クリエイターと経済人が協働する、横浜の新たな魅力創出のきっかけづくり――「ハマの大喜利」レポート

Posted : 2020.10.16
  • mail
もっと横浜を魅力的に、もっとアートやデザインを身近に、を合言葉に横浜の未来のまちづくりに向け、人の出会いを生み出す企画「ハマの大喜利」。アーツコミッション・ヨコハマ(ACY)が取り組むプラットフォーム事業の一環として、今夏スタートしたプログラムです。第1回の開催には、世話人として株式会社ありあけが参画。「ありあけが、横浜に新名所をつくるとしたら?」というお題のもと5組のクリエイターがアイデアをプレゼンテーションし、 “クリエイティブ大喜利”が繰り広げられました! 新型コロナウイルス感染拡大の状況を考慮のうえ、オンラインで開催した本プログラム。中継会場となったBUKATSUDOの様子をお届けします。

アーツコミッション・ヨコハマが取り組む「文化芸術創造都市・横浜プラットフォーム」とは?

創造の担い手をサポートするアーツコミッション・ヨコハマ(ACY)は、これまでアーティストやクリエイターの集積を目指し、相談窓口の開設や助成プログラムなどさまざまな事業に取り組んでいます。「文化芸術創造都市・横浜プラットフォーム」は、横浜における創発を喚起するため、2016年より新たな事業として横浜市文化観光局と共にクリエイターや企業、行政、市民など創造の担い手を横断的に繋ぐネットワーキング・プログラムを開催。5年目を迎えた本事業で、ACYが横浜の経済人、クリエイターと協働のもと立ち上げたのがこの「ハマの大喜利」です。

プログラムには幹事として、株式会社キクシマ代表取締役の菊嶋秀生さん、NPO法人ハマのトウダイ代表の岡部祥司さんが参画。去る2020年8月21日、第1回を開催しました。「どんな大喜利が見られるのかな?」と興味を誘うプログラム。イベント当日はクリエイターたちと株式会社ありあけとの間で、どのような対話が繰り広げられたのでしょうか? 

「ハマの大喜利」が目指すものと、株式会社ありあけの多彩な活動

この日集まったのは、世話人として登壇した株式会社ありあけの代表取締役社長・堀越隆宏さんと上原淳一郎さん、そして横浜を拠点に活動する5組のクリエイター(LPACK.の小田桐奨さん、パンタグラフの井上仁行さん、BUKATSUDOおみやげ部の鈴木高祥さん・川島史さん、スタジオニブロールの矢内原充志さん、アーツコミッション・ヨコハマの杉崎栄介さん)と、幹事の菊嶋さん・岡部さんです。

新型コロナウイルス感染拡大防止を鑑み、開催は安全に配慮したオンライン形式。そして配信会場となったBUKATSUDOでも、発言者同士の間にアクリル板を設置するなど、感染予防には万全の体制で臨みました。

会の進行を務めた幹事の岡部祥司さん(ハマのトウダイ代表)。

 

幹事・岡部さんによる登壇者紹介のあと、同じく幹事の菊嶋さんより開会の挨拶がありました。「横浜にはアートでまちを盛り上げるさまざまなイベントがあるが、一部の人たちのなかで完結してしまい、なかなか広がっていく実感がない」と話す菊嶋さん。「一方で企業人も行政も、縦割りの産業構造のなかで役割を担っている状況。アーティスト・クリエイターと企業を横ぐしでつないでいかないと、この閉塞的な事業環境を切りひらいていくことは難しい」。このイベントをとおしてその接点を広げ、具体的なコラボレーションが生まれることを期待したいと、「ハマの大喜利」のコンセプトを語りました。

開会の挨拶をする菊嶋秀生さん(株式会社キクシマ代表取締役)。

 

続いて、この日のお題「ありあけが、横浜に新名所をつくるとしたら?」を提出した、世話人の株式会社ありあけの代表取締役社長・堀越隆宏さんによる事業紹介です。

和菓子の製造販売からスタートした旧有明製菓は、戦後に洋菓子を展開し、横浜銘菓「ハーバー」を開発。その後、投資事業をきっかけとして倒産するも、元従業員からなるハーバー復活実行委員会によりみごとハーバーを復活。来年は復活20年の節目を迎えます。横浜DeNAベイスターズ、横浜マラソンとのコラボレーションをはじめ、イラストレーター柳原良平さんの描き下ろしによるパッケージのリニューアルや、まちづくりとの関わり、被災地やコロナ禍の日本赤十字への寄付など社会貢献活動についても語られました。

社の事業展開について紹介する堀越隆宏さん(株式会社ありあけ代表取締役社長)。

 

地元企業とのコラボレーションからまちづくり、CSRまで、明確な軸をもった株式会社ありあけの活動が明かされ、お題へのプレゼンテーションを行うクリエイターの「提案のハードルが上がったのでは?」と指摘する菊嶋さん。そのコメントを皮切りに、いよいよクリエイターによるプレゼンテーションのスタートです!

「ありあけが、横浜に新名所をつくるとしたら?」――クリエイターの応答

登壇したのは、いずれも横浜を拠点に活動するクリエイター5組です。コマ撮りアニメーションによるグラフィック制作などを手がける井上さん、ブランディングやプロモーションなどを手がける矢内原さん、アートプロジェクトとしてコーヒーのある風景をつくる小田桐さん、シェアスペースBUKATSUDOのなかで横浜土産について考える「おみやげ部」、そしてアーティストやクリエイターの活動をサポートする杉崎さん。

それぞれの得意分野から発想されたユニークなアイデアに、堀越さんも「今日はすばらしいご提案をいただいて、大変勉強になりました」と刺激を受けたようでした。これから新しい生活様式がはじまっていくなかで、日本の経済も何らかのかたちで浮上していくだろうと堀越さんは話します。この日のアイデアや切り口に「そのヒントが詰まっている」と感じたようです。

ハーバーの形を模したモニュメントや待ち合わせスポット、SNSを活用した参加型プログラムなど、数えきれないほどのアイデアを提案した井上仁行さん(パンタグラフ)。ハーバーの歴史にひもづけた「復活神社」が実現するかも?

「横濱バーバー」という移動型の理容室を提案した、鈴木高祥さんと川島史さん(BUKATSUDOおみやげ部)。“移動型”という形式を「お菓子販売に転用できそう」と堀越さんからフィードバックが。

動物やハーバーの形をしたペダルシップを集めた小港「Zoo Harbor Yokohama」や、ありあけ発信の「開港道」を学ぶ道場などを提案した矢内原充志さん(スタジオニブロール)。ブランディングの視点が活かされた提案に。


世界中の銘菓を集めた「銘菓のミュージアム」のオープンを提案した小田桐奨さん(LPACK.)。「新横浜ラーメン博物館」に続き、銘菓が集まったミュージアムができたら面白いと、議論が盛り上がりました。

「地創地発」というコンセプトから375万人の横浜市民がハーバー愛を持つとその可能性は無限大に広がる。そのためには一つのハーバーではなく、一人一人のハーバーが必要と提案した杉崎栄介さん(アーツコミッション・ヨコハマ)。

クリエイティブなアイデアを、ビジネスとして実現に導くきっかけに

登壇した5組に限らず、横浜には魅力あるアーティスト・クリエイターが多く活動していますが、ビジネスとして事業を展開する事業者と、クリエイターとの直接的な接点は限られているのが現状です。「ありあけさんのように、事業を実現する側の方々にまずはクリエイターのアイデアを聞いていただき、そういったアイデアだったらこういうことができるのではないかという、対話の時間が必要です。こういう場をとおして、すばらしいアイデアが具現化していくきっかけになればいいなと思っています」と、岡部さんがこの日の議論をまとめました。

幹事としての今後の展望について、菊嶋さんは、リアルの交流の機会もいずれは持っていきたいと話します。「クリエイターが地域企業、団体にとって身近な存在になったとき、ハブとなる交流拠点を設けたり、年に一度ぐらいのペースでビジネスグランプリを開催したりしても面白いですね」。

岡部さんも、今回のクリエイターによる提案内容のクオリティの高さに驚いたと言います。「アイデアマッチングには将来性を感じています。オンラインとオフラインの融合をどうつくれるかは、続けていけるかどうかのポイントになりそうです」。

会場後方には、配信チームの機材が並びます。

 

そしてクリエイターの側からは、「縦割りの構造を脱して、フラットに議論する横浜に」という「ハマの大喜利」のビジョンに対する共感とともに、「小さくてもいいからアイデアを形にしていくことが、このプログラムにとって大事ではないか」という感想が寄せられました。

最後にありあけさんに、今後クリエイターとともにチャレンジしてみたいことについて聞きました。「このたびは、ありあけを取り上げていただき、誠にありがとうございました。弊社の経営理念『地域に愛される企業を目指す』の観点からもクリエイターの皆様にご提案いただいた内容は非常に興味深く、楽しく拝見させていただきました。ご提案いただいた企画を通じて、横浜の皆様に喜んでいただけるモノやコトが実現できればと思います」。

ビジネスという視点から、横浜のクリエイターと経済人の接点を生み出す「ハマの大喜利」。これから回を重ねて生まれる出会いをとおして、クリエイティブな刺激によりビジネスを喚起していく場になりそうです。アイデアが実現されるきっかけとなる、横浜の新たな魅力を育む、ハマの大喜利に注目です。

取材・文:及位友美voids
写真:森本聡カラーコーディネーション


【イベント概要】

第1回「ハマの大喜利」
お題「ありあけが、横浜に新名所をつくるとしたら?」

日時:2020年8月21日(金)14:30~17:00
実施場所:オンライン
中継会場:BUKATSUDO(横浜市西区みなとみらい)

内容:
●開会挨拶(幹事:株式会社キクシマ 菊嶋秀生)
株式会社ありあけの取組紹介(代表取締役社長 堀越隆宏)
●クリエイター・プレゼンテーション
 井上仁行(パンタグラフ
 鈴木高祥、川島史(BUKATSUDO
 矢内原充志(スタジオニブロール
 小田桐奨(LPACK.
 杉崎栄介(アーツコミッション・ヨコハマ
●世話人・幹事・会場、クリエイターとの対話
●閉会挨拶(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団