NIGHT SYNC YOKOHAMAのシンポジウムにクリエイティブ・ディレクターの齋藤精一さんら登壇

Posted : 2020.02.14
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横浜の夜の新たな魅力をつくる、イルミネーションと先端技術を活用した光のプログラム「NIGHT SYNC YOKOHAMA」。2019年11月1日から12 月 27 日までメインエリアとなる新港中央広場で、メディアアートやイルミネーションを常時展開するほか、毎時 18 時~21 時の約 10 分間にわたり、新港地区の8施設がイルミネーションで同期する特別演出が実施されていた。この企画にあわせ 11 月 29 日、本プロジェクトのクリエイティブ・ディレクターを務めるライゾマティクス・アーキテクチャーの齋藤精一さんをはじめ、主催のクリエイティブ・ライト・ヨコハマ実行委員会のメンバー、共催の横浜市担当課長、そして参加クリエイターが登壇した「NIGHT SYNC YOKOHAMA」開催記念シンポジウムが開かれた。ここではそのレポートを行う。

新港中央広場の特設ステージと周辺建物で展開された特別演出の様子。©NIGHT SYNC YOKOHAMA

 

この秋、熱狂を博したラグビーワールドカップ 2019™。ここ横浜でも日産スタジアムで複数の試合が開催され、国内外から観光客が集まった。この機会に横浜の夜を楽しんでもらおうと、イルミネーションや先端技術を活用し、横浜の街を光でつなぐ「NIGHT SYNC YOKOHAMA」がスタート。主催のクリエイティブ・ライト・ヨコハマ実行委員会には、新港中央広場周辺の民間企業や、まちづくり団体などが名を連ね、共催の横浜市とともに行政と民間が協働し、横浜の夜の魅力づくりに取り組んだ。まずは「NIGHT SYNC YOKOHAMA」の実施内容を簡単にご紹介しよう。プログラムのメイン会場は新港中央広場。横浜・新港エリアにあるワールドポーターズと横浜赤レンガ倉庫の間にある、四方を道路で囲まれたエアポケットのような公園だ。ここで期間中の 18 時~21 時 10 分まで、特設ステージを中心に展開する常設演出と、周辺にある建物外壁のカラーライトアップと同期した特別演出プログラムが実施された。

常設演出では、特設ステージの床に、インタラクティブに体験できるデジタルコンテンツを投影。広場の植栽部分には、光る花のインスタレーションが広々と展示され、樹木はカラーライトアップされた。©NIGHT SYNC YOKOHAMA

特別演出では、新港中央広場のイルミネーションやステージに投影される映像に同期し、周辺施設の建物壁面のカラーライトアップや、サーチライトによるダイナミックな光と音楽の演出を展開した。18 時から 21 時の毎時約 10 分間、複数の建物に設置したライトを一括でコントロールすることで、横浜のまちを演出する大規模なプログラムだ。©NIGHT SYNC YOKOHAMA

 

特別演出参加施設(8施設)
①ナビオス横浜
②横浜ワールドポーターズ
③MARINE&WALK YOKOHAMA
④横浜地方合同庁舎(仮称)建設予定地
⑤よこはまコスモワールド・大観覧車コスモクロック 21
⑥横浜ハンマーヘッド (新港ふ頭客船ターミナル)
⑦ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル
⑧神奈川県警察本部庁舎

11 月 29 日には BankART Station にて、「NIGHT SYNC YOKOHAMA」開催記念シンポジウム「NIGHT TALK SYNC YOKOHAMA」~シンクロしあう街、未来の横浜のあり方を考察する~が開かれた。登壇者には、主催の実行委員会メンバーでもある公益財団法人横浜市芸術文化振興財団専務理事の恵良隆二さん、共催の横浜市文化観光局創造まちづくり担当課長の河本一満さん、特別演出全体のWebARを担当した面白法人カヤックの唐沢浩介さんが名を連ねた。そして会のモデレーションを務めたのが、「NIGHT SYNC YOKOHAMA」の発案者でもあるクリエイティブ・ディレクターの齋藤さんだ。本プログラムの仕掛け人たちが一堂に会したシンポジウム、その様子をレポートする。

「NIGHT SYNC YOKOHAMA」開催記念シンポジウム「NIGHT TALK SYNC YOKOHAMA」~シンクロしあう街、未来の横浜のあり方を考察する~の様子。撮影:森本総(カラーコーディネーション)

 

[登壇者]
齋藤 精一(ライゾマティクス・アーキテクチャー
唐沢 浩介(面白法人カヤック
恵良 隆二(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 専務理事)
河本 一満(横浜市文化観光局創造まちづくり担当課長)

齋藤 精一(以下、齋藤):
今の横浜のまちづくりは、行政主導でマスタープランをつくり、事業者を巻き込んでいくのではなく、民間が自由な発想で自分たちの街をつくっていこうとしているように見えます。そこには競争原理が働いていますが、「NIGHT SYNC YOKOHAMA」はそれをナイトタイムエコノミーの文脈で考えることで、民間も行政も協力して横浜の夜を光のプログラムで盛り上げようという取り組みになります。プログラム名称のシンクは「同調する」という意味ですね。

齋藤 精一(ライゾマティクス・アーキテクチャー)撮影:森本総(カラーコーディネーション)

 

河本 一満(以下、河本):
本プログラムをなぜ始めたか、横浜市の視点からお話ししたいと思います。文化観光局としては、横浜の魅力を世界に向けて発信しなければなりません。港町の横浜は国内のお客さまに非常に人気がありますが、インバウンドでは日帰りのお客さまがほとんどです。横浜の夜は早いと言われています。そのため横浜では夜になると人通りがパッと途絶えてしまうんですね。横浜のナイトタイムエコノミーを、どのように活性化するかは大きな課題になっています。都市のポテンシャルをいかに上げていくかを考えたときに出てきたのが、夜の新しい魅力となる「観光コンテンツ」をつくることでした。それが本プログラムの目的です。

河本 一満(横浜市文化観光局創造まちづくり担当課長)撮影:森本総(カラーコーディネーション)

 

恵良 隆二:
2018 年度にみなとみらい地区から山下公園までの公共施設の管理者、及び民間施設の運営者にイルミネーションのつながりに関するアンケートをとりました。いずれの施設でも多くがイルミネーションに取り組んでいますが、それらがつながることはありませんでした。なぜつながらないかと言うと、管理者が違う敷地同士の間にある空間や道路など、エリアを分断している公共空間があるからです。これをつなげるためには、公と民が同じ思いをもたなければなりません。アンケートを見ると公共施設も民間施設も、イルミネーションの連携には可能性を感じている。ではなぜできないのか。そこにはルールや仕組みの問題があり、それを誰かがつなぐ必要がありました。プラットフォームや、制度的な仕組みのデザインができていけば、街全体がこれからうまくつながっていくのではないでしょうか。
街のブランディングにまつわるイベントに必要なものは、地域の一体性と、公共的な正当性です。公共的な正当性がなければ、道路管理者や公園管理施設などの協力を得ることが難しい。そして地域の一体性がなければ、ボランティアなど人的な支援や、企業によるさまざまなサポートも得られず、広がりが生まれません。

恵良 隆二(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 専務理事)撮影:森本総(カラーコーディネーション)

 

齋藤:
今回カヤックさんが制作された「WebAR」は日本初の試みで、世界的に見ても非常に高い技術が用いられていますね。

唐沢:
「WebAR」はここ1年くらいで本格的になってきた新しい技術ですが、Webサイト上で体験できるAR=拡張現実(目には見えないがカメラをとおすと見える風景)です。アプリケーションだと、わざわざダウンロードしなければ AR を見ることができませんが、WebARならQRコードなどでアクセスし、ARマーカーを読み込めば、誰でもその場で AR を体験することができるため参加の敷居が低いと言えます。
今回のプログラムではスマホをとおしてWebARを見ると、AR とステージ床面、そして周りの建物の色やタイミングが、シンクロする演出になっています。

新港中央広場を中心とした特別演出で展開された「WebAR」。広場や周辺の建物の演出とスマートフォン上のAR空間が一体となった演出が楽しめる。©NIGHT SYNC YOKOHAMA

唐沢 浩介(面白法人カヤック)撮影:森本総(カラーコーディネーション)

 

齋藤:
今回のようなイベントは、一年やったらまた次のイベントへと、スクラップアンドビルドで変わってしまうことがよくあります。そうではなくて、大事なのはWebARや同期するイルミネーションといったコンテンツを、数年かけて育てていくことです。
参加型のプログラムは、楽しくないと参加してもらえません。歩きスマホが社会問題になっていますが、見方を変えてみると、多くの人にとって現実よりスマホの中の方が楽しいからで、現実が負けてしまっているのではないでしょうか。本当に街は楽しいのかと考えたとき、都市開発などで風景が一様になってきた側面がありますよね。だからこそ、夜の風景だけでも少しずつ変えていこうというナイトタイムエコノミーの考え方は、合点がいくと思っています。

河本:
今年は新港中央地区でモデル的に開催していますが、来年以降はエリアと期間を広げていきたいですね。シンガポールや香港などで開催している光のショーをイメージしていただくと分かりやすいですが、横浜でも毎日夜の8時になると特別な10分間のプログラムが始まる状態を目指したいと思っています。そこで考える必要があるのが、横浜らしい特別な10分間とは何なのか、ということです。逆にライトダウンするとか、ろうそくを灯すといったこともあり得ますよね。また例えば飲食店で、8時からの10分間しかオーダーできないメニューがあるとか、10分間しか聞けないような音楽やパフォーマンスがあるとか――。さまざまなアイデアがあると思うので、それをまち中に広げていくことも考えられます。横浜の夜が面白く変わることを、長期的な視点で育てていければいいですね。


横浜市の創造まちづくり事業では、環境を整備し、プラットフォームをつくって、民間やアーティスト、クリエイターと一緒に将来の横浜をつくろうとさまざまな事業に取り組んできた。その一環として今回の「NIGHT SYNC YOKOHAMA」では、特別演出に8施設、4会場が参加し、ビルのライトアップの色を変えたり、サーチライトを置いたりと、官民一体のモデルづくりに取り組んだ。
今回のシンポジウムでは、今後も光だけでなく、フードやパフォーマンスなどさまざまな方法で、横浜の特徴である港や、美しい夜景を活かしたプログラムを横浜中に広げていきたいという展望が横浜市の河本さんから語られた。
お客さんが何人来たか、その人たちがどの程度回遊してお金を落としたかといった経済波及効果を指標とするのではなく、来場したお客さんの「体験の質」を一番に考えること。その質を、長期的な視野で上げていくことで、結果はついてくるのではないかと齋藤さんが締めくくり、「NIGHT SYNC YOKOHAMA」の仕掛け人たちによる対話が幕を閉じた。

取材・文:及位友美(voids
写真:森本総(カラーコーディネーション