00)
・横浜赤レンガ倉庫 1 号館 045-211-1515(10:00~18:00)
お問い合わせ先:横浜赤レンガ倉庫 1 号館 045-211-1515(10:00~18:00)

©塚田洋一

©塚田洋一

 

川村美紀子
Program A

「インナーマミー」
振付:川村美紀子
出演:亀頭可奈恵、後藤海春、永野沙紀、川村美紀子

 

 

川村美紀子「地獄~」

 

Program B
「地獄に咲く花」(日本初演)
振付・出演:川村美紀子