黄金町でパンドラの匣(はこ)が開いた−中国成都市からのアーティスト、ザン・ジン
空間デザインコンペ ヴェレナ・イセル/Verena Issel 《NUGAE》2013年
空間デザインコンペなど、開かれた、まちづくりプログラムを展開
黄金町バザールが開催されている黄金町エリアは、10年前には多くの違法飲食店が営業していて、治安の悪化が深刻だった地域だ。2008年以降、アートによる街の再生を掲げ、認定NPO法人黄金町エリアマネジメントセンターがさまざまな活動を行ってきた。その結果、黄金町エリアは多くのアーティストが滞在制作を行い、地元の方と交流し、週末にはワークショップやイベントが開かれ、たくさんの人でにぎわいを見せるようになっている。黄金町での取り組みは、今や全国的にも「アートによるまちづくり」の事例として知られるようになった。
年に一度の黄金町バザールは、アートフェスティバルとしても大変楽しいイベントであるが、今年は、その「まち」のプロジェクトに注目してみてもらいたい。
「まちプロジェクト」は、誰にでも開かれたプログラム。今年は、黄金町エリアの空き店舗などをリノベーションプランを競った「空間デザインコンペ」が実施された。「レジデンススペース(アーティストが滞在制作する場)」「ライブラリー(図書の場)」「インフォメーション(情報発信の場)」の3つのお題を元にデザインを広く公募した。全61件の応募の中から、5組の空間デザインが選ばれている。これらのスペースは、黄金町バザールの会期に合わせて作品として展示されるだけでなく、会期終了後も街の中で活用されていく。これまでは、著名な建築家の作品が多かったが、今回は、公募で若いクリエーターに開放された。建物を訪れて、新しいアイディアを触れてみよう。
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コンペでは、地元の若手からも「アイボリィアーキテクチュア」が選ばれている。彼らは元ストリップ劇場をセルフリノベーションによってシェアスタジオに改修した「旧劇場」に入居している建築事務所。横浜国立大学大学院/建築都市スクールY-GSA出身の永田賢一郎さんと、横浜拠点の建築事務所「オンデザインパートナーズ」から独立した原崎寛明さんによるチームだ。創造界隈で育った彼らの横浜初作の披露も楽しみである。
今回の「まちプロジェクト」は、多様な個人や団体が黄金町のまちづくりに参加するきっかけを生み出している。公募で選ばれた大学の研究室と連携して、これまでの黄金町のまちづくりを検証するリサーチプログラムや、川沿いに面した元問屋街であった同地域ならではの魅力的な商品や技術を扱うお店を来場者にみせるイベント「まちぜみ」の開催も予定されている。これはアーティストが、街の人と一緒に企画する取り組みだ。
もちろん、例年と同様に国内外のアーティストが作品を発表する「アートプロジェクト」を思いっきり楽しみたい。
公募や推薦によって選ばれた国内外計11組のアーティストが参加するバザールプログラムでは、アーティストが約2か月間黄金町の街に住み、そこで得た交流や情報をもとに作品制作に取り組んでいる。海外からはタイやベトナム、中国(成都市)など主にアジアからアーティストを招いている。
今年の黄金町バザールに際し、ディレクターの山野真悟さんには、バザールが「街の将来像を考える機会」になって欲しいという思いがあった。会期が終了すれば作品が撤去されてしまう一過性のイベントではなく、バザールを通してこれからの黄金町を考えようというまちづくりとしてのプロジェクトの視点。今年のテーマ「まちとともにあるアート」を感じながら、黄金町の街を歩いてみてはいかがだろう?
●基本情報●
「黄金町バザール2015―まちとともにあるアート」
http://koganecho.net/koganecho-bazaar-2015
会期:2015年10月1日(木)−11月3日(火・祝)
会場:京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外、他
開場時間:11:00〜18:30
休場日:10月5日(月)、10月13日(火)、10月19日(月)、10月26日(月)
入場料:会期中有効のパスポート 前売:300円/当日:500円(中学生以下無料)
主催:認定特定非営利活動法人黄金町エリアマネジメントセンター/初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会
共催:横浜市
後援:神奈川県/公益財団法人横浜市芸術文化振興財団
協賛:京浜急行電鉄株式会社/アサヒビール株式会社/アサヒ飲料株式会社