大野一雄フェスティバル2015「生活とダンス」

Posted : 2015.10.09
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横浜では恒例の「大野一雄フェスティバル」が2年ぶり11回目の開催を迎えた。BankART Studio NYKで10月25日(日)までのおよそ3週間にわたり、ダンス公演とレジデンスプログラム、写真や映像によるアーカイヴ展示を展開する。無料の公開制作やダンス公演、写真展示など、フェスティバルならではのプログラムが盛りだくさんの3週間になっている。

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生活と地続きの場から生まれる芸術、大野一雄の実践に学ぶ

大野一雄フェスティバルは、2004年~13年までの10年間、大野一雄舞踏研究所とBankART 1929が毎年主催してきたフェスティバルだ。世界的な舞踏家・大野一雄さんの活動を多角的にひらき、ダンス公演だけでなく、屋外回遊型のダンス公演やシンポジウムなど、さまざまなプログラムに取り組んできた。2年ぶりの開催となる今回は、新たなレジデンスプログラムを立ち上げての実施となる。レジデンスプログラムは、研究所で大野さんが実践していた創作スタイルに着想を得た取り組みとして、今回注目のプログラムだ。

2010年に逝去された大野一雄さんは、「舞踏」を「BUTOH」として世界に広めた舞踏家のひとり。その創作活動は、どのようなものだったのだろう? 大野一雄舞踏研究所の稽古場は、大野さんと家族が住む自邸の隣に建てられた(横浜市・保土ヶ谷区)。彼の創作活動にとって、生活の場と踊りの場が隣り合わせにあることは、大きな意味があった。「生活が踊りの先生」としばしば語った大野さんは、研究所に訪れる国内外の研究生たちを、時には家族の食卓に迎え入れたという。芸術は生活と地続きの場から生まれる――。そんな研究所の活動を振り返り、今回のフェスティバルでは国内外アーティストのレジデンスプログラムがスタートした。

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BankART Studio NYKには、レジデンスプログラムに参加する5組のアーティストたちがそれぞれ制作を行う場が設けられた。彼らがこの場に滞在して制作する過程は、公開制作として無料で見学することができる。アーティストの創作プロセスに立ち会えるまたとない機会、ぜひ会場でその現場を体験したい。そして彼らの滞在制作の成果発表は、10月12日(月・祝)の東野祥子とカジワラトシオ率いる「ANTIBODIES Collective」の上演を皮切りに、10月23日(金)~25(日)には向雲太郎、立石裕美、そしてジンバブエのアレサンドラ・スーティン、マダガスカルのジュリー・ヤリソア4名のソロによるマラソン上演として楽しめる。公開制作ではなく、レジデンスプログラムの成果発表を見たいという方には、ワークインプログレス上演がおススメだ。

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ANTIBODIES Collectiveの制作場所(3F)

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レジデンスプログラム参加アーティストの紹介映像

 

本フェスティバルのオープニングは、ユヴァル・ピック(リヨン都市共同体内のリリュー・ラ・パプ国立振付センター芸術監督)の新作を含むダンス公演が飾った(去る10月3日(土)・4日(日))。また、大野一雄さんの息子で舞踏家の大野慶人さんのソロ作品の上演(10月16日(金)~18日(日))や、写真や映像で大野一雄舞踏研究所の活動を紹介するアーカイヴ展示(10月3日(土)~25日(日))もプログラムされている。アーカイヴ展示の一環として、本年急逝された室伏鴻さんのソロ作品「quick silver」の完全映像も、BankART Studio NYK 3Fの一画で上映されている。本作は2005年の大野一雄フェスティバルで、当時未改修だった同会場で上演された作品だ。

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アーカイヴの写真展示(BankART Studio NYK 1F)

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10月3日(土)に開かれたオープニングレセプション

 

無料の公開制作や写真展示から見ごたえのあるダンス公演まで、フェスティバルならではの入口がたくさん用意されているこの機会。舞踏ってよくわからない……という方もそうではない方も、現在進行形で積み重なっていく舞踏の歴史をBankART Studio NYKで感じてみよう。


【フェスティバル情報】

大野一雄フェスティバル2015「生活とダンス」
http://bankart1929.com/archives/369
会期:2015年10月3日(土)~25日(日)
会場:BankART Studio NYK
最寄り駅:みなとみらい線「馬車道」駅6番出口[赤レンガ倉庫口]徒歩4分
ご予約・お問い合わせ:
E-mail:ohnofes@bankart1929.com 電話:045-663-2812 FAX:045-663-2813

ダンス公演:
大野慶人「花と鳥 舞踏という生き方」
10月16日(金)19時30分~
10月17日(土)18時~
10月18日(日)14時~
入場料 前売り:2,500円、当日3,000円(学生・シニア各500円引き)

レジデンス制作:
公開制作
向雲太郎  10月4日~25日(10月8・9日を除く)
立石裕美  10月5日~25日(10月8~12日、17~19日を除く)
ANTIBODIES Collective  10月6日~12日
アレサンドラ・スーティン 10月3日~25日(毎週火曜を除く)
ジュリー・ヤリソア 10月3日~25日(毎週水曜を除く)

ANTIBODIES Collective
「Dugong」ワークインプログレス
10月12日(月・祝)15時~/19時30分~
入場料 前売り:2,000円、当日2,500円(学生・シニア各500円引き)

滞在アーティストワークインプログレス作品マラソン上演
向雲太郎「Butoh? in Progress」
立石裕美「1960イチキューロクマル」
アレサンドラ・スーティン(ジンバブエ)
ジュリー・ヤリソア(マダガスカル)
10月23日(金)19時30分~
10月24日(土)18時~
10月25日(日)14時~
入場料 前売り:2,000円、当日2,500円(学生・シニア各500円引き)

アーカイヴ展示
日時:2015年10月3日(土)~25日(日)11時~19時
入場無料