デザイナー×地元企業①:うちわとマスキングテープ

Posted : 2014.08.08
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この夏「ヨコハマトリエンナーレ2014」にあわせ、市内のアートスペースではイベントがぞくぞく開催! イベントを見たあとは、おみやげに「創造都市横浜」ならではの一品を選んでみては? デザイナー×地元企業のコラボレーションによる新商品を、2回にわたってご紹介しよう。
うちわ「浜風」 地元企業:株式会社エクスポート デザイナー:両見英世  価格:286円(+税)

うちわ「浜風」 地元企業:株式会社エクスポート  デザイナー:両見英世  価格:286円(+税)

 

横浜ならではの商品ができるまで

横浜のデザイナー×地元企業のコラボレーションによる新商品の開発は、今年度から実験的に始まった取り組みだ。そしてこの夏、横浜らしさ満載の5アイテムがついに誕生! 横濱ナポリタン、ヨコハマドロップなど横浜を代表する食文化をはじめ、うちわやマスキングテープといった生活の中でさりげなく活躍しそうな日用品まで、多彩なグッズが生まれた。本サイトではこの5アイテムを2回にわたりご紹介する。今回取り上げるのは、夏を乗り切る必須アイテムの「うちわ」1種と、便利でかわいい「マスキングテープ」2種の計3アイテム。

これら商品のデザインに関わった横浜のデザイナー3名と、地元企業の担当者2名の声を交えながら、新商品ができるまでを追った。

「浜風」を運ぶうちわはいかが?

デザイナーの両見英世さんと、株式会社エクスポートのコラボレーションによって誕生したのが、うちわ「浜風」だ。プラスチック製でスマートなサイズなので、バッグに入れて快適に持ち運べるのもうれしい。猛暑日が続くこの季節には欠かせないアイテムだ。うちわの裏表にあしらわれた「浜」「風」の文字には、横浜をイメージして制作中のオリジナルフォント「濱明朝体(仮)」が用いられている。両見さんにうちわデザインのプロセスを聞いた。

「うちわの成り立ちや用途に学びながら、横浜らしさ、涼を届ける道具、日常空間への調和、愛着の4つのキーワードをもとに取り組みました。デザインは、横浜を象徴するブルーに、制作中のフォント『濱明朝体(仮)』で『浜・風』という言葉をあしらい、涼し気なイメージを加えています。うちわ全体が柄のように見えることも意識しました。」(両見英世・デザイナー)

両見さんはタイププロジェクトに所属する日本語フォントのデザイナーだ。この「濱明朝体(仮)」の開発には、横浜が開港150周年を迎えた2009年から取り組んでいるという。「浜風」はそんな両見さんの横浜への思いがあふれる作品になった。
両見英世さん執筆の「関内外OPEN!リレーコラムVol.11」はこちら

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うちわ「浜風」

 

 

 
新商品として「うちわ」の制作を提案した株式会社エクスポートは、オリジナルグッズの企画・製作や、デザイン開発を行っている企業だ。横浜ランドマークタワーや横浜赤レンガ倉庫1号館に直営店舗を構え、キャラクター「ブルーダル」などのオリジナル商品も手がけている。今回の新商品の開発にあたって、どのような期待を込めたのだろう? 本企画担当者の小柴克之さんに聞いた。

「無料でもらえるイメージが強いうちわをテーマに、横浜の若手デザイナーがどんな提案をしてくれるか期待しました。うちわの歴史的な背景に着目した両見さんの提案は、新鮮で説得力がありましたね。『浜・風』という文字が涼しげな配色で堂々と表現され、現在も制作中の『濱明朝体(仮)』という横浜オリジナルフォントだと知り、商品のストーリーに奥行きが出ました。」(小柴克之・株式会社エクスポート)

横浜のシーンがマスキングテープに!

デザイナー×地元企業のコラボレーション、マスキングテープの開発には磯部有規さん、加藤朋子さん、2名のデザイナーが名を連ねた。女性ならではの柔らかい感性から生まれたのは、横浜から得たインスピレーションを表現した2種類のデザイン。マスキングテープを制作した地元企業は、光画コミュニケーション・プロダクツ株式会社だ。同社ではコミュニケーション・グッズの企画・デザイン・製造・販売ほか、さまざまな事業を展開している。担当者の野津手重之さんに今回のコラボレーションの感想を聞いた。

「マスキングテープは凸版でプリントするため、細かいデザインが再現しづらかったり、版のつなぎ目を目立たなくする工夫が必要です。今回コラボレーションできたデザイナーさんには途中の校正でうまく修正して頂き、素敵な商品に仕上がりました。トリエンナーレの会場などで、多くの方にお買い求めを頂ければ嬉しいです。これを機に新たなデザインを取り入れた商品開発に繋がることを楽しみにしています。」(野津手重之・光画コミュニケーション・プロダクツ株式会社)

デザイナーの磯部有規さんは、マスキングテープのイラストに、横浜市内の観光スポットを選んだ。狙いは、テープを切って、ガイドマップに気になる観光スポットをインデックスのように貼ったり、マップの上に立てて貼るなど、自由に使ってもらうこと。マスキングテープを立体的に使う斬新なアイデアだ。商品名は「ヨコハマークス」。

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マスキングテープ「ヨコハマークス」 地元企業:光画コミュニケーション・プロダクツ株式会社 デザイナー:磯部有規 価格:300円(+税)

 

「ヨコハマークスは横浜の旅をもっと楽しくするテープです。このマスキングテープのイラストに7つの観光スポットを選んだのですが、横浜の人が見て、これこそが横浜!と納得していただけるスポットであること、横浜に訪れた方におすすめしたいスポットであることの2つの視点から考えて選びました。」(磯部有規・デザイナー)

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マスキングテープ「ヨコハマークス」

 

 

横浜の歴史資料の写真を見てマスキングテープのデザインを思いついたのは、デザイナーの加藤朋子さん。加藤さんの印象に残ったのは、その時代を生き、謳歌した人々の姿だった。マスキングテープのデザインには、開港当時を思わせる欧風の洋服から現代の装いに至るまで、さまざまなファッションで行き交う人々が描かれた。

マスキング (3)

マスキングテープ「ヨコハマさん」 地元企業:光画コミュニケーション・プロダクツ株式会社 デザイナー:加藤朋子 価格:300円(+税)

 

 「建物や街並みと同時に、それらを創り上げた人々の暮らしもまちの歴史と文化であり、“横浜らしさ”を構成する大きな要素の一つであると感じました。そこで生まれたのが『ヨコハマさん』です。ヨコハマさんを使って、旅先の出会いをふと思い返すきっかけになったら嬉しいです。」(加藤朋子・デザイナー)

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マスキングテープ「ヨコハマさん」

 

 

横浜ならではの魅力を引き出す商品づくり

横浜市がすすめる創造都市政策のもとACYはアーティストやクリエーターの集積に取り組むとともに、相談窓口の開設や、助成事業など、その活動を下支えしてきた。今回のデザイナーと地元企業による商品づくりも、そのマッチングのコーディネーションをACYが担っている。商品開発の実績のある企業に声をかけ、企業からの提案で商品を決定。その後デザイナーとのマッチングによるデザインコンペを行った。

デザイナーと地元企業がタッグを組むことで、両者にはどのようなメリットがあるのだろう? 地元企業にとっては、横浜ならではのデザインで商品の付加価値を上げること。そしてデザイナーにとっては、新しいビジネスの機会が生まれることが挙げられる。でもそれだけじゃない。発注する・されるという関係ではなく、両者が協力して新商品を開発するという関係性から、横浜ならではの魅力を引き出す商品が生まれている。そんなクリエーションのプロセスにこそ、この取り組みの魅力があるのではないだろうか。

横浜のデザイナーと地元企業のコラボレーションから、これからも新しい発想で新商品が生まれていくのが楽しみだ。
次回「デザイナー×地元企業②」の記事では、「横濱ナポリタン」「ヨコハマドロップ」に加え、「横濱ビール」もご紹介予定。お見逃しなく!

 


デザイナー×地元企業による横浜らしさ満載の商品誕生!

販売場所詳細:
ヨコハマトリエンナーレ2014新港ピアオフィシャルショップ、ヨコハマ創造都市センター(2015年3月まで)、横浜ランドマークタワー69Fタワーショップ、横浜赤レンガ倉庫1号館赤レンガデポ、大さん橋エクスポート、横浜マリンタワー2階ショップ、横浜人形の家ミュージアムショップ、神奈川県立歴史博物館ミュージアムショップ、市内文化施設、ほか

【デザイナープロフィール】

hideyoryoken両見 英世
1982年生まれ。タイプデザイナー。ウェブサイト制作会社を経て、2007年タイププロジェクトに参加。タイププロジェクトが掲げる都市フォント構想の推進メンバーとして、「cityfont.com ― voice of a city.」の立ち上げに携わる。2009年より横浜をテーマにしたフォント「濱明朝体(仮)」を開発中。

 

isobe01磯部 有規(cell division)
1987年静岡県生まれ。横浜の人の優しさと居心地の良さに惹かれ、上浜。会社では、みんなにオススメのお菓子を配り歩くひと。
自分が良い!と思ったものはとことん勧める、オススメしたがりおばさんです。お仕事でも、お客様の良いところを世に広めていけるようなブランディングデザインができたらなと思っています。

kato加藤 朋子(共同アトリエ/Tomoko Kato Illustration Atelier)
2003年Tomoko Kato Illustration Atelier設立。2005年横浜に拠点を移し、同じくフリーランスのクリエイター数名でシェアオフィス「共同アトリエ」を構え活動中。主な制作は、東京都住宅供給公社イメージキャラクター「キボウドーリ」、アウトドアメーカー「モンベル」アロハシャツイラスト制作、2009年函館市観光ポスター制作等。