実体験! インターンが肌で感じた横浜のアートシーン

Posted : 2014.09.12
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(公財) 横浜市芸術文化振興財団にインターンとして来た高校生2名が、ヨコハマトリエンナーレ2014、Find ASIA、BUKATSUDOなどを取材。彼女たちの目に、ヨコハマのアートシーンはどのように映ったのだろうか。

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ヨコハマトリエンナーレ2014
いま横浜は、アート関係の祭典が目白押し! 中でも世界的に注目されているヨコハマトリエンナーレ2014は、3年に1度の開催ということもあり、連日、多くの来場者で賑わっている。“ヨコトリ”の主会場は、横浜美術館と新港ピアの2か所。今回はオープンで自由な展示の可能性が広がる倉庫型施設、新港ピア(新港ふ頭展示施設)で取材を行った。

ファウンド・オブジェクトの可能性に迫る(インターンAさん)

大竹伸朗《網膜屋/記憶濾過小屋》2014年 Installation view of Yokohama Triennale 2014

大竹伸朗《網膜屋/記憶濾過小屋》2014年
Installation view of Yokohama Triennale 2014

 さまざまな作品がある中、大竹伸朗による《網膜屋/記憶濾過小屋》という立体作品が心に残った。この作品は使われなくなったサーフボード、古い電灯、トタン板など、ゴミ捨て場に落ちていても不思議はない素材で作られている。そんな素材で作品を作った理由が、見ているうちに何となく分かった。きっとこの作品は、戦時中の貧しい暮らしを表現しているに違いない。このエリアのテーマは「忘却の海に漂う」。大竹さんは私たちの世代が知らない貧しい暮らしのことを伝えたかったのではないだろうか? 

※ファウンド・オブジェクト:物を物自体として作品の中に取り込むこと、また使用される漂流木や古タイヤなどを指す。

ギムホンソック《クマのような構造物-629》2013-2014年 Installation view of Yokohama Triennale 2014 協力:MARK IS みなとみらい

ギムホンソック《クマのような構造物-629》2013-2014年
Installation view of Yokohama Triennale 2014
協力:MARK IS みなとみらい

そういえば来る途中に見た、MARK ISみなとみらいの地下4階にあるギムホンソックの《クマのような構造物-629》も、ゴミ袋を使った作品だ(本体はブロンズ)。ファウンド・オブジェクトとひと口に言っても、さまざまな作品があって面白かった。

横浜美術館から少々距離があり足が遠のきがちな新港ピアだが、アートが好きな人なら行って後悔することはないと思う。少なくとも私は、さまざまなアーティストの作品に触れることが出来て、とても楽しかった。

 

 

 

正解のないメッセージ(インターンBさん)

イライアス・ハンセン《心配するな、再来年にはもっとひどいことになるさ》2014年 Installation view of Yokohama Triennale 2014

イライアス・ハンセン《心配するな、再来年にはもっとひどいことになるさ》2014年
Installation view of Yokohama Triennale 2014

イライアス・ハンセンの作品はガラス作品だったこと、さらに題名が独創的で心に残りました。カラフルで一見おもちゃの世界のように見えますが、それぞれ題名は《ならばいつか言うことがなくなる》や《見かけとは違う》などと強く厳しいメッセージになっています。ガラスの表面の複雑な泡模様や少し傾いた棒が、人が抱える苦しみや悩みを表現しているのではないかと思いました。

私はトリエンナーレの作品には答えがないと思いました。特にそのことを強く感じたのは、キリ・ダレナの《Мのためのレクイエム》です。これはフィリピンでのジャーナリストの虐殺をテーマにした映像作品です。映像ということで真正面から撮影されたものを想像していましたが、この作品は人々の足元から上を見上げるようにして撮影していました。この少し変わった撮影方法によって、人の感情が心の中に迫ってくるような臨場感がありました。

これらの効果からこの作品に目が釘づけになり、平和に過ごしているのと同じ瞬間にこんなに恐ろしいことが起こっているのだと思い、心がざわざわして恐ろしくなりました。

しかし、この作品を見てメッセージを押しつけられているという感じがせず、なんだか不思議でした。ここには虐殺に関しての人の意見や訴えはあまり含まれておらず、あくまでも現地の様子を「伝えて」いるのだと思いました。この作品から何を感じ、考えるのかは見た人に任せていると思いました。


Find ASIA
「東アジア文化都市2014横浜」の事業のひとつである、Find ASIA。3日間のインターン期間中、彼女たちは意欲的に取材を行った。

夢を諦めないということ(インターンAさん)

ヂョン・ヨンドゥのBewitched。プロジェクターに映し出された、それぞれがかつて夢見た自分の将来と今の自分。その落差はとても大きい。この作品を見て、現実は厳しいと考える人もいるかもしれない。だが、私はそうではなくまだ未来があるということだと思う。今を諦めた人は過去の夢など見ない。現実を受け入れてただ漠然と日々を過ごすことだろう。ここに映る15人あまりの人たちは皆まだ若い。よく考え抜いて行動を起こせば、夢に近づくチャンスはきっとある。「奥さまは魔女」の英題がこの作品につけられた理由が、少し分かった気がした。

Bewitced1r Bewitched2r

 

DSC00300r「コーヒーのある風景」を創り出すL PACKのアート作品「Yokoso Cocowa Cafedesu」。利用する人が来ることで変わるこの作品は、とても魅力的だと思う。ある意味、究極かつ個性的なアートではないだろうか。

 

 

 

宇宙を浮遊しているような感覚(インターンBさん)

IMG_1295r私はNOSIGNERのSPACE SPACEのセッティング方法が面白いなと感じました。13000個ものLEDライト使った世界地図の周りにはビーズクッションが置いてあり、座ってリラックスしながら鑑賞できます。
宇宙を想像させるような音楽も流れており、ここにいると横浜ではない違う世界に来ているような不思議な気持ちになります。

 


BUKATSUDO - 大人のためのシェアスペース -

横浜・みなとみらいに誕生した創造的な活動拠点、BUKATSUDOも見学。高校生の視点で、シェアスペースの可能性を探った。

何でも出来る、大人の秘密基地「BUKATSUDO」(インターンAさん)

皆で何かをしたくても、場所がない――。そう思う人は案外多いのではないだろうか? BUKATSUDOはそんな人たちに、現代の暮らしに合ったシェアスペースを提供してくれる。現代に合っていると感じる理由は主に2つだ。
ひとつはホームパーティーやDIYをしても気兼ねなく騒げるという点。最近はマンション住まいで近所迷惑になってしまうから大きな音を出せないという人も多いと思う。その点、ここでは遠慮することなく盛り上がれるし、DIYをするにしても工具は揃っているし音の心配もない。心おきなく楽しめるという訳だ。
2つ目は人の輪が生まれやすいという点。近頃SNSの普及により、直接会って何かをする機会が減っているとよく耳にする。反対にSNSで知り合った人と実際に会って活動したいという声もある。ここはそんな時にもぴったりだ。皆で料理も出来るし、DJやヨガだってお手の物。駅からのアクセスもよく、ヨガマットの貸し出しがあったりといったサービスも嬉しい。
まだ高校生である私からすると、自分が社会に出た時の暮らしなど全く想像できない。だが、もし近くにこのような場所があったなら是非利用したい、そう思える素敵な場所だった。

着席で最大24名が入れる広々としたキッチン。

着席で最大24名が入れる広々としたキッチン。

今後は工具も揃う予定のアトリエ

今後は工具も揃う予定のアトリエ


「ひとり」を味わうワークラウンジ(インターンBさん)

ワークラウンジはカフェ風のテーブル席のほか、自習室や図書館のような席もあり

ワークラウンジはカフェ風のテーブル席のほか、自習室や図書館のような席もあり

静かに一人を楽しむこと。私はBUKATSUDOの沢山の楽しみ方の中で、これに一番惹かれました。私たちは日常生活で家でさえもなかなか一人で落ち着いて過ごしたり好きなことをしたりはできません。しかしここに来れば思う存分一人を楽しめます。

誰にも邪魔されずに本を読むのも、ひたすら仕事をすることもでき、沢山の選択肢があるので非日常を味わえて、気分転換にもなるなと感じました。
私は家の近くにBUKATSUDOがあれば、ぜひ利用したいです。ここに来れば勉強がすごくはかどるだろうなと思いました。家でやっていると漫画やゲーム等の誘惑が沢山あり、部屋がごちゃごちゃに散らかっていてなかなか集中できませんがここは適度に暗く、周りの人も同じように自分のことに打ち込んでいるのでモチベーションが上がり、やりやすそうです。
なかなか一人の時間が持てない私たちにとってすごく嬉しい場所だと思いました。


3日間にわたり、横浜のアートシーン、さらに創造界隈拠点を取材したインターンのお二人。まだ高校一年生だというのに、着眼点が鋭く、なかなかの記者ぶりを発揮した。まだ進路は決めていないとのことだが、ぜひ記者、編集者として横浜に戻ってきてくださいね!