元倉庫の空間で出会う本物のアートの力
心地よい潮風の吹く横浜の運河沿い。BankART Studio NYKは、かつては港湾倉庫だった建物だ。昔日の面影は、コンクリート打ち放しの壁や、手が回らないほどの太い柱、4メートルから5メートルもある高い天井などに感じられる。
この3階建て、総床面積2,400平方メートルの空間全体を使って開催されているのが、「かたちの発語展」だ。
1階のNYKホールに足を踏み入れると、田中信太郎さんの光の作品が迎えてくれる。
田中さんは「ネオダダイズムオルガナイザー」としての活躍の後、パリ・ビエンナーレやヴェネツィア・ビエンナーレなどで国際的評価を獲得し、「点・線・面」等の作品群で、美術はもちろんのこと、 デザイナーや建築界にも強い影響を与えてきた。今回出会える光の作品群には、祈りのような感情を感じるかもしれない。
田中さんの作品は3階でも引き続き展示されている。そして3階を奥へと進むと、岡﨑乾二郎さんの彫刻作品が圧倒的な存在感をもって登場する。岡﨑さんは、 パリ・ビエンナーレ、 ヴェネツィア・ビエンナーレなどでの活躍、舞踊家とのコラボレーションなど、つねに先鋭的な芸術活動を展開してきた。その多彩な才能に触発されてみたい。
2階では海風と光の気配に包まれ、中原浩大さんの作品群と出会える。海を感じる作品も展示されていて、会場の立地とのハーモニーも感じる。中原さんは彫刻の概念の拡張をはかってきた作家だ。運河に面したテラスに出ると、家族をテーマにした作品のヒューマニティに驚かされるだろう。
テラスから外階段をゆっくり降りてみよう。
運河添いの庭の水辺の風景に溶け込むかのように赤トンボがとまっている。
田中さんの作品に見送られての帰り道に何を思うだろうか。
BankART Studio NYK 代表でこの展覧会のディレクターである池田修さんは、「3人は時代をつくり、トップを走ってきた作家達。色やかたちだけで感動を与えてくれる本物の作家達です。何があってもけっしてブレない本物のアートには真摯さと誠実さがあります」と紹介する。
作家自身に会うことのできるトーク・イベントも企画されている。山海塾創立メンバー、蝉丸さんによるダンスパフォーマンスもあり、作品のエネルギーに満ちた会場でどんな身体表現が生み出されるかは見逃せない。
さらに、インタビューも交えて1人ずつを約 200ページというボリュームで紹介するカタログも販売されている。カタログ付観覧料も設定されているので、作家の創作の源を探りながら作品と向き合ってみてはいかがだろう。
【イベント情報】
田中信太郎 岡﨑乾二郎 中原浩大
かたちの発語展
会期:2014年4月25日[金]- 6月22日[日]
時間:11:00 – 19:00
会場:BankART Studio NYK 全館
最寄り駅:みなとみらい線馬車道駅、日本大通り駅
観覧料:一般1,200円 / 学生800円
※高校生以下、 65歳以上、障害者の方は無料
カタログ=3冊 A4変形版/約200ページ 各2,000円(税別)
カタログ付観覧料=1冊付/2,700円、2冊付/4,000円、3冊付/ 5,200円(すべて税込)
お問い合わせ:BankART1929 Office
TEL:045-663-2812 FAX:045-663-2813
info@bankart1929.com
かたちの発語展 Event Program
Talk Series
5月23日[金] 19:30-
岡﨑乾二郎×浅田 彰(批評家、京都造形芸術大学大学院長)
5月31日[土] 19:30-
田中信太郎×前山裕司(美術評論家、埼玉県立近代美術館学芸員)
6月21日[土] 19:30-
中原浩大×中島 智(芸術人類学者、武蔵野美術大学・慶應義塾大学兼任講師)
Dance Performance
6月14日[土]、15日[日] 19:30-
蝉丸(舞踏家)
参加費: 1,000円
完全予約制・各回定員100名
お問い合わせ:BankART1929 Office
TEL:045-663-2812 FAX:045-663-2813
info@bankart1929.com