創造都市横浜クロストーク

Posted : 2015.03.19
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創造都市横浜クロストーク

創造都市の横浜の今、そして未来とは?

古き良きものを残しながら、都市として変化し続ける横浜。そんな横浜にクリエーターとして拠点を置き活動する側、そしてビジネスとして横浜に新しい風を送り込むクリエイティブ集団、双方の立場から、創造都市横浜の可能性について語っていただきました。

 
横浜でスタートした新たなプロジェクトたち

昨年からスタートした、「ビジネスクリエイティブヨコハマ」のコーディネートを手がける田中さん。また昨年オープンした、「BUKATSUDO」の企画・運営を行う株式会社リビタの内山さん。東京に拠点を置きながら、横浜のクリエイティブシティ事業に新たな風を吹かせるべく参画されたお二人。対して、横浜に拠点を置く建築家の西田さん。横浜で10年以上まちづくりの活動を行う杉浦さんの進行で、まずは皆さんの最近の活動からおうかがいしました。

杉浦:今回集まった4人は、シェアスペースを運営しているという共通点もあるんですよね。クリエイティブとシェアとこれからの創造都市、みたいなことを軸に、まずは皆さんの横浜での活動からお聞きできますか?

田中:僕らが2003年から都内で運営しているco-labは、まあシェアオフィスなんですが、ここでやっているようなクリエーター同士のコラボレーションで何かを生み出していく、ということを横浜でもやりたいということで声をかけていただいたのが、3 ~4年前ですかね。そこで横浜市が元々手がけていたクリエーター集積に、プロデュースとかコーディネートの機能を入れることで何かを起こせないかと考えまして。これが今の「ビジネスクリエイティブヨコハマ」がスタートしたきっかけです。単純に地域の産業に助成金を出して、地元のクリエーターに何か作ってもらう。そういう従来のやり方だとなかなか結果が出せない。そうならないようにするために、まずはコーディネーターが売れるものは何なのかを考え、それを企業に提案し、その企画にマッチするクリエーターと“お見合い”する、そんな仕組みが必要なんじゃないかというところに辿りつきました。

[上]杉浦さん[下]田中さん

[上]杉浦さん[下]田中さん

 

[上]内山さん[下]西田さん

[上]内山さん[下]西田さん

杉浦:「BUKATSUDO」の方は、三菱地所株式会社が持っている場所を公益財団法人横浜市芸術文化振興財団が借りて、その活用事業者公募にエントリーして生まれれたスペースですよね。

内山:昨年の10月にグランドオープンしました。みなとみらい地区には9万人を超える就業者がいるにも関わらず、活動する場所にはなっていないんじゃないか。横浜に住んで働きたいというモチベーションにつなげるサードプレイスの在り方を考えたときに「部活動」というコンセプトが生まれまして。学びの場、いろんな活動をやっていく場としては認知度はあがってきたかなと思っています。ただ、僕個人としては「部活動」っていうコンセプトは時間をかけて成熟させていかないといけないものだと感じていまして。ただ単に横浜に住んだりオフィスを構えたりというだけでなく、横浜のために何かできることを考えたい人の集積場所にどれだけなれるか、ということが当初の目的のひとつなので、名前に象徴されるような「部活」が本当に機能してくるのか、もうちょっと時間がかかるのかなと思っています。

杉浦:西田さんが、横浜に仕事の拠点を置いたのは?

西田:横浜に事務所を構えたのは15年前です。そこから8年前に、古い建物にクリエーターたちが集まってワークシェアする「北仲WHITE」に入居し、そこから3軒、この横浜の界隈のクリエイティブ拠点を渡り歩いてます。今までは借り手側だったわけなんですが、このクリエイティブシェアという仕組みの仕掛け側にまわってみたいなと。そういう思いで3月にオープンするシェアオフィス「泰生ポーチ」をお手伝いさせていただいてます。横浜市が今までやってきた、アーティストやクリエーターを集積させるという段階が成熟し、それによって街の日常が変化していくという次のステージへ展開していく時期にあるという実感はありますね。

 


創造都市としての横浜はどうなっていく?

杉浦:田中さんは横浜に関わって今年で2年目に入りますが、これから先横浜はどうなっていくと感じてますか?

田中:市庁舎の移転をはじめ、都市計画レベルの大きな変化があって、これが街に与える影響は大きいですよね。移転後を見据えた仕掛けを今から準備していく必要がありますよね。ヨコハマ創造都市センターも運営が替わって、そこに新しいソフトが入ってきたりして、街の顔が増えていくんじゃないかという予感はあります。

杉浦:BUKATSUDOも同じように2年目に入りますが?

内山:僕らは普段、東京を中心に活動しているので、ある意味“よそ者”的な立ち位置なんですね。その視点から見て、横浜って誰もが一度は遊びに行ったことがある魅力的な街。その街としての魅力をもっと外に発信できないかなと。街の中心部に、もっとよそ者でも住みやすい住宅、たとえばシェアハウスとシェアオフィスを一緒にしたようなものができて、今東京に住んでる人が、あえて横浜に住む、みたいなことができないかと以前から考えているんですが。

杉浦:リビタさんの横浜市内の事例でいうと「シェアプレイス東神奈川99」は成功事例として挙げられますよね。

内山:非常に稼働率もいいですね。また東京へ通う交通利便性を魅力に感じて選んでもらえてる感じで、「シェアプレイス東神奈川99」に住んでいる人と横浜をつなげていくことを、もう少し考えないといけないかなと思っています。横浜の中心地への展望ということで言うと、たとえばグローバルに人が呼べるような宿泊施設みたいなものとか。選択肢として、別に横浜じゃなくてもいいじゃん、と僕らも含めみんなが思ってしまっているのが横浜の現状だと思う。住まいでも宿泊でもオフィスでも、あえて横浜に行くという選択をしてもらうための場づくりを僕らは目指してます。横浜にいる人たちのニーズを汲み取って、というよりは新しい価値を提案していく。それがよそ者の役割じゃないかなという気がしていて、だからこそもがき苦しむというところもあるんですが。

西田:横浜の中心部って海が近くて、古い建物があって、ほんとにいいんですよ。僕の事務所にも、山下公園を経由して自転車通勤しているスタッフがいるんですが、景色がよくて気持ちがいいと、毎日楽しんでいます。こういう日常の豊かさを、外の人にも伝えていくことは僕も大事だなと思ってます。クリエイティブシティってクリエーターのためのシティというよりは、みんなが創造的で楽しい生き方をする街、ってことなんじゃないかなと。近くにカフェがあるから今日は寄り道して帰ろうとか、そういう楽しみの選択肢が街にあって、それを自分でチョイスしながらカスタマイズして生きる、みたいなことが楽しめる人が増えたら、それだけで創造的なことだと思うんですよね。

杉浦:街の大きいトピックでいうと横浜市庁舎の移転というのもありますよね。関内駅前から馬車道駅前に移りますが、新しいエリアの再開発についてはどう?

西田:新しいエリアも大事なんですけど、市庁舎って6000人もの人が働いていて、旧市庁舎のエリアからその人口が全員いなくなる。ちょっとした空洞化が起こりますよね。そのエリアをいい意味で余白と考えて、横浜の“次”を作っていける場所になるといいんじゃないかなと考えています。たとえば、最近DeNAベイスターズと新しい取り組みをはじめているのですが、横浜公園はセントラルパークとしてすばらしいのに、あんまり利用されていない。ここを昼休みや夜間に楽しめる場所として何かコンテンツを提供するとか、新しいクリエイティブ×スポーツのようなコミュニティを作るとか。都市生活の面白さみたいなものが提案できる可能性があるんじゃないかと思ってますね。


外から見た横浜の価値と可能性

田中:横浜って賃料が安いですよね。広い部屋が借りられるから、アトリエや事務所を構えるにはすごくいいですよね。

西田:なるほど、東京と比べるとそうかもしれないですね。他に東京と比べて、こういうところが強みなんじゃないか、ってことはあります?

田中:横浜の人たちって、自嘲的に「自分たちはムラ社会だから…」ってよくおっしゃるんですけど、僕はそういうのすごくいいなと思っていて。ムラ社会的なコミュニティを求めて、都会から田舎にどんどん移住したりしている状況もあるわけで。そういう人たちに、もっと近くにムラ社会あるよ、って教えてあげたい(笑)。

内山:西田さんがおっしゃったみたいに、職場が横浜にあればコンパクトに暮らせる街なんだけど、実際は仕事が横浜にないから東京に通ってる、っていう人が多いのが現状なわけです。どうすればいいか?と考えたときに、普通なら横浜に職を作る、となると思うんですけど、僕は中心部に面白い住宅を作ることが大事なんじゃないかと。住むことによって街のよさが分かって、その上で東京で構えていた事務所を横浜に移そうとなれば理想的だなと。

西田:住むと、夜はどう楽しもう?朝は?と、楽しみを選ぶ時間軸が増えますよね。

内山:そうするとお店に人が来る。面白い人が集まりだすと、面白い場所が増えてくる。東京だと丸の内に住宅は作れませんが、横浜ならど真ん中に作れてしまう。

杉浦:それはいいですね。この関内外というエリアは物語があるんです。150年前は何もなかったところに、関所の内側に外国人が住み新しい文化が入って、その周りに国中からいろんな人がやってきて、写真屋、アイスクリーム屋、いろんなものが創業、起業していった。そういう人たちがいっぱいいたという歴史があるんですね。さっき田中さんがおっしゃっていたムラ社会というのも、ある意味、そういうブライドが継承されているんだと思いますよ。

西田:僕は今、「ヨンカイ」という19組が入居するクリエイティブシェア・オフィスに入っているんですけど、気持ちのいいムラ社会っていうのは、確かにその通りですね。制作物を作るにしても、コピーはこの人、デザインはこの人といろんなスキルを持った人がいて協力し合える。だからといって仲間内で全部やろうとは思ってなくて、せっかく面白いことやるなら一緒にやりましょうよ、みたいな開けた感じではある。今日も、僕が横浜在住、田中さんと内山さんは仕事で横浜に来られてるって関係ですけど、横浜をうまく活用しようってことを共有できてる。中と外のマッチングでいい方向に向かう予感がありますね。

杉浦:いろんな人のつながりを具体的な活動に運用できる地場が整いつつあるのが、今の横浜なのかもしれないですね。

創造都市横浜クロストーク

 

対談に登場した横浜のシェアスペース
BUKATSUDO
BUKATSUDO

横浜ランドマークタワーの敷地内にあるドックヤードガーデンの地下1階に“大人のためのシェアスペース”として2014年10月にグランドオープン。三菱地所株式会社から公益財団法人横浜市芸術文化振興財団が場所を借り受け、公募により株式会社リビタを活用事業者として選定した。コーヒースタンド、会員制ワークラウンジ、部室と名付けられたコミュニティスペース、キッチン、ホール、スタジオなどを擁する。

さくらWORKS<関内>
さくらWORKS<関内>

横浜でまちづくりを実践するNPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」が運営する会員制シェアオフィス。約50年の歴史あるビルを、市内のアーティストたちとともに、リノベーションして再生。入居団体は、まちづくりや若者支援に関わる団体から、ライター・デザイナー・プログラマー・大学教授・編集者・起業家・アートや音楽に関するイベントや企画を行うフリーランサーなど多種多様。2011年オープン。

泰生ポーチ
泰生ポーチ

上記「さくらWORKS」が入っている泰生ビルのオーナー会社、泰有社が、新たにさくらWORKSの向かいのビルの2~4Fにオープンする、アーティストやクリエーター向けのシェアオフィス。1Fにはカフェ、屋上には入居者用のガーデンも。対談にご登場いただいた西田さんほか横浜のクリエーターたちが立ち上げに参画。2015年3月オープン予定。

 

撮影協力
co-lab
co-lab

2003年にスタートした、デザイナーや建築家、アーティストなど異業種のクリエーターのためのシェアード・コラボレーション・スタジオ。入会クリエーターが同じ場所をフラットにシェアし、交流・コラボレーションが積極的に行われるよう空間設計を行っている。7つ目の拠点として代官山が2015年3月にオープン予定。