川久保ジョイ展、黄金町・高架下スタジオにて

Posted : 2017.03.30
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高架下スタジオ Site-A ギャラリーで、若手アーティストの活動を紹介する黄金町エリアマネジメントセンター。この3月末から、精力的な活動を展開するアーティスト・川久保ジョイさんの企画展がスタートする。黄金町での紹介は初めてとなる川久保ジョイさんの本展では、戦争や経済、「大文字の歴史」と個人史をめぐりながら、過去・現在・未来を見つめるインスタレーションが発表される。

《二百万年》ネオン、2015、個人蔵

 

壮大な宇宙の時間とともにある、個人の歴史

200万年の孤独、さくらと50万光年あまり」と題された本展。謎めいたタイトルに、いったいどんな展覧会なのだろう? と興味をひかれた。200と50を足した「250万光年」という数字に注目してみよう。約250万光年とは、地球とアンドロメダ銀河の距離を表しているという。アンドロメダ銀河は、肉眼で見える最も遠い天体として知られる。このように壮大な宇宙の時間とともにある、地球の時間。私たちの日常生活のなかで、このような宇宙の時間を感じることはなかなか難しい。

だがアーティストの川久保さんは、日常的には捉えきれない「時間」に注目する。過去から現在、そして未来へと流れる時間、“歴史”は循環しているのではないだろうか? 川久保さんは本作をとおして、このような問いを投げかける。

川久保さんは、前職は金融トレーダーという異色の経歴をもつアーティストだ。これまで扱ってきたテーマには、戦争や経済、原子力の問題など、歴史の大きな変化や議論を巻き起こす出来事が挙げられる。それらのテーマを、自身の経験や個人史的な物語といったミクロな視点から再解釈して、新たな視点を提示してきた。そして写真や映像をはじめ、近年はさまざまなメディアを用いたインスタレーションに取り組んでいる。国内外のギャラリーや美術館、イニシアティブなど、その発表/活動の場も多岐に渡り、いま勢いにのる現代美術家のひとりだ。

黄金町エリアマネジメントセンターが初めて川久保さんを紹介する機会となる本展。その企画意図について、キュレーター・李智希さんからお話を聞いた。

「川久保さんの活発な活動に、黄金町エリアマネジメントセンターでは以前から注目をしていました。高架下スタジオ Site-A ギャラリーでは、黄金町にゆかりのある若手作家を紹介する機会が多かったのですが、より同時代的な問題意識を提起するアーティストを紹介したいと考え、この機会に川久保さんの展示を企画することになりました。」(黄金町エリアマネジメントセンター・李智希さん) 

本展は、川久保さんの過去作となるインスタレーション「200万年の孤独」を更新し、新たな要素を加えて構成される。「200万年の孤独」は、2015年にはトーキョーワンダーサイトで、2016年には川崎市岡本太郎美術館で発表した“歴史の循環”をテーマとした作品だ。スペインに出自をもち、トーキョーワンダーサイトのレジデンスプログラムやポーラ美術振興財団在外研修員として2回にわたるロンドンでのレジデンス経験がある川久保さん。ヨーロッパで繰り返された大戦や、第二次世界大戦の歴史のなかで起こった出来事と、個人的な経験やリアリティを交差させながら、テーマを深めて「200万年の孤独」の制作に取り組んだという。

絵画や写真、ネオンなど、複数のメディアを用いて構成される本展「200万年の孤独、さくらと50万光年あまり」。川久保さんの新たな創作が加わった新作インスタレーションとして、Site-A ギャラリーがどのような空間に変貌したか、見届けに行こう。大岡川の桜も見ごろの季節、“過去・現在・未来”の感覚がすこし揺さぶられるかもしれない。 

 

【イベント情報】

川久保ジョイ展「200万年の孤独、さくらと50万光年あまり」

会期:2017年3月30日(木)〜4月23日(日)
時間:11時〜19時 ※3月30日(木)は15時〜
休館日:月曜日
入場料:無料
会場:高架下スタジオ Site-A ギャラリー(横浜市中区黄金町 1-6 番地先) 

https://www.koganecho.net/contents/event-exhibition/event-exhibition-2046.html

 

【アーティスト・プロフィール】

川久保ジョイ

スペイン生まれ。2003年筑波大学人間学部卒業。写真の存在論を探求した平面作品や、物語性を巧みに用いた多メディア・インスタレーションで特異的な歴史を普遍的な問題へと媒介して行く作品群を製作する。また近年は原子力の問題や、経済、信仰など人間の営みに焦点を合わせ、時間や価値観の軸の中のかけ離れた点を提示することでしばしば、観客を是と非の間へと誘う作品群を製作している。近年の主な展覧会に「Stella Maris was a name I found in a dream」(Daiwa Anglo-Japanese Foundation, London、ロンドン、2016)、「Fall」(第10回資生堂アートエッグ、資生堂ギャラリー、東京、2016)、「第19回岡本太郎現代芸術賞展」(川崎市岡本太郎美術館、川崎、2016)、「VOCA2015」(上野の森美術館、2015、「大原美術館賞」 受賞)、「To tell a (hi)story」(Husk gallery、ロンドン、2015)、「内臓感覚」(オル太x川久保ジョイ、金沢21世紀 美術館、2013)等がある。平成27年度ポーラ美術振興財団在外研修員としてイギリスにて研修。

http://www.yoikawakubo.com