ヨコハマ・アート・LOD - 情報の共有の先に見た新しいエコシステムの姿 -

Posted : 2015.09.25
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最近、各種メディアでも、ほぼ毎日のように「オープンデータ」「ビッグデータ」という言葉を目にする。この技術、果たしてどれくらい日常生活に役に立つのか。今一つ、実感できないのが現状である。一方で、当サイトにも言えることだが、情報の受発信力、そのキュレーションの方法については、どの場面でも日々の話題となる。そして、喫緊の課題として、2020年の東京オリンピックに向けて、首都圏の各自治体や企業、商店がインバウンドを獲得していくために、その都市の魅力をどのように情報発信を行っていくのか…。今回、その中の一つの要素としてオープンデータとは何かということに絞り込み、紹介していく。創造都市を進めるには、10年以上前にレッシング教授が提唱された「コモンズ」をどのように解き、使いこなしていくかも鍵となってくる。今回の記事では、当サイトでも既にイベント検索機能として実装(http://yokohama-sozokaiwai.jp/event)している「ヨコハマ・アート・LOD」について紹介することにより、「創造都市横浜」サイトとしてオープンデータの実践とは何か、適切な情報発信・管理の仕組みを考えていく機会とする。

文:小林巌生(有限会社スコレックス代表取締役社長、特定非営利活動法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ副理事長、一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地域創生推進機構委員)

公益財団法人横浜市芸術文化振興財団(以降、YAF)では、2009年から地域の芸術文化情報のオープン化を推進していることをご存じだろうか。 ヨコハマ・アート・LODでは、イベント情報や美術館の所蔵品情報など7万点以上のデータを、誰でも自由に使えるように公開している。いわゆる、オープンデータとして公開しているのだ。今回はヨコハマ・アート・LODのプロデューサーでもある私が、国内でも先進的な事例となったこのプロジェクトについて紹介させていただこうと思う。

▼地域情報化

私は普段、情報アーキテクトとして地域情報化を主なフィールドとして仕事をしている。簡単に言ってしまえば、あらゆる主体が持つ情報の組み合わせを考えて、新たな価値を創造するのが仕事だ。自治体や公的機関、企業などがクライアントで、こうした多様な主体による情報活動の効率化や情報交換スキームの企画、提案、設計、構築、全体のプロデュースなど、幅広く活動させてもらっている。

二十歳中頃までは、仲間とウェブサイトや映像の製作プロダクションのようなことをやっていて、主に都内で広告代理店などをクライアントに活動していた。いまはあまり使われなくなってしまったが、米Macromedia社(Macromedia社は2005年に米Adobe社に買収された)のFlashと言う技術を使った動きのあるウェブデザインを得意としていた。某携帯電話メーカー、某化粧品メーカー、某芸能プロダクション、某テレビ番組など、ほとんどが下請け、孫請けではあったが、いわゆるナショナルクライアントの仕事もやっていた。

その後、2004年頃だと思うが、ひょんなきっかけから横浜トリエンナーレの市民広報というボランティア活動に参加するようになり、地域情報化の分野に入り込むことになる。

このボランティア活動では、主にコンテンツを掲載するウェブサイトの構築を手伝った。他のメンバーがアーティストの製作活動等を取材するなどして作成した記事を、ブログ形式のウェブサイトにアップしてもらうようにして運用していた。

当時は、ウェブ2.0というバズワードとともに、CGM(コンシューマー・ジェネレイティッド・メディア)が台頭してきており、ウェブの情報爆発が大きく進んだ頃だった。それまで情報の発信者と受信者という関係は、マスメディアと一般市民という構図でほぼ表すことができたが、ブログやSNSの登場でマスに向けた情報発信が誰でも簡単にできるようになってしまった。情報の発信側、受給側という区別すら意味を成さなくなったのだ。

ウェブ2.0の革命はそれだけではない。同時にわれわれに対して社会の多様性を改めて考るように促した。というのは、それまで社会全体で共有すべきトピックというのはマスメディアによる画一的なものが大半で、マスメディアがとりあげるわけもない、また、学校や会社の中と共有するべくもない、超個人的なこと、マニアックな趣味だったり嗜好だったりといったことを共有できる社会というのは無い、あっても希であった。マニアックであればあるほど難しくなる。しかし、こうした構造もウェブによってあっというまに変わってしまった。全インターネット人口を母数とした場合、どんなマニアックな嗜好であっても共感できる相手は沢山いるわけで、そうした人同士が相互に知り合い、コミュニケーションすることも、ウェブ上であれば朝飯前ということになる。当時のこうした状況の中、横浜トリエンナーレの市民広報ボランティアがウェブを活用したのも必然といえるだろう。

この活動を通じて私が考えたことは、地域に根ざした情報活動において、さらなる効率化が図れないか、ということだった。横浜トリエンナーレの市民広報ウェブサイトでは少ない人手でインタビューや取材記事を作成して掲載していた。それ自体は質の高いコンテンツであったと思っているが、一方で広いウェブ上に目を向ければ、アーティストや個人のアートファンで自身のブログを通じて情報発信している人、横浜トリエンナーレの写真を撮影してウェブにアップロードしている人も少なくない。また、そうした個人に加えて、地域のニュースサイト、市役所等公的機関のウェブサイトなどでも、アートに関する情報はよく扱われる。こうした情報から編集方針にあうものだけをピックアップして紹介してやれば、より付加価値の高いメディアを効率良く運営することができるのではないだろうか。こうした考え方は、いわゆる、情報のキュレーションといわれている。

また、マッシュアップという手法も効果的だ。ウェブの世界でマッシュアップというのは、ウェブ上にある既存のコンテンツ、または、サービスを複数組み合わせて新たなコンテンツやサービスを構築することを指す。たとえば、GoogleMapの上にtwitterの投稿のうち地理空間座標を持つものを表示したのであれば、GoogleMapとtwitterをマッシュアップしたということになる。GoogleMapにしても、twitterにしても、マッシュアップを容易にする仕組みである、API(Application Program Interface)を開発者向けに提供している。ようするにマッシュアップを推奨しているのだ。サービスが多くマッシュアップされるということは、サービスの利用機会が増え、人々のサービスへの依存度が高まることになる。それこそが、ウェブサービスの価値だという考え方だ。いまでは、ウェブサービスがAPIを提供することは一般的になっている。これらAPIを利用すれば、あなたのウェブサイトに地図を表示させたり、twitterと連携させるなどといった、一から開発するにはあまりにも大変な機能を容易に取り込むことができる。一方で、APIを提供する側になり、自身のコンテンツやサービスのマッシュアップを促進するという発想もありえる。

キュレーションはメディア的発想、マッシュアップは技術的発想であるが、どちらもウェブ上の既存の資源を組み合わせて新たな価値を創造するという点では一致している。

この、キュレーションとマッシュアップの考え方を踏まえて情報活動をデザインすることは、自身のコンテンツやサービスに付加価値を与え、また、情報の流動性を高め、より広範に対してアウトリーチしていくうえで、とても有効だ。ヨコハマ・アート・LODでも、この考え方が基本になっている。

▼情報連携の実践

2005年の横浜トリエンナーレから4年後の2009年、横浜では開港150周年を記念して、開国博Y150が開催された。私はY150協会の事業で、Y150の関連イベントを集約して広報するウェブサイトの設計構築に携わった。当時は赤レンガ倉庫のある新港エリアを中心とした有料会場のイベントに注目が集まったが、それ以外にも、期間中は赤レンガ倉庫1号館の会場やズーラシアの敷地の会場で市民主体による多種多様の展示やワークショップが連日展開されていた。さらに、フリンジと呼ばれる周縁のイベントまで含めればその数はまさに膨大な量であった。私たちが構築したウェブサイトではそうしたイベント情報を対象として集約するとともに、情報のアウトリーチも課題となっていた。

そうした課題に対して、私たちは単にイベント情報サイトを構築するだけでなく、集約したイベントデータのマルチユースも試みた。ひとつは、富士ゼロックス社との連携、もう一つは日産自動車との連携だ。

富士ゼロックス社との連携では、会場に設置した富士ゼロックスの複合機を通じてオンデマンドでイベント情報を印刷出力するというサービスを構築した。端末が設置してある会場で利用者が操作したその時間以降に開催されるイベントに絞って情報提供するという具合だ。

日産自動車との連携では、イベント情報をカーナビに向けて配信した。富士ゼロックスとの連携と同様に、時間や場所による情報を出し分ける仕掛けであった。

こうした連携はイベント情報サイト側にAPIを整備することで実現したが、富士ゼロックス、日産自動車、それぞれ別々にAPIを実装する必要があった。私は、この経験を通じてAPIの有効性を確信するとともに、APIの共通化を考えるようになった。ようするに、連携するサービスごとに個別に対応しないといけない状況から、あらかじめ決めておいた共通ルールにさえ対応すればどんなサービスともスムーズにマッシュアップできる状況へのシフトという考え方だ。この経験も後のヨコハマ・アート・LODに活かされることになる。

▼オープンデータとは?

さて、本題であるヨコハマ・アート・LODの紹介に入りたいのだが、その前に、オープンデータという概念について簡単に紹介しなければならない。

オープンデータとは開放されたデータそのもの、または、データを開放する行為を指す。近年、政府や地方自治体といった公的機関を中心に世界中でオープンデータが推進されており、日本でもオープンデータに取り組む主体が増えている。各国政府がオープンデータを推進する根拠は、オープンガバメントというコンセプトで説明ができる。本稿では詳しい解説はしないが、東京大学公共政策大学院客員教授を務める奥村裕一氏による定義を引用して紹介しよう。

“(オープンガバメントとは、)政府のもつ情報を国民が共有し、政策のプロセスを可視化し、政策決定に国民が関与し、公共サービスを協働して進めていこうというもので、国民(Demos)が統治する(Kratos=power)という民主政(Democracy)の原点に立ち返って政府の再生、公共の信頼回復を目指すことを目的としている。”
(政策デザインと合意形成~その評価と課題~オバマのオープンガバメントの意味するもの~今後も続く完成への長い道のり~奥村裕一 季刊 政策・経営研究 2010 vol.4 52P)

この文章からもわかるように、オープンデータはオープンガバメントの基底を成す重要な要素となっている。故に、各国政府はオープンデータに積極的に取り組んでいるのだ。

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単にデータが公開されている状態なら、これまでも自治体のウェブサイト等に行けば統計データなど入手可能なデータは沢山あった。しかし、オープンデータの概念では、これらをより開放した状態にすることを求めている。具体的には、オープンライセンスと、より機械処理がしやすいデータフォーマットの採用が推奨されている。

まず、オープンライセンスについてだが、日本の著作権法では創作物には自動的に著作権が発生することになっており、データであっても著作権が伴うケースは少なくない。たとえば、あなたがウェブで利用したいデータを見つけたとして、通常はデータの作成者に対して利用目的などを説明して許諾を得なければならない。しかし、オープンライセンスの場合、データの利用に対して、利用目的や利用者を限定しないことがあらかじめ宣言されたうえでデータが公開される。著作者から許諾を得るという手続を経ずにデータを利用できる。データを公開する側にとっては、もとより秘匿しておく必要がない、さらには、利用を推奨するデータの場合は、承諾の手間が省かれる点で大きなメリットがある。

次に機械処理がしやすいデータについてだが、これはプログラムなどで利用するために簡単にデータを取り出すことができる、いわゆる、コピペがしやすいデータを指す。紙をスキャンしてPDFで配布するよりは、エクセルファイルのままで配布した方がデータを抽出したりプログラム処理する際には有利となる。さらには、XMLやJSONなどシステム間でのデータ連係で頻繁に用いられる木構造のデータがあらかじめ公開されていれば、なおのこと、機会処理は容易となる。

▼LODとは?

LODとはLinked Open Dataの略で、まさに、リンクされたオープンデータを指す。

ヨコハマ・アート・LODでは、YAFが扱う地域の芸術文化に関する様々な情報をLODとして公開している。LODとは、リンクされた状態のオープンデータであるが、データとデータがウェブ空間でリンクされて巨大なネットワークを成していくので、データによるウェブとも呼ばれる。LODでは扱う情報リソース(例:記事、人、組織、場所、など)はすべて固有のURI(URL)を持っており、そのURIにアクセスするだけでそのリソースに関する情報を取得することができる。そして、オープンデータの公開の仕方として、機械判読性の観点、データのアクセシビリティ(アクセスのしやすさ)の観点から、もっとも推奨される形式の一つでもある。国内ではヨコハマ・アート・LODの他、経済産業省、国立情報学研究所、国立国会図書館、独立行政法人統計センター、といった公的組織を中心にLODの利用がはじまっている。図1「日本語Linked Data Cloud図」を見てもらいたい。ここには国内の主なLODのつながりが可視化されている。

図1「日本語Linked Data Cloud図」

図1「日本語Linked Data Cloud図」

 

一方、国外に目を向ければ、すでに相当な数のデータがLOD化されている。さきほどの「日本語Linked Data Cloud図」に相当する世界版が図2「The Linking Open Data cloud diagram」だ。この図には政府機関、公的機関、ライフサイエンス、ソーシャルメディア、地理空間情報、メディア、医療機関、など幅広い分野にわたって公開されている多様なLODが表されている。ちなみに、この図の作成にあたっては、ある条件のもとに登録収集されたLODを対象としており、世界のすべてのLODが表示されているわけではないが、それでも世界の状況にくらべれば日本におけるLODの普及はまだまだ遠く及ばないと言わざるを得ない。

図2「The Linking Open Data cloud diagram」

▼芸術文化分野、世界のLOD

Europeanaさまざまな分野に広がるLODだが、芸術文化の分野はもっとも積極的な分野と言える。代表格は、Europeanaだ。Europeanaは欧州連合が資金を出しているプロジェクトで、欧州各国の文化機関のデジタルアーカイブのデータを統合することを目指す壮大なものだ。3,000を超える機関が参加しており、3,000万点を超えるデータが登録されている。そして、だれもが、それらの情報を対象とした検索をすることができる。たとえば、ゴッホの作品について調べたければ、検索窓に「Vincent van Gogh」(ゴッホ)と入力すれば、どこの国のどこの館に関連作品が所蔵されているかが一覧表示されるという具合で、まるで、芸術文化分野のGoogleの登場とでも言えそうな、素晴らしく便利な未来を予感させてくれる取り組みだ。そして、このEuropeanaではLODにも取り組んでいる。(http://labs.europeana.eu/api/linked-open-data-introduction)

LODはセマンティックウェブ技術に基づいており、意味をともなうリンクによってネットワークが形成される。作品と作家の関係や、作品と所蔵館の関係など、物事の係わり方をそのままデータベースとして表現したような状態をイメージしてもらうと良いだろう。「19世紀中頃のオランダ出身の作家による絵画を検索」といった現在のGoogleではできないような検索もLODを用いれば可能となる。Europeanaの他にも、大英博物館ゲッティ財団スミソニアンといったメジャーな機関がこぞってLODの採用を進めている。

▼ヨコハマ・アート・LODの効果

ヨコハマ・アート・LODでは、横浜美術館の所蔵品データ、ヨコハマ・アートナビの地域の芸術文化系のイベント情報、文化施設情報などをLODとして公開していており、現在までに約7万5千件のデータを公開済みだ。詳しい内訳は表を参照してもらいたい。

イベント情報 場所情報 所蔵品情報 作家情報 合計
61,192 144 12,889 1,618 75,843

 

YAF統合検索では、ご存じのとおり、横浜美術館横浜市民ギャラリー大佛次郎記念館、といった文化施設の運営をしながら、同時に情報発信も行っている。しかし、事業ごとに情報の管理方法(データベースの設計や更新の仕方)、公開方法(ウェブサイトでの表示の仕方、検索のさせ方)は異なる。結果、YAF全体として膨大な量のデータを保持しているが、それらの情報を統一的に扱うことはできないという課題があった。その課題の克服が、ヨコハマ・アート・LODの目的の一つでもある。たとえば、ある作家について、横浜美術館の所蔵品のデータと、ヨコハマ・アートナビの過去のイベント情報を横断して検索したいとする。しかし、どうだろう、個別にそれぞれ検索する以外に、うまいやり方を思いつくだろうか。ヨコハマ・アート・LODであれば、そうした検索も一度で済ませることができる。それは、先に説明したとおりモノコトの関係性に基づいたデータベースであるLODの特徴による。こうした統合的な検索操作はウェブサイト「YAF統合検索」で実際に体験してもらうことができる。

YAF組織内での情報の統合と共有化という成果については既に紹介したとおりだが、もうひとつの大きな成果が他者=サードパーティーによるアプリやサービスへのデータの応用だ。

横浜MAPS2横浜MAPS1スマートフォンやタブレット向けの地図アプリ「横浜MAPS」では、ヨコハマ・アート・LODのAPIを利用して周辺のイベント情報を提供する機能を実装している。このアプリを利用すれば、スマホのGPS機能とも連動して、その日にその周辺で開催されているイベント情報を探すことが直感的に行える。(画像参照)

アプリ側は本来提供できていたイラスト地図を見ながら楽しく街を散策できるという機能に加えて、地域の旬のイベント情報を提供できるようになるという付加価値が得られたことになる。そして、YAF側は地域の芸術文化系イベント情報のアウトリーチを広げるための新たなチャンネルを得たことになる。このアプリの利用機会が増えれば増えるほど、地域の芸術文化系のイベント情報の知られる機会も増えることになるということだ。

サードパーティーによるデータの応用は、この「横浜MAPS」以外にも、「チョイモビ」(日産自動車の二人乗り小型電気自動車によるカーシェアリングの実証事業)で提供しているスマホアプリ、O2Oマーケティングサービスが提供しているスマホアプリ等がある。くわしくは、ウェブサイトをご覧いただきたい。(http://yan.yafjp.org/lod-case)

▼今後の展望

ヨコハマ・アート・LODの今後の展望、その一つ目は国内他地域との連携、さらには、世界との連携だ。すでに紹介したとおり、世界ではEuropeanaをはじめ、メジャーな機関による意欲的な取り組みがすでにはじまっている。今後はこうした世界のプロジェクトとの連携可能性も検討していきたいと思うと同時に、先導する欧米に対して、まだ具体的な動きの見えないアジア圏でのLODにおいて、日本がイニシアティブを発揮することはできないかとも思う。少し気持ちが先走ったが、まずは国内の他地域との連携を検討することが優先か。とくに、神奈川県内の周辺自治体との情報連携はシナジーが働きやすいのではないかと考えている。

オランダでは、「ARTS HOLLAND」というコンソーシアムが発足している。中心となっているのはWAAGというアート、サイエンス、技術をテーマとする研究所で、他に、オランダ政府観光局も参加している。このコンソーシアムでは芸術文化を軸とした旅行を増進するために、情報と技術を用いてさまざまなツールを開発していくとしている。イベント情報、施設情報について、LODを用いて統合、公開しており、実際にデータを活用した事例として博物館、美術館を楽しむためのアプリや、オランダでの芸術文化ツアーをアレンジできるアプリなどがある。「ARTS HOLLAND」のこうした取り組みは、ヨーロッパの8つの都市、企業、研究機関等が参加するプロジェクトであるCitySDK(City service development kit)とも連携している。CitySDKでは参加する各都市で差はあるが、公共交通、建物、駐車情報、統計など多様なデータがAPIを通じて提供されている。この取り組みはヨーロッパの各国、各都市のデータを高度に連携させる情報プラットフォームの確立を目指した意欲的なもので、着実に前進している。日本でも、ぜひ、同様のプロジェクトに取り組みたいものだ。

展望の二つ目だが、ヨコハマ・アート・LODではすでにサードパーティーによるデータの利活用が進み、さまざまなアプリが登場していることはすでに紹介した。今後は、こうした事例をさらに発展させていく必要があると考えている。できるだけ多くの人にヨコハマ・アート・LODを知ってもらい、使ってもらいたいが、そのためのPR活動にも力を入れて行きたいと考えている。

実は、ヨコハマ・アート・LODでは2011年からLODチャレンジというオープンデータをテーマにしたコンテストに参加しており、初回はヨコハマ・アート・LODの成果を応募し、オープン・ガバメント賞を受賞、2012年からはデータ協賛パートナーとして参加している。この取り組みを通じては様々なデータ活用事例を応募いただくことができた。

今後は、データの活用方法を考えるアイディア出しのワークショップやデータを実際に使ってなにかアプリケーションやサービスを開発してみるワークショップなども展開したい。ちなみに、11月5日には地域で技術を持った有志による地域課題の解決を目的としたコミュニティ活動Code for YOKOHAMAとも連携してヨコハマ・アート・LODを学ぶ機会を提供できる予定なので、興味のある方はぜひ参加していただきたい。(横浜市経済局の関連事業として開催することが決定しています。)

▼最後に

横浜市は国内におけるオープンデータの先進都市として紹介されることも多い。2014年には「横浜市オープンデータの推進に関する指針」を発表している。特に注目したい具体的なアクションプランが今年度中に完了予定とさている、ウェブサイトのリニューアルだ。この事業では単にウェブサイトとその管理システムを刷新するのみならず、オープンデータにも全面的に対応するとしている。この取り組みが軌道に乗れば、あらゆる分野の多様なオープンデータが継続して提供されるようになるだろう。個人的にも大きな期待を寄せているが、しかし、そこで終わりではない。私たちがヨコハマ・アート・LODプロジェクトを通じて考えなければならないのは、こうした好機をしっかりとらえ、本稿で紹介したようなアイディアの実現に向けて、着実に歩みを進めることである。その際に欠かせないのが、繰り返しになるが、市民との連携、周辺組織をはじめとする多様な主体との連携だと考えている。

「横浜市経済局 平成27年度オープンデータ活用ビジネス化支援事業」
横浜市では、オープンデータを利活用した新たなビジネス・サービスの創出や、市内経済の活性化に向けて、「オープンデータ活用ビジネス化支援事業」を実施しています。
詳しくは、横浜市経済局のウェブページをご覧ください。

「ビジネス活用のためのオープンデータセミナー」
▽第1回 9月18日(金) 「はじめてのオープンデータ」
▽第2回 10月20日(火)  「オープンデータを使ったビジネスモデル(仮)」
▽第3回 12月開催予定  「オープンデータを支える技術(仮)」

「成長分野×データ活用セミナー」
▽第1回 8月8日(土) 「環境・エネルギー×オープンデータ」(終了)
▽第2回 10月30日(金)  「健康・医療×オープンデータ(仮)」
▽第3回 12月21日(月) 「観光・MICE×オープンデータ(仮)」

「Code for YOKOHAMAオープンデータハンズオン」
▽第1回9月9日(水)「オリジナルマップを作って世界に公開しよう!」
▽第2回9月17日(木)「オリジナルマップにレビュー機能を追加しよう!」
▽第3回9月30日(水) センサーを作ってデータを取得してみよう!
▽第4回10月15日(木)「 データをグラフで可視化してみよう!」
▽第5回11月5日「外部データをつなげてイベント情報アプリを作ってみよう!」(ヨコハマ・アート・LODを使います)

小林巌生(こばやしいわお)
1977(昭和52)年 神奈川県生。
有限会社スコレックス代表取締役社長
特定非営利活動法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ副理事長
一般社団法人オープン&ビッグデータ活用・地域創生推進機構委員
情報アーキテクト、デザイナー。
ウェブデザイナーとして大手企業や自治体等のウェブサイト構築プロジェクトに多数参加。
また、情報アーキテクトとして地域情報×ウェブをテーマに活動。横浜開港150周年Y150、市民参加都市ブランディングプロジェクト「イマジン・ヨコハマ」等、横浜に関する情報系の企画やデザインに多数参加。
現在、特定非営利活動法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ、ヨコハマ・LOD・プロジェクト、LODチャレンジ、Code for YOKOHAMA等での活動を通じて、政府や自治体、公共機関のオープンデータ施策の支援も行っている。