速報!黄金町バザール2015好評開催中~11/3まで

Posted : 2015.10.09
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今年で8回目の開催を数える黄金町バザール。11月3日までの約一ヵ月間にわたり、アートプロジェクトとまちプロジェクトを展開している。アートプロジェクトには、アジアを中心に国内外から14組のアーティストが参加。オープンから約1週間、熱気あふれる展示会場の様子をダイジェストでレポートします!

黄金町バザール2015−まちとともにあるアート

黄金町でパンドラの匣(はこ)が開いた−中国成都市からのアーティスト、ザン・ジン

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今年のバザールはアーティストが街に居る!

ここ横浜では毎年恒例のアートフェスティバルとなった「黄金町バザール」。10月1日(木)の開幕日に実施されたプレスツアーでは、ディレクターの山野真悟さんから今年の見どころが語られた。

「バザールプログラムでは、毎年アーティストたちに約3ヵ月間、黄金町に滞在して作品を制作してもらいます。例年は展覧会がはじまるとアーティストたちは帰ってしまうのですが、今年は会期中も彼らが街に居るスケジュールを組みました。会期は1ヵ月なので、アーティストたちは実質2ヵ月間で作品をつくらなければならず、大変だったと思います。お客さんにはアーティストが街の中をうろうろしているこの雰囲気を楽しんでもらえたら。」

アートプロジェクト――バザールプログラムの作品紹介

昨年度は、「ヨコハマトリエンナーレ2014」に合わせて3ヵ月間開催し、また横浜は文化庁が掲げる「東アジア文化都市」も重なって、大きな規模で実施した黄金町バザール。それに比べると、今年は比較的コンパクトにまわってもらえるのではないかと話す山野さん。しかしツアーでめぐってみると、一つひとつの作品はインパクトの強いものが多く、今年の作品群の魅力にはまってしまう。

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07番/八番館 キム・ウジン《素晴らしく。新しい。体操の世界へようこそ。》

例えば韓国から来日したキム・ウジンさんの作品は、一見、会場を全方位的にプロジェクションしたビデオインスタレーションだが、そこではじまるのは――。参加してみないと分からない(かもしれない)作品なので、ぜひ巻き込まれてみてください。日本のラジオ体操と韓国の国民体操をめぐって、社会的なシステムについて思考を促すことを意図した作品です。

インドネシアのナターシャ・ガブリエラ・トンティさんは、日本とインドネシアそれぞれが抱える社会的または個人的な“恐れ”についてのリサーチをもとに、仮想のショップ「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」を開店するプロジェクトを展開。中身が見えないようにパッケージした“厳選された商品”を“ホラーストーリー”とともに販売するショップだ。パッケージの中には文房具などのちょっとした小物が入っていて、実際に購入することができる。かわいくてキュートな世界観の中に、どこか“恐ろしさ”をはらんでいるインスタレーションにも注目してみよう。

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05番/高架下スタジオSite-C ナターシャ・ガブリエラ・トンティ《リトル・ショップ・オブ・ホラーズ》

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09番/マリオン車庫 小鷹拓郎《Beyond Yokohama Mary》

09番/マリオン車庫 小鷹拓郎《Beyond Yokohama Mary》

横浜ならではのモチーフに着想を得たものとして印象に残ったのは、小鷹拓郎さんの作品だ。小鷹さんは、全身白いホームレスの老嬢を題材にした2006年公開の大ヒットドキュメンタリー映画「ヨコハマメリー」を基に、新たにドキュメンタリー映像を制作。1000年後にどうやってヨコハマメリーを伝えるか?というキーワードを通し、リサーチ資料、映像、オブジェの展示を行っている。オブジェ制作の最中には、本物のメリーさんと見間違えて人が近寄ってくるというハプニングがあったのだそう。そのようなプロセスもまた面白い。

 
 
横浜市・成都市のアーティスト・イン・レジデンス交流事業
13番/初音スタジオ ザン・ジン《去年はニューヨークにいた。》

13番/初音スタジオ ザン・ジン《去年はニューヨークにいた。》

横浜市と成都市の間では、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団、A4 Contemporary Arts Center(中国・成都市)、認定NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターの3者によるアーティスト・イン・レジデンス交流事業を行っている。本プロジェクトでは横浜のアーティストが成都で、また成都のアーティストが横浜でそれぞれ滞在制作を行った。制作された作品は、今回「黄金町バザール2015」で発表されている。

成都市から横浜市・黄金町に来日したザン・ジンさんは、自国の文化や交流について、異邦人としての違和感を作品にしている。

彼が10年前、アメリカでの滞在時に書いた孤独を意味した小説を、Googleの自動翻訳によってつくられるカタコトのテキストを使用した作品のほか、黄金町の街とそこに関わる人々との関係性を表現するインタラクティブな映像作品などを発表した。

12番/初音スタジオ 吉本直紀《ユメノ変異》

12番/初音スタジオ 吉本直紀《ユメノ変異》

また中国の成都市に滞在した横浜拠点の映像作家・吉本直紀さんは、40分の映画作品を制作した。架空のアーティストの創作現場と、街の記憶、そしてラブストーリーが交錯する見ごたえたっぷりの映画。1日3回(13時/15時/17時)の上映なので、事前にスケジュールに組み込んでご鑑賞を!

 
 
 
 
まちプロジェクト――空間デザインコンペの作品紹介

当サイトの事前紹介記事で、今回の見どころとしてご紹介した「まちプロジェクト」の空間デザインコンペ。お題として出された機能は「レジデンススペース(アーティストが滞在制作する場)」「ライブラリー(図書の場)」「インフォメーション(情報発信の場)」の3つだったが、選出された5組の作品は、いずれも会期終了後に街の中で活躍しそうな場に仕上がっていた!

KSA/kakita jun+sumitani motokoが制作したライブラリーは、“秩序と混沌のあいだ”を構築することをコンセプトに、キューブ状のボックスを積み上げて空間をデザインした。秩序があるようでない不思議な感覚に引き込まれ、長居して本を読みたくなってくる。

一級建築士事務所 中村建築が手掛けたのは、一風変わったレジデンススペース。大きなバスタブのような空間は水で洗い流すことができるように塗装されているので、ペインティングや塗料などを使う時に、床や壁が汚れるのを気にしなくてもいい。汚れても水で洗い流せるシャワーヘッドが完備されています!

15番/日ノ出スタジオ KSA/kakita jun+sumitani motoko《日ノ出町アートブックライブラリー》

15番/日ノ出スタジオ KSA/kakita jun+sumitani motoko 《日ノ出町アートブックライブラリー》

19番/大平荘スタジオ 一級建築士事務所 中村建築《ROOM BATHTUB》

19番/大平荘スタジオ 一級建築士事務所 中村建築《ROOM BATHTUB》

 

18番/黄金ミニレジデンス(裏) アイボリィアーキテクチュア《まちに応答する長屋》

18番/黄金ミニレジデンス(裏) アイボリィアーキテクチュア《まちに応答する長屋》

そしてアイボリィアーキテクチュアは、3階建てのちょんの間(元違法飲食店)の建物の“細長さ”に着目したユニークなスタジオを提案。このスタジオではとっても長~い彫刻をつくれてしまいます。でも搬出ができないから「ここで作ってここで見せる」。アトリエの形から発想する、新たなコラボレーションによる作品が生まれそうですね。

空間デザインコンペのほかにも今回の「まちプロジェクト」では、大学の研究室と連携した黄金町のまちづくりを検証するリサーチプログラムや、商店主とアーティストが共同で開催する「まちゼミ」の開催も予定されている。この「まちゼミ」とは、全国各地の商店街で開催されているもので、来場者(参加者)とのコミュニケーションを通じて、商店主やアーティストが持つ技術や知識の一部を伝え、その店や個人のファンづくりを目指すもの。黄金町ならではのまちの魅力に触れることができる企画となっている。

今年のバザールはテーマを事前に設定しなかったと語る山野さん。多様なアーティストが集まることで、一つひとつの表現から何が見えてくるか――。「現代アートって難しそう」というイメージがある人も、まずは作品との新たな出会いを楽しんでみてくださいね。

 


●基本情報●

「黄金町バザール2015―まちとともにあるアート」
http://koganecho.net/koganecho-bazaar-2015

会期:2015年10月1日(木)−11月3日(火・祝)
会場:京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外、他
開場時間:11:00〜18:30
休場日:10月5日(月)、10月13日(火)、10月19日(月)、10月26日(月)
入場料:会期中有効のパスポート 前売:300円/当日:500円(中学生以下無料)
主催:認定特定非営利活動法人黄金町エリアマネジメントセンター/初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会
共催:横浜市
後援:神奈川県/公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
協賛:京浜急行電鉄株式会社/アサヒビール株式会社/アサヒ飲料株式会社

黄金町バザール2015−まちとともにあるアート

黄金町でパンドラの匣(はこ)が開いた−中国成都市からのアーティスト、ザン・ジン