そこにある“遠くの絵画”を気軽に楽しむ YCCで内海聖史展

Posted : 2017.03.21
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YCCヨコハマ創造都市センターで、気軽に美術作品に触れる機会を提供する展覧会シリーズ「YCC Gallery」がスタート。第一弾は、虎ノ門ヒルズやパレスホテル東京など多くの公共空間にも絵画作品を展示し、若手画家として注目を浴びている内海聖史さんが新作を発表する。

15色の“遠くの星”

 「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」や茨城県近代美術館「6つの個展2015」など多数の展覧会を経験してきた内海さんの絵画は、筆や綿棒を使って点をいくつも塗り重ねた鮮やかな色彩が特徴だ。内海さんは「色はテクスチャーごと認識するものです。今回の作品は“押しつぶした絵の具”を重ねる感覚で描いていて、よく見るとビールの王冠を逆さにしたようなタッチが重なっている」と説明する。

 今回その絵の具は、複数の星型の変形キャンバスに載せられている。その形やランダムな配置は、YCC特有の展示空間と展示環境に合わせて、絵画の枠組みにとらわれず、鑑賞者との新たな関係性を模索するものだ。

 「四角い絵画はホワイトキューブという建築の基本形に合わせてできている。たとえば洞窟の壁画だったら、わざわざ四角にせず、岩肌に合わせて描かれている。建築空間と離れた絵というものはなく、常にベストの形を与えないといけないと思っているんです。」

 しかし、今回の星形の絵画は、建築空間と絵画とのあり方に距離を置く試みがなされている。

 「ギャグ漫画『アラレちゃん』では敵のキャラクターがバーンと殴られると、宇宙まで飛んでいって、ピカーンと星になりますよね。そのとき、絵画の表現としては遥か遠くまで飛んで行っているけれど、テレビの画面としての物体はすぐそこにある。通常、展示空間では一番離れても10メーターくらいから絵を見ると思いますが、その物体としての距離はそのままでも、絵が表すものは星になってしまうくらい、遠くにあるといったことを考えたときに、こういう形があり得るんじゃないかと。写実的な形で見えていないものを、星で表現しているんです。」

 

「絵画を楽しく見られる」空間使い

 これまで似た形の作品を発表したことはあったものの、その形に決めるまでに至る思考は、今回とはまったく違うものだったそうだ。絵画作品としての美しさだけでなく、空間の使い方や絵画のあり方を徹底的に考える姿勢が、展示ごとにその意味合いも変え得る。

 「変わった形の作品を発表した後に、また普通の四角い作品を選択したとき、その当たり前の形の絵画すら“敢えて選択したもの”になる。絵画に対して考える事をやめずに、2、3年前の自分が思いもよらない絵画への理解を作品として造っていきたい。」

 歴史的建造物としての側面を持ち、カフェを併設するYCCでの展示である今回は、「横浜を楽しむ」パッケージのうちの一つという位置付けにしたいと、YCC側とも話し合ったという。 近くの観光スポット巡りや、買い物の合間の休憩に、ふらっと立ち寄ってアートを鑑賞する。そんなシチュエーション作りには、内海さんのような姿勢はピッタリだ。

 「アーティストやギャラリーは展覧会を自由に見てほしい、気楽に見てほしい、という言い方をよくしますが、あまりかしこまった展示方法では、鑑賞者は楽しみたくても結局は姿勢を正さないといけない。アーティスト側が姿勢を崩すことも必要ではないか。お客さんの感想が、よく分かんないけど可愛いね、きれいだね、面白いねというのが残るだけでも構わない。食事や会話をしながらでも良いので、絵画というものをもっとラフに楽しんでもらいたい。そのためには、なぜこれを描くのかということを自分の中でしっかり持つ姿勢が大切となり、それが新たな表現を生み出すと思っています。」

 

【イベント概要】

YCC Gallery 内海聖史 「遠くの絵画」

期間:2017年2月20日(月)~4月2日(日)
時間:11:00~19:30(最終日は17:00まで)
※施設利用状況に応じて休廊となる場合あり。日程は特設ウェブサイトをご確認ください。
http://yokohamacc.org/ycg/satoshiuchiumi/
会場:YCC ヨコハマ創造都市センター 1階ギャラリー
住所:神奈川県横浜市中区本町6-50-1
アクセス
馬車道駅(みなとみらい線)1b出口(野毛・桜木町口・アイランドタワー連絡口)直結
桜木町駅(JR京浜東北・根岸線、横浜市営地下鉄ブルーライン)徒歩5分
料金:無料

 

内海聖史(うちうみ さとし)

1977年茨城県生まれ。2002年多摩美術大学大学院美術研究科修了。現代の抽象絵画界を牽引する若手世代の旗手。絵画の美しさは絵具の美しさだと考え、筆や綿棒を使ってドットを何層にも塗り重ねることで、色鮮やかな絵画を制作する。空間に応じて絵画と鑑賞者との関係性を模索し、多様なスケールで絵画の新たな可能性を探る。「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」、「6つの個展2015」茨城県近代美術館など多数の展覧会経験に加え、東京都現代美術館収蔵やパレスホテル東京など、パブリックコレクション、公共空間での展示も多数。