横浜DeNAベイスターズ×横浜のクリエーター

Posted : 2015.09.11
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横浜スタジアムでの試合のあとには、ブルーのユニフォームを着た観客が街なかにあふれる横浜・関内エリア。横浜の中心で、横浜DeNAベイスターズは「野球」をとおして人と人、人と街がつながる活動に取り組んでいる。横浜を拠点に活動するクリエーターや企業と協働したプロジェクトも、次々と立ち上げてきた。このような取り組みには、いちスポーツ球団としてのどのような狙いがあるのだろう?
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(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 
DeNAベイスターズのまちづくりプロジェクト「I☆YOKOHAMA」

 

2012年から株式会社DeNAを親会社とし、新しく生まれ変わった横浜DeNAベイスターズ(以下、DeNAベイスターズ)。横浜市民の方々は、プロ野球のシーズン中に街を歩けば、DeNAベイスターズの広告やユニフォームを着た観客を目にする機会が多いのではないだろうか?

DeNAベイスターズは2014年から、「まちづくり」プロジェクトとして「I☆YOKOHAMA(アイラブヨコハマ)」を掲げている。DeNAベイスターズが横浜という街を意識した取り組みを展開するようになったきっかけは、2013年に実施した市民調査だった。「I☆YOKOHAMA」を立ち上げるに至った経緯について、株式会社横浜DeNAベイスターズ経営・IT戦略部長の木村洋太さんに聞いた。

「2013年に、DeNAベイスターズ独自の市民調査を行いました。横浜のイメージに関するアンケートを取ったんです。そこで出てきた答えには、海、港、異国情緒、洗練された街……といったワードが並んでいたのですが、横浜=横浜DeNAベイスターズと答えた人は多くありませんでした。ここまでDeNAベイスターズのイメージが出てこないのか、とみんなで頭を抱えてしまいまして(笑)。もっと横浜に根付いていかなければならないという思いを持ち、まちづくりプロジェクトに取り組んでいこうと考えて「I☆YOKOHAMA」を掲げたんです。野球に興味を持っていない人たちにも、まずはDeNAベイスターズを知ってもらうこと。そういった活動からはじめていかなければならないと考えました。」

株式会社横浜DeNAベイスターズ経営・IT戦略部長の木村洋太さん

株式会社横浜DeNAベイスターズ経営・IT戦略部長の木村洋太さん

 

「I☆YOKOHAMA」のプロジェクトは大きく3つ。ひとつは街なかでの電光掲示板やフラッグの設置など、プロ野球が横浜の街の中で会話のきっかけになるための活動。2つ目はYOKOHAMA STAR☆NIGHTや、「コミュニティボールパーク」化構想など、横浜の人々が横浜スタジアム(以下、ハマスタ)で横浜を感じながら楽しむための活動。そして3つ目は横浜の企業・店舗がプロ野球をきっかけにさらに元気になるための活動「CLUB BAYSTARS」。横浜の飲食店や小売店を中心とした、DeNAベイスターズの応援組織だ。加盟店舗に行って「DeNAベイスターズを応援しています」と伝えると、「特典」がもらえる。

 
日常の生活にBASEBALLをプラスする――ライフスタイルショップ「+B」(プラス・ビー)

 

横浜の人々の日常生活の中に、もっとDeNAベイスターズが溶け込んでいくことはできないだろうか――。そんなことを日々考えていた球団社員たちの目にとまったのが、市民調査の中で浮かび上がってきた「洗練された」というワードだ。横浜市民は、洗練されたもの、センスが良いもの、おしゃれなものに対する感度が高い。横浜の出身者が多い球団社員たちも、そのような実感を共有していた。野球のユニフォームを日常的に着てもらうのはなかなか難しいけど、ワンポイントのマークが入ったTシャツだったらどうだろう?

ふだん使いできること、つまり日常の生活にBASEBALLをプラスするという発想から、DeNAベイスターズは新しいオリジナルブランドと、コンセプトショップを立ち上げることを2015年1月に発表にした。その名も「+B(プラス・ビー)」。コンセプトショップは、試合日には多くの観客が往来する、横浜公園に面したハマスタの一画にある。オリジナルグッズの販売だけでなく、平日は朝8時からオープンしているコーヒースタンドが併設されている。「+B」を立ち上げるにあたって、DeNAベイスターズがタッグを組んだのが、横浜で活躍する第一線のクリエーターたちだった。建築・空間設計に株式会社オンデザインパートナーズの西田司さん、MD(マーチャンダイザー)に株式会社メソッドの山田遊さん、そしてブック・コーディネーターにNUMA BOOKSの内沼晋太郎さんを迎えた。またVIデザインとブランディングの監修をNOSIGNERが、スタッフのエプロンを有限会社スタジオニブロールの矢内原充志さんが手掛けている。

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(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 

「『餅は餅屋』という考え方がありまして、『+B』がクオリティの高いプロフェッショナルのショップとしてきちんとした評価を得るためには、その道の専門家に任せるということが重要です。私たちは球団運営のノウハウはあっても、どんなコーヒーを売ればお客さんが集まるか、ショップをどんな内装・デザインにすれば満足してもらえるか、ということがわかるノウハウはありません。洗練されたイメージを好む横浜の市民に愛されるものをつくるためには、横浜のクリエーターの皆さんの力が必要でした。」

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(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 

「+B」のショップは通常の応援グッズのスペースは最小限にとどめ、イメージの統一感を大切にしていると木村さんは語る。人どおりの多いスペースにオープンしたショップなので、応援グッズの販売スペースをメインに据えれば売上が伸びるのかもしれないが、今はオープンしたばかりの「+B」というブランドをじっくり育てていこうという思いがある。

「『+B』は徐々にですが軌道に乗りつつあるところです。実際に『+B』のTシャツを着て観戦し、そのまま横浜の街に繰り出す人も増えてきています。野球には興味がないという人も、『+B』が発信するグッズを身に付けている誰かに出会えば『これってDeNAベイスターズのグッズなんだけどね』と会話のきっかけになっていくと思うんです。そういう場面を増やしていくことで、少しずつDeNAベイスターズが横浜に浸透していくことを狙いとしています。」

 
横浜のクリエーターのデザインコンペ――「YOKOHAMA STAR☆NIGHT 2015」イベントフライヤー

 

DeNAベイスターズが年間でもっとも力を入れているイベントがある。横浜スタジアム内での豪華な演出照明や、迫力満点の特殊効果花火を織り交ぜて夏の一夜を大いに盛り上げるイベント、「YOKOHAMA STAR☆NIGHT」だ。

このイベントフライヤーの制作にあたり、横浜に拠点を置くクリエーターを対象としたデザインコンペを実施した。このコンペの実施にあたり、DeNAベイスターズが協力を仰いだのが公益財団法人横浜市芸術文化振興財団の中にある「アーツコミッション・ヨコハマ」だ。DeNAベイスターズは、横浜市が推進する『文化芸術創造都市施策』にもとづいて、街とクリエーター、そして球団のつながりをより広げていきたいという思いを持っていた。STAR☆NIGHTというイベントをきっかけに、クリエーターを必要とする横浜の企業・DeNAベイスターズと、横浜のクリエーターのマッチングに、アーツコミッション・ヨコハマのノウハウが生かされる機会となった。

「アーツコミッション・ヨコハマは、横浜のアーティスト・クリエーターとの直接的で幅広いネットワークを持っていますよね。また相談窓口としても活動している。DeNAベイスターズがクリエーターと仕事をするにあたって、アーツコミッション・ヨコハマさんとどんな形でご一緒ができるか、一度試してみたいと考えました。」

フライヤー

(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 

10組の横浜のデザイナーが参加したデザインコンペを勝ち抜いたのは、株式会社イリテデザイン代表の入手光一さんだ。ファンにイベント当日無償配布されるスペシャルユニフォームにも採用されている、横浜を象徴する港のきらめく水面の文様を基調とした、爽やかなイメージを打ち出した。うちわとしても使用でき、両面のデザインを楽しめるフライヤーうちわ。じつはこの模様には、ちょっとした遊びゴコロもある。模様の中には10名の選手のシルエットが隠されていて、見つける楽しさもある。また、入手さんが提案したキャッチフレーズ「横浜がひとつになる日」も、ベイスターズのスタッフからの評価が大きかった点だ。

「短い制作期間でありながら、野球をきっかけにチームも街も元気になる、というイベントのコンセプトにぴったりなアウトプットが出てきたことに感心しました。アーツコミッション・ヨコハマさんにお願いしたことで、短期間でクオリティの高いアウトプットを引き出すことができました。」

 

球団初・オリジナル醸造ビール「BAYSTAR ALE」と、オリジナルデザインマンホール

 

社員のアイデアと行動力で次々と新しいプロジェクトに乗り出す社風は、DeNAベイスターズのユニークなところだ。球団初のオリジナル醸造ビールもその精神の現れのひとつ。「球団初」「球界初」をいかに仕掛けるか――。球団社員たちは日々考えているのだそう。オリジナル醸造ビールへの取り組みは、神奈川県内の15種類以上の地ビールを販売する「YOKOHAMA BAY BEER FESTIVAL 2015」(2015年8月末開催)の開催をきっかけにスタートした。BAY BEER FESTIVALは、横浜公園の芝生エリアで開催している、入場無料「ハマスタBAYビアガーデン」で開催される、6日間限定のビールの祭典だ。地元・横浜をビールと野球で盛り上げたいという思いで、横浜スタジアムから程近い関内の人気クラフトビール店「横浜ベイブルーイング」とのコラボレーションも実現し、「BAYSTARS ALE」の誕生に至った。

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(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 

またDeNAベイスターズは街中の街灯フラッグや球場や駅の装飾だけでなく、マンホールのふたのデザインにも取り組んでいたのをご存じだろうか? マンホールのふたのデザインを好むマニアの口コミ効果や、市民の会話のきっかけや、ホームタウン感の醸成狙い、市内の老朽化したマンホールのふたを取り換えるという実利性も兼ねて、横浜市へ53個のマンホールのふたを寄贈した(2015年8月)。ふたのデザインは、同じく横浜・関内に拠点を構えるデザイン事務所・NOSIGNERが手掛け、景観を大切にする横浜の街並に合せて、ビビッドなブルーではなく、少し落ち着いた配色を採用。さらに、DeNAベイスターズロゴよりも、星を全面に押し出し、洗練されたデザインに仕上げている。

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(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 

 

 

 

 

 

 

 

DeNAベイスターズの「コミュニティボールパーク」化構想

 

DeNAベイスターズ×横浜のクリエーターを切り口に、さまざまなプロジェクトの取り組みを追ってきた。最後に「I☆YOKOHAMA」の一環である「コミュニティボールパーク」化構想をご紹介しよう。

DeNAベイスターズは、横浜スタジアムを楽しむためのさまざまなエンターテインメントに取り組んでいる。先述の「ハマスタBAYビアガーデン」もそのひとつ。4月から9月の週末には「ファミリーBAYパーク」という子ども向けの遊具エリアを設置するなど、野球に興味を持っていない人にも、横浜公園という公共の空間を介して楽しんでもらおうという仕掛けを積極的に作っている。

また、球場内には、テレビモニターが付いたボックスシートや、リビングのようにくつろぐことができるボックスシート、仲間でバーにいるような雰囲気で野球観戦を楽しめるスカイバーカウンターなど、観客の多様なニーズに対応した客席の設計にも例年のように取り組んでいる。球場に訪れた際には、ハマスタならではの客席タイプを選んでみてはいかがだろう?

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(C)YOKOHAMA DeNA BAYSTARS

 

横浜を拠点にしたスポーツ球団があることは、都市の魅力のひとつでもある。「プロ野球のある街、横浜」を日常から感じてもらうことを意図してはじまった、まちづくりプロジェクト「I☆YOKOHAMA」と、横浜のクリエーターとのコラボレーションによるさまざまな取り組み。あらゆるプロジェクトの根底には、まずは、横浜の街でDeNAベイスターズを多くの人に“会話のきっかけにしてもらう”という発想があった。

 


 ●ライフスタイルショップ「+B」 基本情報●

http://www.baystars.co.jp/plusb/
ショップ営業時間:11:00~19:00
(※試合日は試合終了1時間後までオープン)
BALLPARK COFFEE営業時間
平日:8:00~19:00
土日祝:10:00~19:00

住所:〒231-0022 神奈川県横浜市中区横浜公園
最寄り駅:JR京浜東北・根岸線「関内駅」南口より徒歩2分
横浜市営地下鉄ブルーライン「関内駅」1番出入口より徒歩3分
みなとみらい線「日本大通り駅」横浜スタジアム口より徒歩3分