
石原璃奈《water lily》

齋藤瑞季《HERO BOY》
白紙の本の上でマンガを読むようにアニメーションが展開する《HERO BOY》は、漫画家を目指す齋藤瑞季さんの作品。最先端の技術を学ぶメディア芸術コースでも、漫画家やイラストレーター志望の学生は多いのだそうです。本の外側もめいっぱい使った迫力ある展開に見入っていると、ほのぼのしたオチにクスッとさせられます。

持田寛太《quantum gastronomy 量子料理》
「CGをどのように見てもらうか」ということを考えて作られた持田寛太さんの《quantum gastronomy 量子料理》は、豆腐や卵、スパム、豆などの食材から好きなものを選ぶと、勢い良くラーメン鉢の中に入っていくというユニークなもの。「食」に関する一連の流れを、アクション映画のような迫力で体験できるインタラクティブな作品です。
おにぎりのカラフルな具材から着想を得たというリップクリーム《ONIGILIP》は、女性の手に収まりやすいサイズ感やフタの動かしやすさなど細部までこだわった優れモノで、ツナマヨ、高菜、昆布など、思わずいろんな色を塗ってみたくなります。将来は商品開発の道に進みたいという作者の川崎愛実さんは、「グラフィックデザイン」や「広告デザイン」といった枠組みにとらわれることなく、日常の中で発見したものを融合させて新しいものを作りたいと、このコースを選んだそうです。

「香りも付けてみたんですが、梅以外は化粧品には合いませんでした…」と話す川崎さん
美術関係者の多い学内展と違い、今回の学外展では商品のターゲットとなるような一般の人にたくさん作品に触れてもらい、大いに参考になったと話してくれました。

湯野早織《Distancable》
人が近づくとワサワサと動くウェアラブル装置を通して、パーソナルスペースを可視化する《Distancable》は、湯野早織さんの作品。びっくりしたお客さんが度々小さな悲鳴を上げていました。

「これとか、かっこいいじゃないですか」と部品を差して熱く語る《ジャンクマン》こと関亮人さん
自分がこれまでコレクションしてきたものや周囲からもらったさまざまなガラクタを積み上げ、その中でひたすらパーツを磨いたり、整理していたという関亮人さん。3日間の会期中はほぼずっといたそうで、展示の配置もだいぶ様変わりしたのだとか。
一方で、ガラクタの山の隣には、3Dプリンタで出力した骨格標本のようなインスタレーションが。生物と無生物の中間的なものを表現したという作品で、その動きに合わせて聞こえる獣の吠えるような音は、意図して付けたものでなく、モーター音なのだと作者の原淳之助さんが教えてくれました。

原淳之助さんの《Hydra》。樹脂で作られた骨のような物体がカクカクと動き、ゴロゴロと鳴る
このほかにも、デジタルな技術だけでなく、有機的な要素や、人の行動の在り方を見直すようなさまざまな問いかけが詰まった50以上の作品が一堂に展示されていた今回の展覧会。未来のデザイナーや漫画家の頭の中をのぞき見したようで、ワクワクしました。展覧会のウェブサイトには、それぞれの作品の写真と解説が掲載されているので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
【案内人プロフィール】
齊藤真菜(Mana SAITO)
横浜市鶴見区在住。2009年Thames Valley University BA (Hons) Digital Broadcast Media卒業。黄金町の元ストリップ劇場を改装したシェアスタジオ「旧劇場」を拠点にフリーライターとして活動。ヨコハマ経済新聞副編集長。