日本で唯一のレコード工場の現場から――“モノ”としてのレコードの魅力

Posted : 2016.09.15
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デジタルの環境が進化する一方、今アナログレコードのブームが再来している。横浜市鶴見区に日本で唯一のアナログレコード製造工場をもつ東洋化成は、テクニクスとナガオカと共同した「レコード再発見プロジェクト」に取り組んでいる。去る8月31日、メディアに向けた本プロジェクトのトークイベントと工場見学の現場を訪れた。
一枚一枚、人の手で確認され市場へと流通していくレコード。レコード工場はクラフトマンシップがひかるモノづくりの現場だ。

一枚一枚、人の手で確認され市場へと流通していくレコード。レコード工場はクラフトマンシップがひかるモノづくりの現場だ。

 
日本で唯一のレコード製造工場、需要の高まりでフル稼働

横浜市鶴見区にある東洋化成・末広工場。最寄りの鶴見小野駅周辺は、「横浜サイエンスフロンティア地区」と呼ばれていて、研究所や大学院といった研究や開発の拠点施設が建ち並んでいるエリアだ。その一角に日本で唯一のアナログレコード製造工場、東洋化成株式会社の末広工場がある。

スタンパー盤で上下をはさみ、レコードがプレスされていく様子

レコードがプレスされたあと

全盛期には全国各地にあったレコード工場だが、その数は減少し、現在はこの末広工場のみが稼働している。だが同社のレポートによるとアナログレコードの製造量は年々上がっていて、今年度の売り上げは20~30%(昨年度比)のアップを見込んでいるそうだ。今、世間ではアナログレコードが注目されている。

 

 

 
アナログレコードの魅力とは?

8月31日に開かれた「レコード再発見プロジェクト 第二弾イベント」のトークには、プロジェクトを仕掛ける3社、レコード針の株式会社ナガオカテクニクスのプレーヤーを製造するパナソニック株式会社、そしてアナログレコードの東洋化成株式会社から登壇者が参加。ゲストにはシンガーで元Cymbalsの土岐麻子さんを迎えた。

土岐さんは自身のいくつかのアルバムをアナログレコードでも販売しているシンガーだ。その魅力について、どのように捉えているのだろう?

シンガー・土岐麻子さん

シンガー・土岐麻子さん

「レコードのブームはこれまでに何回かあったと思います。私が大学生ぐらいの時にも流行っていたのですが、私たちの時代は親がレコードを聴いていたこともあり、幼い頃に触れていた懐かしさもあって聴いていました。でも今のレコードブームの中心は、身近にレコードがあることが当たり前ではなかったであろう20代の若い人たちです。

アナログは、解像度が高いCDに比べると情報量としてははるかに少ないにも関わらず、モノとしての魅力や、存在感を大切にする若い人が増えていることに、未来を感じますね。」

株式会社ナガオカ・寺村博さん

株式会社ナガオカ・寺村博さん

また、高度な技術で高品質のレコード針を製作してきた、ナガオカの技術アドバイザー・寺村博さんは、レコードで音楽を聴くことの魅力を語った。

「アナログは、針やカートリッジを選んで組み合わせることで、自分好みの音質をつくって音楽を楽しむことができます。高尚な趣味ではありますが、そこがアナログレコードの良さですね。」

一つひとつ、最後は人の手で仕上げていくレコードの針。技術者たちの熟練の技がその品質を支えている。

1本10万円ほどのレコードの針。深みのある音色が印象に残った。

1本10万円ほどのレコードの針。深みのある音色が印象に残った。

 
レコードづくりのプロセスを見学――エンジニアたちの匠の技

トークセッションのあとは、いよいよ工場でレコードづくりの見学だ。製作は次のようなプロセスで進む。①カッティング:ラッカー盤の製作(レコードの型をつくるための原型) ②メッキ:スタンパー盤などの製作(レコードの型づくり) ③プレス作業(レコードの成型、量産) ④仕上げ(レコードの包装作業)、そして最後に出荷という流れだ。

はじめにカッティングの作業室を訪れた。案内してくれたのは、東洋化成が誇るエンジニアの手塚和巳さんだ。まずは音源を取り込み、その信号を調整してカッティングマシーンに送る。すると針が“音溝”を刻んでいく仕組みになっている。この作業では、ラウドな音や繊細な音など、音溝の深さや幅を調節することで、クライアントのリクエストに応えていくという。エンジニアへの指名での依頼もあるほど、熟練の“技”が必要とされる工程だ。カッティングによって製作したラッカー盤から、今度はレコードづくりの型になるスタンパー盤がつくられる。

顕微鏡で音溝を紹介する手塚さん。たった1㎜の間に何10本もの溝が刻まれていた。驚くべき精度だ。

塩化ビニールの塊を手にもつ石丸さん。強烈な圧力とともにスタンパー盤でプレスされ、レコードが形成される。

 

次にプレス機を案内してくれたのは、東洋化成株式会社レコード事業部部長の石丸仁さんだ。塩化ビニールの原料を、先ほどの型(スタンパー盤)で上下にはさみ、強烈な圧力を加えるとレコードが完成する。

レコードを量産していくプレス機

レコードを量産していくプレス機

レコードの仕上がりを確認する職人たち

レコードの仕上がりを確認する職人たち

レコードの音溝を掘るカッティングマシーン

レコードの音溝を掘るカッティングマシーン

大きな圧力をかけるプレス機

大きな圧力をかけるプレス機

 

東洋化成の末広工場は、1959年にプレス工場として創業し、ここ横浜でレコードづくりへのこだわりを追及してきた場所だ。一枚一枚、職人たちの手仕事を経て、市場へと流通していくレコード。その製造工場は、熟練のクラフトマンシップがひかる現場だった。

(文・及位友美/voids

レコード再発見プロジェクト

東洋化成、テクニクス、ナガオカの3社共同による「レコード再発見プロジェクト」。日本の音楽ファン、オーディエンスに向けて今後さまざまなイベントを展開していく予定だ。また11月3日には東洋化成主催の「レコードの日」というイベントが開催される。
http://rediscover.jp/

【イベント情報】

レコードの日
アナログレコードの魅力を伝える

日時:2016年11月3日(祝)
概要:午前0時より、レコードの日に向けて制作されたアナログレコードを一斉に販売開始
参加店舗:ディスクユニオン/タワーレコード/HMV その他公式サイトにて随時更新予定
公式サイト:http://レコードの日.jp/
主催:東洋化成株式会社