2022-12-21 コラム
#生活・地域 #まちづくり #デザイン #関内外OPEN #ACY

関内外OPEN!14「出航!スタジオツアーズ−横浜で活動するクリエイターの拠点を巡る旅」開催レポート

2022年10月1日(土)、2日(日)の二日間にわたって「関内外OPEN!14」が開催されました。今年は、昨年と同じく横浜市営地下鉄関内駅1番出口近く“関内えきちか広場”をメイン会場としつつ、新たな取組みとしてクリエイターがツアーコンダクターとなり15のツアーを行いました。今回の記事では、その様子をレポートします。

クリエイターとまちをつなぐイベント 関内外OPEN!

関内外OPEN!は、2009年から毎年開催されている、クリエイターが主体となったアートイベントです。もともとは、横浜に集まってきたクリエイターたちが「私たちは怪しいものではありません」と、自分たちのアトリエや仕事場をまちの人達に開いた“オープンスタジオ”がきっかけに始まりました。

「関内外OPEN!」の名前は、「関内」「関外」という地元の人が呼ぶ地区名から取っており、現在のJR根岸線関内駅付近に江戸時代に設けられた”関所”の海側を「関内」、反対側を「関外」としたことに由来しています。

この2つの地域は、2009年当時に横浜市がクリエイターを誘致していく地域としていたため、そこに集まっているクリエイターのイベント名称として「関内外OPEN!」となりました。

当時は、アーティストやクリエイターのスタジオを開く意味で「OPEN!」としていましたが、2016年からは、関内桜通りの道路を活用したアートやデザインのイベント「道路のパークフェス」の開催も始まり、アーティストやクリエイターが“街を開いていく”という意味も合わせて「OPEN!」が使われるようになりました。
このように、普段使われていない場所を“クリエイターのアイデアで開く”という取り組みは、現在の「関内えきちか広場」の活用にも通じています。

時を経て2022年の現在。クリエイターは関内外地域にとどまらず、横浜市内のさまざまな地域で事務所を構えたり活動をしたりするようになり、クリエイターが仕掛ける創造的な活動や場が次々と生まれています。

*関内・関外地区について詳しくはこちら

関内外OPEN!14の新しい取組み

そこで、今年の関内外OPEN!14は、あまり知られていないクリエイターの活動を身近に感じてもらうことを目的に、関内外地区を中心としながら、野毛地区や弘明寺などにあるクリエイターの拠点を訪ね、まちなかを回遊しながら楽しむスタジオツアーを中心としたフェスティバルとして開催しました。

関内外OPEN!14メイン会場

メイン会場の「関内えきちか広場」には、ふ頭をイメージしたパビリオン*1を中心に、クリエイターが日々さまざまな発想やアイディアを生み出す際に使用している椅子を集めた「50組×20mの波止場」*2、「LOCAL BOOK STORE kita. POP UP STORE」*3、「tocotoco屋台カフェ」*4、「こどもプレイエリア|こどもWORKSHOP」*5が広がり、横浜の街へ繰り出していきたくなる” 港” のような場所が生み出されました。

会場に立ち寄った人たちは、親子でモノづくりワークショップを楽しんだり、じっくり本屋さんをのぞいたり、カフェで飲み物を買って「50組×20mの波止場」やパビリオン中央に置かれたイスとテーブルでおしゃべりしたり、物思いにふけったり、、、思い思いの方法で楽しんでいて、会場にはのんびりと穏やかな空気が流れていました。

<設計>
*1:SCALA Design Engineers 村上翔+ タナカマミヤアーキテクツ田中麻未也

<運営>
*2:TDL architects 田野耕平+神奈川大学建築学部上野研究室+日本工学院八王子専門学校学生有志

*3:mass×mass 関内-横浜のシェアオフィス・コワーキングプレイス
*4:一般社団法人からこそBOX-横浜関内外エリアを中心に移動式屋台カフェ「からこそcafe」を運営。
*5:株式会社ピクニックルーム-子育て支援を人材育成の観点からとらえ、子ども、保護者、家庭、そして地域と連携しながら”楽しく生きる未来”を考える企業。

「出航!スタジオツアーズ」の内容をご紹介

No.1 不老町・寿町・石川町。異なるまちの暮らしに触れるツアー

JR線の関内駅から石川町駅までのルートから組み立てられたこのツアー。少し歩けば町名が変わり、まちの雰囲気も変わる中区の特徴を体感でき、訪問先もデザインスタジオや建築事務所、健康福祉交流センターの協働スペース、宿とマルシェ、ギャラリーと多様で、インクルーシブな横浜の一面を見てとれました。
参加者は建築模型に感動したり、クリエイターの話を聞いてヒントを得たり、1人では行きづらい寿町に行けたことに満足感を得たり。情報量が多いこのツアーから、それぞれ自分が大切なことを持ち帰った印象です。
(文:安食真)

ツアーコンダクター:林北斗さん(一般社団法人からこそBOX理事)
訪問先: Contemporaries、studio nibroll+lob.、横浜市ことぶき協働スペース、ヨコハマホステルヴィレッジ(コトラボ)、LAUNCH PAD GALLERY

No.2 本にまつわる関内駅周辺ツアー

本の編集やデザイン、出版を行うオフィスや、ブックカフェ・書店など、関内の本にまつわる拠点を訪ねました。普段立ち入ることのないオフィスでクリエイターの話を聞け、本好きにはたまらない内容のツアーとなりました。

ツアーコンダクター:齊藤真菜さん(ライター、Arcade Books)
訪問先:kita.、voids、モ・クシュラ、クラフトワークス、Archiship Library & Café、相澤事務所、三浦佑介さん&佐藤恵美さん

No.3 弘明寺にアートってあるの?はい、あります。すごくあります。

クリエイティブな人材が入居する弘明寺のシェアハウス「ニューヤンキーノタムロバ」でコミュニティビルダーを務める ”ダバちゃん”が、弘明寺の拠点を紹介するツアー。イラストレーターの方が運営するアートギャラリーの Goozen、建築家のご夫婦が運営するアキナイガーデン、GM2ビルでは、現代美術家の小泉明朗さんと渡辺篤さんのアトリエを訪問し、各拠点のオーナーさんやアーティストさんのお話をじっくり伺いました。
最後は、 ダバちゃんが住むニューヤンキーノタムロバで、参加者の交流もあり、とても充実したツアーとなりました。

ツアーコンダクター:Janwill Davantesさん(ニューヤンキーノタムロバコミュニティービルダー)
訪問先:ニューヤンキーノタムロバ、Goozen、アートスタジオアイムヒア(渡辺篤)、小泉明郎スタジオ、アキナイガーデン

No.4:濃い!黄金町アートツアー

「濃い!黄金町アートツアー」では、地域防犯拠点ステップ・スリーからスタートして、黄金町で活動しているアーティストのアトリエや開催中の展覧会を訪問しました。黄金町を周りながら、黄金町の歴史、黄金町にアーティストの拠点が増えている背景などもツアーコンダクターからお話があり、ただ巡るだけではなく、人のつながりを感じながら巡れるツアーとなりました。
アトリエは晃子てるぬまさん、SUZUKIMIさん、木下直人さん、片桐三佳さん、橋村至星さんのアトリエや佐野屋本店さんを訪問させていただきました。
(文:吉田敏明)

ツアーコンダクター:竹本真紀さん(美術家、2010年頃から黄金町に関わり、地域の方と交流しながら制作している)
訪問先:晃子てるぬま、SUZUKIMI、木下直人+片桐三佳、佐野屋本店(商店) 、橋村至星(はしむらしせい)

■No.5 トキワ/シンコー(ビル)荘 隣のクリエイター

関内外OPEN!14メイン会場の関内えきちか広場からほど近い場所にある、集合アトリエの常盤不動産ビル/伸光ビル(それぞれ築64年、築55年)のオープンスタジオをめぐるツアー。このツアーの特徴はコンダクターが入居者自身(建築家の安田博道さん・写真家の中川達彦さん)であること。
スタジオ訪問時には入居者同士だからこそ聞くことができるお話なども多く生まれ、ツアー参加者にも「1日体験入居」的に楽しんでいただけました。
(文:岡部正裕)

ツアーコンダクター:トキワ/シンコービル住民会メンバー
訪問先:voids、ブリッヂ、Art Connect Yokohama、櫻井計画工房、悦計画室、ライトハウス、アトリエ・モビル、前田篤伸建築都市設計事務所、CHA、SCALA Design Engineers、kiyomi’s antiques、ときにわ、MOZMENE、ピクニックルーム、tote architects LAB

No.6 泰生ビル・泰生ポーチ 入居者のスタジオを巡るツアー


関内さくら通りに面する古い雑居ビル「泰生ビル」「泰生ポーチ」をめぐるツアー。築50年を数えるこの古いビルには「まち」を共通のテーマに掲げ活動するクリエイターたちが多く入居しており、様々な分野でそれぞれのアイデアをまちで実践する実験場とも言える空気を感じます。
クリエイターそれぞれのユニークな活動だけでなく、ビル内で密に連携した協働の取り組みが多いのもこのビルの特徴。参加者は関内駅近にこんな場所があったなんてと感心したり、参加者自身も活動に関わりたいという声も。このツアーをきっかけにまちに出る魅力を知り、参加するきっかけになったのではないでしょうか。
(文:瀧脇信)

ツアーコンダクター:瀧脇信さん(一般社団法人からこそBOX代表理事、移動式屋台カフェの運営)
訪問先:からこそBOX、ピクニックルーム、似て非WORKS、さくらWORKS<関内>、THE RABBITS’ BASE/ブレ恋制作実行委員会、ファブラボ関内、オンデザインパートナーズ、泰生ポーチフロント、マツモトコーヒーロースターズ、SITE BAY YOKOHAMA、TDLアーキテクツ、ODIODI

No.7 関内外OPEN!が生み出す横浜のスタートアップとクリエイターの共創

YOXO BOXと共催した、スタートアップ企業4社と関内外OPEN!クリエイター2名によるトークセッション。スタートアップ企業が事業内容や課題を発表し、クリエイターがそれぞれの視点でアンサーする形式で進みました。
単なるカタチの話だけではなく、事業としての可能性や広げ方について言及する、まさにクリエイターの仕事の現場を体感できる内容。参加者とのコミュニケーションは少なめでしたが、開催後に、登壇したスタートアップ企業とクリエイターが実際に協働し始めたことも大きな成果です。
(文:安食真)

ファシリテーター:畑洋一郎さん(YOXO BOXコミュニティコネクター)
登壇者:佐保勝彦さん(アルケリス株式会社)、渡辺洋平さん(ディアベリー株式会社)、飯田百合子さん(株式会社フィルズ)、山中享さん(LOOVIC株式会社)、安食真さん(スタジオニブロール)、佐藤邦彦さん(プロダクトデザイナー)

No.8 クリエイターと話せて巡る、横浜クラフトビール醸造所ツアー

日本で一番クラフトビールの醸造所が集積する街横浜を歩いて巡るツアー。ビール発祥の土地、横浜で1999年に誕生した「横浜ビール」の広報、横内勇人さんをツアーコンダクターに迎え「横浜ビール」から「REVO BREWING」「NUMBER NINE BREWERY」を訪問。
ブリュワリーが大切にする想いで作られたビールを堪能するだけでなく、それぞれに関わるクリエイターの話を交える構成で、ラベルデザインを手がけるデザイナーや、ビールのモルト粕をアップサイクルしたクラフトビールペーパーの企画者の紹介も行いました。参加者同士の交流もあり、ビールを飲む時間がより実りある時間になりました。
(文:木村薫)

ツアーコンダクター:横内勇人さん(株式会社横浜ビール)
訪問先:横浜ビール、REVO BREWING、NUMBER NINE BREWERY、14product、kitafuku、佐藤翔平さん(くっくショーヘイ)

No.9 関内の建築家とめぐる建築ツアー

関内で活動する建築家、原崎寛明(設計事務所CHA)さんをツアーコンダクターに迎えたツアー。ご本人の事務所では建築模型を手にプロジェクトのお話をしていただいた他、建築を設計する上で欠かせない他分野の協働者の拠点を巡りました。
プロダクトデザインを手がける事務所では建築家との出会いから生まれた活動の話も伺えました。
「mass×mass関内」などのシェアオフィスや花屋など、原崎さんが関わった施設も見学。建築学科の学生や、「創造都市横浜」についてのレポートを書いている学生などが参加。横浜の街を建築という目線で知ることができる、知的なツアーとなりました。
(文:木村薫)

ツアーコンダクター:原﨑寛明さん(設計事務所CHA共同主宰)
訪問先:tokiwa202、I’m home、mass×mass関内、BALANCE FLOWER SHOP -KITANAKA-、株式会社N and R Foldings Japan、G Innovation Hub YOKOHAMA、株式会社ルーヴィス

No.10 野毛山の麓がアツい!藤棚戸部のホットスポット をめぐるツアー

関内外の西側に位置する野毛山のツアーでした。さまざまな活動をしているクリエイターが多くいて、麓では様々な拠点が日々増えています。今回は藤棚戸部のホットスポットをめぐるツアーでは、建築/まちづくり/アート/写真を専門にする4人のクリエイターが集まる野毛山kiezからスタートして藤棚を巡り、地域の中に溶け込んでいるクリエイターの活動拠点を訪問しました。
実際にクリエイターが活動しているアトリエや拠点の中に入って、どのような工夫をしているか、お話を聞きながら街めぐり。地域の魅力が活発に話し合われるツアーでした。最後は藤棚デパートでコーヒータイムをして和やかに会話を楽しみました。
(文:吉田敏明)

ツアーコンダクター:永田賢一郎さん(建築家・YONG architecture studio)
訪問先:YONG architecture studio、斎藤真菜さん、about your city、吉田ゆうさん、加藤甫さん

No.11 吉田町防火建築帯×大岡川沿いの街歩きツアー

吉田町から福富町、日の出町、また、市役所とさくらみらい橋の拠点や建築物をスタンプラリー形式で歩いたツアー。各所でスタンプを押して、オリジナルトートバッグを作りました。

ツアーコンダクター:塚本安優実さん(飯田善彦建築工房)、田邊裕之さん(土木デザイン事務所・EAU)、わかすぎ雨魚さん(作家)
訪問先:Archiship Library&Café、福富町公園、日の出スタジオ、都橋商店街、さくらみらい橋、東京藝術大学大学院映像研究科

No.12 ミナトノアート2022『ミナトノARアートフェスティバル』

同時期に開催されたミナトノアート2022と関内外OPEN!14が連携。ARアートを企画制作者の説明付きで巡るツアー。まちをキャンバスに描かれたARアートの作品は、見慣れた横浜の風景を軽やかに彩っていました。
ファミリー参加が多く、子どもたちがスマホを両手で持ち、画角を探しながらARアートを出現させていたことが印象的。いま小さな子どもたちが、ここ横浜で、最先端のデジタルアートに触れられたことは将来大きな意味があると思います。
(文:安食真)

ツアーコンダクター:Petrichor Anji Kato、田口竜太郎さん
訪問先:ミナトノARアートフェスティバル(Kenxxxooo、Allan Berger、solar.w、omega.c、Asagi/アサギ東京、Julia、Anne Horel、cybernerdbaby、Sufee Yama、Juliah Champion、Kuno Fell Asleep、Petrichor Anji Kato)

No.13 野毛界隈~写真とメディアをめぐるツアー

飲食店や大道芸で知られる野毛・日ノ出町エリアは、写真文化発祥地でもあり、近年は野毛ちかメディアやフリーペーパー、出版社などが点在しています。写真とメディアを切り口にクリエイター・アートとまちづくりに触れることができたツアーとなりました。

ツアーコンダクター:近藤宏光さん(NPO法人ザ・ダークルーム・インターナショナル)
訪問先:野毛ちかみちメディア広告、THE DARKROOM INTERNATIONAL、YOKOHAMA SEASIDER MAGAZINE、7artscafe

No.14 てくてく下横 横浜の下町 末吉町・若葉町・横浜橋をあるく

横浜の下町と呼ばれる末広町〜若葉町〜横浜橋を歩くツアー。横浜市立大学3年生で横浜の関外エリアを中心に、場づくりとアーカイブを行う「下町編集室OKASHI」代表の小林璃代子さんがツアーコンダクターを勤めました。「似て非WORKS」では現代アートが生まれる場所に触れたり、映画館の「シネマ・ジャック&ベティ」では映写機が作動する現場を見学。
よく知っている横浜の少し内側を掘り下げて伝えたいという小林さんの想いから、古地図を片手に現在の街の様子を照らし合わせた説明を挟んだり、横浜のこんぴらさん等にも足を運びました。
(文:木村薫)

ツアーコンダクター:小林璃代子さん(下町編集室OKASHI代表、横浜市立大学学生)
訪問先:下町編集室OKASHI、似て非WORKS 末吉町、若葉町ウォーフ、シネマ・ジャック&ベティ

No.15 誰もがクリエイターになれる時代にクリエイターができること デザインアウトサイダーの挑戦!山下町〜元町をめぐる

ツアーコンダクターのアオキジュニヤさん(グラフィックデザイナー)がオーナーをつとめる、中華街にあるホテル「ROOM INN Shanghai」からツアーがスタート。本業とは別の業種(宿泊業)に踏みだしたご本人の視点・経験のお話を伺いながらホテルを見学しました。次は、中華街のメイン通りを抜け「ROUROU」へ。
ROUROUは服飾ブランドですが、ブランドの世界観を反映したカフェも運営されており、そこも見学しました。その後、訪問予定はなかったアジアンセレクトショップ「tef-tef」さんを急遽訪問。オーナーの「個人的なアジア雑貨の買付からスタートし今に至る」というお話しを、新しいことに挑戦した事例として伺いました。最後は元町に移動し、アートギャラリー内に寿司スタンドがある「Gallery+Sushiあまね」で店主の田口さんのお話を伺いました。
(文:岡部正裕)

ツアーコンダクター:アオキジュニアさん(グラフィックデザイナー・Designbase株式会社)
訪問先:ROOM INN Shanghai、Designbase株式会社、ROUROU、Gallery+Sushiあまね


関内外OPEN!14幹事

安食真さん(studio nibroll
岡部正裕さん(voids
木村薫さん(14 product)
小泉瑛一さん(about your city)
吉田敏明さん(明蓬館高校)

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