横浜駅東口エリアで飲食店を巡るスタンプラリー
横浜駅東口はかつては海に面しており、旧東海道に程近く、その建物は東洋一の駅とも謳われた港町・横浜の表玄関でした。西口の接収が解除され、戦後復興と共に開発がはじまり横浜駅周辺はどんどん変化をしていきましたが、今でも横浜の歴史を語る上では欠かすことのできない東口エリア。『裏原宿』やゲームの『裏ワザ』のような「知っているとちょっとおもしろい、感度の高い街」というイメージの「裏横」という呼び名が若い人の間で広がりを見せています。
そんな裏横で行われている飲食店を巡るスタンプラリーへの参加方法は、まず期間中に参加店でスタンプカード、または一部コンビニエンスストアで引換券を購入します。参加店でカードを見せるとドリンクが1杯サービスされます。入ったお店では1品もしくは1杯(※サービスドリンク外)をオーダーするのがルール。そうすると、お店でスタンプを押してもらえます。期間中に参加の30店を巡って、できるだけスタンプを集めます。集まった数によって、抽選でお食事券をプレゼント! という流れ。
前回コンプリートした人は30名ほど。中には期間中に3巡した強者も!3ヶ月に30店×3=90店分……!?なんという熱意でしょうか。その方にもインタビューしてみたいです。
このエリアは横浜駅周辺の他エリアと比べて比較的賃料がお手頃で、新しいおしゃれなお店が次々にオープンしている注目の地区で、urayoko netにも回を重ねるごとに参加店が増えています。行ったことのないバーやレストランもこの期間ならば入りやすく、新しいお店開拓にぴったり。開催しなかった年と比べると開催年は10%の売り上げアップというデータもあり、着実に、街に人を呼び込んでいるイベントと言えるでしょう。
【発起人インタビュー】
個人店が多い「裏横」ならではの魅力で、街に力を

左:入交さん 右:岩谷さん
urayoko net の発起人のお二人、裏横に事務所を持つブランディング会社「株式会社セルディビジョン」社長である岩谷さんと、裏横の老舗店のひとつ「ビストロ・フレッシュ」オーナーの入交(いりまじり)さんからお話を伺いました。
岩谷さんは、もともと横浜生まれ横浜育ち。しかも子供の頃からこの平沼・高島エリアで遊んでいたそうです。また、入交さんはこのエリアで約20年もの間ビストロを経営され、スタッフ育成にも力を注いでいます。裏横を愛する岩谷さんと入交さんが、「この街で、人と人とがつながるイベントをしたい」と考えたのがプロジェクトのきっかけだとか。
「トップダウンで行う地域おこしではなくて、地域の人が自ら動く息の長いものを作りたい」と、右も左もわからないままに地域のお店を回り、裏横を拠点に活動するイラストレーターやカメラマンなどのクリエイターにビジュアル制作を依頼するなど、街の人たちで作ることにこだわってきたそうです。
街とお店、地域をつなげて、”街の日常”を活性化する
ーーーurayoko netも5回目になり、参加者が増えた実感はありますか?
岩谷さん:はい。前回はチケット4000枚がほぼなくなったので、それだけの人が参加してくれているんだろうな、と思います。
入交さん:参加店の方に伺った話では、スタンプラリーをきっかけに常連さんになった方も多いようです。「もう一度来たい」と思っていただけて、また足を運んでいただけたらプロジェクトを行っている甲斐がありますね。
ーーー裏横の魅力はなんだと思いますか?
入交さん:「街が安全」というところではないでしょうか。よく繁華街にいるような客引きなどがいないほか、スタッフと交流がしやすい店が多いのも特徴のひとつ。それぞれのお店はこじんまりしていますが、それだけコミュニケーションを取りやすい店が多いということでもあります。
岩谷さん:逆に言えば、個人店が多いために、以前は個々の店で接客に差があったりもしました。しかしurayoko netを続けることによって連携ができてきた部分があると思います。お店同士の交流が増え、いいお店に触発されて、このエリアの飲食店全体の接客態度が少しずつ向上してきたように思います。
ーーーそれは素晴らしい効果ですね。街の活性化は、まさに企画した時のコンセプトの通りですよね。
岩谷さん:はい。私は正直に言えばスタンプラリーにこだわっているわけではなくて、この街とお店、地域をつなげて、”街の日常”を活性化することが大事だと思っています。今後もお店は増えていくでしょうし、今回は飲食店だけではなく美容院やクリーニング店なども協力してくれています。この街をよくしたい、という思いで、裏横のみんなで街の掃除をする活動も行っています。スタンプラリーが、この街を活かす道を作るきっかけ作りになったらいいと思っています。
入交さん:まさにそうですね。その中でも私は飲食店を経営しているので、飲食業界をよくしていきたいと思っています。その第一歩として「周りで助け合える飲食店」を作りたいです。今は他の店舗と競い合うケースがとても多いし、何か流行ると皆それに倣ってしまい、似たようなお店になってしまうでしょう。それはそれで生存方法の一つではありますが、この街はそうではなくて、それぞれ個性を持った店舗がお互いに助け合って存続していける街になるといいなあ、と思っています。
ーーーそれは、まさに「まちづくり」ですね。
入交さん:そうですね。ひとつ一つのお店が長く続くことによって、街の雰囲気ができあがるということもあるかと思います。例えば、もしこの街に江戸時代からのお城があったら、城下町という雰囲気が残っていたと思います。しかし、実際のこの街は土地開発でどんどんマンションが立ち並び、街にある店舗も入れ替わりが激しく、なかなか街の特色が見えてこない。そういう意味で、お店を長く残して街をブランディングすることも、必要な要素のひとつだと思っています。それも含めて、店同士で助け合いができたらいいですよね。
ーーー今、ブランディングという話が出ましたが、たとえばポートランドのように自然や食にこだわったまちづくり。地産の野菜が食べることができたり、飲食店の認定制度など、このエリアの規模感だったら可能じゃないかという気がしてきます。
岩谷さん:そうですね。裏横は中華街や野毛ほど有名ではありませんが、素敵な個人店が多いため、街のポテンシャルは大きいと思います。ただ、個人店が多いというのは諸刃の剣でもあって、仕事へのスタンスがお店それぞれなのです。
入交さん:そうですね。利益をとことん出したい店もあれば、のんびりやりたい店もある。私自身は飲食店によるまちづくりはとても興味がありますし、地産地消の食材を出す店が増えればお客様も嬉しいし、この街に足を運ぶ動機になると思います。ただ、それぞれの店に伝統があり、やり方があるので「みんなでひとつ、これを!」というのはとても難しい。私も、いつも模索しています。
子育て世代が立ち寄りやすい店づくりの取り組み
ーーー今年のurayoko netでは、ランチタイムでも利用できるお店ができましたよね。あれはとても嬉しいです。バーにはなかなか行けない子連れの方なども楽しめるんじゃないでしょうか。
入交さん:まさに今、私の店舗でも子連れイベントを考えています。お店のスタッフや常連さんなどもお子さんがいる方が多いですし、イクメンも増えていますので。裏横ではないのですが、私の店から独立したスタッフのお店で行ったイベントでは、お皿に絵を描いたりシールを貼って焼いて、自分のお皿を作るイベントを行いました。その後、自分のお皿で料理を食べたりして。
岩谷さん:それはすごく楽しそうですね。子供も喜びそうですね。
入交さん:はい。従業員も子育て期間中は働けなくなったりしますから、先ほどの助け合いの話ではないですが、それぞれのお店が交代で預かったりなども考えています。働きやすい職場になればいい人材が集まりますし、その結果として安くておいしいものが食べられればお客様も満足してくれる。そういった循環を作るにはどうしたらいいか、ずっと考えているところです。
岩谷さん:そういうことが、行政などのトップ主体じゃなくて自然にできれば、街の人も誇りになるんじゃないでしょうか。「どういう街にしたいか」を私たち住人がもっと話し合い、住民と店舗が誇りを持てる街を、自分たちの手で作り上げたいですね。
その一環としてのurayoko net。参加者みなさんが楽しんで、盛り上がってくれると嬉しいです。
(文章:いしだわかこ)
urayoko net
横浜東口の高島町、平沼、戸部エリアの住民・店舗・企業・クリエイターをつなげるプロジェクト。参加している30の店舗、またはコンビニやチケットぴあなどの販売所でスタンプカード(税込1,000円)か引換券を購入し、開催期間に各お店を回ってスタンプを集める。集まったスタンプの数により、抽選でお食事券をプレゼント!
スタンプ10個…1,000円分(45名)
スタンプ20個…5,000円分(10名)
スタンプ30個…5,000円分(5名)
今年はついにオリジナルビールも登場! 横浜市の水道の水源・山梨県道志村の湧き水で作られた横浜ビールを、この期間だけ裏横ラベルで販売されます。なくなり次第終了とのことなので、見かけたらぜひ頼んでみて。空き瓶はレアな横浜土産にもなるかもしれません。
開催期間:2017年9月1日〜11月30日
スタンプカード:1,000円(税込)、参加店30店舗で販売。
※11月24日まで、コンビニ(セブンイレブン、サークルK・サンクス)、チケットぴあでも引換券を販売。
詳しくは→http://urayoko.net