2022-12-27 コラム
#都心 #環境・資源 #生活・地域 #まちづくり #ACY

横浜の夜を楽しむ新たな都市体験。光のアート&パフォーマンス―ヨルノヨ アートプログラム開催レポート

2023年1月3日(火)まで開催されている国内最大級の街と光のアートイルミネーションイベント「ヨルノヨ」が、今、港町・横浜を盛大に彩っています。大さん橋から眺めるのがおすすめの横浜都心臨海部の建物や広場を舞台としたイルミネーションショーや、ドームなどの光のオブジェがちりばめられた新港中央広場のインスタレーション、大さん橋ふ頭ビルで楽しめるインタラクティブなプロジェクションなど、「ヨルノヨ」は、都心臨海部のウォーターフロントを中心に展開されています。

12月上旬[コア期間:12月9日(金)~11(日)]には、このウォーターフロントから横浜の街中に光のアートを広げていく取組みとして、象の鼻テラス・パーク、日本大通り、大さん橋、旧第⼀銀行横浜支店、馬車道駅など、横浜ならではの場所でアートプログラムが実施されました。

都市空間で繰り広げられる美術、映像作品や演劇、路上装飾を無料で鑑賞、参加、体験できる贅沢な光のアートプログラムの数々は、観る人の想像を膨らませ、夜のまちを歩く仕掛けとなり、ナイトタイムの横浜を楽しむ新たな都市体験を生み出しました。創造都市横浜では、夜の散歩が楽しくなるこのアートプログラムの数々を振り返り、レポートします。

みなとみらい線馬車道駅を彩った、アニメーションのプロジェクションマッピング

みなとみらい線の馬車道駅構内の改札から見えるドーム天井に投影されたアニメーションのプログラムは「馬車道駅プロジェクション」。2台のプロジェクターを使って投影されるアニメーションを制作したのは、駅の近くに校舎を構える東京藝術大学大学院映像研究科の学生と修了生たちです。

「暗い無地背景の天井に明るいキャラクターが映ることで、ふと気がついて、目を止めてもらう」ことをねらいとした、と映像研究科長の桐山孝司教授はお話しくださいました。広告映像とは異なるさりげない映像作品は、そのねらい通り、静と動が混在する駅の改札のコントラストに嵌って心地良く、行きかう人がふと足を止めて、上を見上げる場面が印象的でした。




歴史的建造物の魅力活用

横浜市では、歴史的建造物や公共空間等を活用し、創造的な活動を発信する「創造界隈拠点」事業として、横浜市の認定歴史的建造物である旧第一銀行横浜支店を活用してきました。特徴的な窓の隙間から漏れる幻想的な映像の光が、まるで行灯のように街を照らし出しているのは、高橋啓祐さんの「赤と青のイメージ」。

「夜景を活かした夜のイベントをやってもらいたいという声に応じて、これからも建物や壁面の活用を考えている」と主催のBankArt1929の代表の細淵太麻紀さんは語ります。青から赤、赤から青と静かにうつり変わっていく作品の様は、建物とあいまって冬の横浜の夜にたしかな存在感をはなっていました。




本町通りを挟んで旧第一銀行の向かいに建つ、生糸を保管した北仲地区の旧横浜生糸検査所附属生糸絹物専用倉庫(通称「旧帝蚕倉庫」)を復元した施設KITANAKA BRICK & WHITEの歴史広場にあるガラス張りのドライエリアの地下空間には、開発好明さんの発泡スチロールによる光の作品「発泡遺跡」が展示されました。

遺跡として陳列されライトアップされた「武器庫」、「王の座」、「棺」など。歴史的な遺構と、遺跡を想起させる発光するアート作品を上から見下ろすと、普段の展示では得られない不思議な感覚になりました。

こちらの作品は、2023年1月31日(火)まで展示されています。




地域の灯りを住民が灯す日常

関内の「関」は関門を意味し、開港場である関門の内側(港側)は「関内」としておなじみですが、その外側は「関外」と呼ばれています。その関外に位置する、大岡川沿いの黄金町では「黄金町灯明ウォッチング」が開催されました。初黄・日ノ出町地区の京浜急行線高架下にある広場「ロックカク」に並べられた3000個の色鮮やかな灯明(とうみょう)。

これは、同地区にある、誰でも立ち寄って話したり、作業したりできるスペース「ステップ・スリー」に、地域の人たちが集まって事前に制作協力したLEDライトのペーパーランプです。5歳から80歳の方まで雑談をしながらの作業から生み出された灯りを使った地上絵は、都市の再開発のプロセスの中で、地域住民の日常的なコミュニケーションから創発されるアート。

「みんなで時間をかけて作ったけれど、今日が終わったら片づけるんですよ」と、黄金町エリアマネジメントセンター・ディレクターの山野真悟さん。この作品は作るプロセスが大事だとも教えて下さいました。花火のようにはかない灯明のアート作品は、まちと人のたしかなつながりから創造された作品でした。




横浜港のパブリックスペースから市民参加型アートの新たな希望

横浜港発祥の地であり、横浜の歴史と未来をつなぐ公園「象の鼻パーク」。併設する休憩施設「象の鼻テラス」では、ZOU-NO-HANA FUTURESCAPE PROJECT 2022が行われました。アートの創造性を用いて公共空間活用の新たな提案を社会実験として行うプロジェクトです。

この日、象の鼻パークには、展示されているアート作品や対岸のヨルノヨのイルミネーションを楽しもうと多くの人が訪れていました。このような賑わいは3年ぶりで、こういった場があることの素晴らしさを感じさせつつ、ネクストノーマル・ナイトライフのコンセプトを提示したZOU-NO-HANA FUTURESCAPE PROJECT 2022。

「海の向こうでは戦争をやっている時に、こうした時間や空間は尊いものです。僕らがやっていることはまちづくり。昼間だけでなく夜の使い方も幅広くやり方があっていい。」という象の鼻テラス アートディレクター岡田勉さんのメッセージ。このプロジェクトのアーティストも、観る人も、作品も等しく出番のあるコミュニケーションから、共に創る市民参加アートの現在と未来に向けた希望をもらえました。






ほのかにライトアップされた日本大通りで夜空と光に包まれ、思い思いに過ごす

神奈川県庁前の日本大通りには、イチョウ並木にイルミネーションが施され、星のようなやわらかい光で通りを照らすオブジェが点在する「ほしのみち」が展開されていました。半円球のオブジェはベンチのように、誰でも座ることができ、訪れた人は、一人で、家族で、ペットと思い思いに、憩いの場として利用していました。

海風を感じながら落ち着いた雰囲気で楽しめるZOU-NO-HANA FUTURESCAPE PROJECT 2022と、横浜スタジアムで開催していた壮大な雰囲気のBALLPARK FANTASIA 2022、「ほしのみち」は、その中間地点として、訪れる人の気分を徐々に盛り上げたり、落ち着かせたりする役割を担い、次の目的地に向かうハブのような空間となっていました。




ツアー演劇への参加で、街の見え方、楽しみ方が変わる

「ほしのみち」で、ライトアップされた日本大通りからスタートし、「ヨルノヨ」のイルミネーションショーのメインビューである大さん橋まで誘う、参加型ツアー演劇「エレガントナイトツアー」も開催されました。

自分たちが最もエレガントなイルミネーションであることを証明するため、横浜・絵麗岸都(エレガント)連合が、クリエイティブでエレガントな横浜の夜景に一世一代の大勝負をかける本作品では、闇夜に輝く”デコリアカー”をひきながら、多くの参加者が横浜の町を闊歩しました。

多彩な仲間とともに、最終決戦の地の大さん橋ふ頭でヨルノヨのイルミネーションショーと5分間の激闘を繰り広げたものの、さすがにかなわず、負けてしまった絵麗岸都連合。勝負には負けましたが、仲間の大切さを再確認し、エレガントな思い出を作ることができました。

photo:加藤和也

photo:加藤和也

photo:加藤和也

小さなストーリーを拾い集めて、街を知る

日本大通りからは、エレガントナイトツアーとパラレルにはじまるもう一つの参加型ツアー演劇がありました。急な坂スタジオが主催・制作の「ライト・ストーリーズ」です。「夜景を楽しみながら街なかに散りばめられた小さなストーリーを拾い集める」物語は45分のショートトリップ。

物語の舞台となった場所を、三浦直之さん(ロロ)によるテキストを追いかけながら散策し、小さなトランジスタラジオから聞こえる台詞や、静かにすれ違う俳優の動きと、都市の夜景が重なる体験を通じて、新たな街の見え方が発見できました。この演劇ツアーは、観る人がこの先の中華街まで興味を持って訪れてもらえるように、と山下公園で終わりを迎えます。

日本大通り、象の鼻パーク、大さん橋を物語とともに歩いた参加者たちは、このツアーを経て、その先に広がる横浜の街をそれまでとは違う感覚で味わえたのではないでしょうか。



ヨルノヨのプログラムのひとつとして開催された、横浜のアート拠点・団体が連携したアートプログラムは、アートとイルミネーションで、横浜の新たな魅力を生み出したり、いつもとは違った横浜の姿を見せてくれたりしました。そして、多様な市民参加により、横浜ならではの都市景観や創造的コミュニティをつくりだしていました。

普段の横浜観光とは違う体験ができる「ヨルノヨ」は、2023年1月3日(火)まで開催しています。冬の夜の澄んだ空気を彩るダイナミックなイルミネーションを楽しみに、街に繰り出してみては?

文:小林野渉(LOCAL GOOD YOKOHAMA
写真:小野寺忍(小野寺写真事務所)※クレジットが入っていないもの全て。


IMFORMATION

ヨルノヨ
日時:2022年11月24日(木)~2023年1月3日(火)17:00~21:05
開催場所:横浜臨海副都心
メイン会場:新港中央広場
メインビューポイント:横浜港大さん橋国際客船ターミナル
https://yorunoyo.yokohama/


各プログラムの開催情報は、「横浜の冬を楽しむ!まちを歩いて夜景とアートをめぐる旅」をご覧ください。

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