「ファブラボ」のムーブメントが横浜に上陸!

Posted : 2013.09.09
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“作りたいもの”をカタチにする「ファブラボ」。例えばiPhoneで撮影した自分の上半身が、ペットボトルキャップのフィギュアになって出現してしまう!?  3Dプリンターを使えばそんなコトも可能だ。

(FAB9ヨコハマ創造都市センター)

 

ファブラボって何?

いまメディアでも何かと話題の3Dプリンター、ご存知の方も多いのではないだろうか? 「ファブラボ」は、3Dプリンターや、レーザーカッターなどさまざまなデジタル工作機械があって、個人がそれらを使えるところ。でも、それだけじゃない。「(ほぼ)なんでもつくる」がコンセプトのファブラボは、これからの「ものづくり」のあり方を変える “実験的な工房”だ。現在世界約50ヵ国200ヵ所以上で有志のネットワークによって運営され、ものづくりにおける新たなムーブメントを巻き起こしている。日本では2011年につくばと鎌倉、2012年に渋谷にファブラボがオープンし、その後も北加賀屋、仙台と続いた。

なぜファブラボが、新たなものづくりの現場として注目を集めているのか。簡単に言えば、企業や研究所のような専門機関がデジタル工作機械を占有するのではなく、ファブラボはそれらを市民に広く開放したからだ。このことによって、何が起こったか? 個人が消費者としてだけでなく、生産者としても経済活動に参加する可能性が広がった。ファブラボから始まった個人の活動が、新たなビジネスチャンスを生むことだってある。

ファブラボでは、自分が作りたいものを作り、作り方やデータなどをインターネット上でオープンにする。そして共有されたデータが、他の人に使われたり作り変えられたりして広がっていく。この国際的なネットワークが、ものづくりにおけるコラボレーションを促進するのだ。ファブラボの発想は、これまでのメーカー企業などによる独占的な大量生産のものづくりのあり方を、根底から覆してしまった!

真ん中の大きな机は、イノベーションが起こりやすいオープンな環境づくりのひとつ(FAB9スーパーファブラボ)

 

第9回世界ファブラボ代表者会議(FAB9)が日本初・横浜で開催

そんなファブラボには、世界中の運営者が一堂に会するイベントがある。その名も「世界ファブラボ代表者会議」。この会議は、各地のファブラボでの取り組みを共有するセッションを行ったり、工作機械を使ったりしながら、アイデアを交換する場だ。この世界ファブラボ代表者会議、アジアで初めての開催地として選ばれたのが “横浜”だ。アムステルダム、ウェリントン、バルセロナなど、世界ファブラボ代表者会議・開催都市の共通点は創造都市。横浜は日本において創造都市を牽引し、世界へ向けてその活動を発信してきたことが、開催都市に選ばれた理由だ。

去る8月21日から27日までの7日間、ヨコハマ創造都市センター(YCC)、北仲BRICKをはじめ、横浜市内の5カ所を会場として、第9回世界ファブラボ代表者会議(FAB9)が開催された。熱気にあふれた各会場では、ワークショップやグループミーティングが分刻みで行われ、まるで性別や年齢、そして国境を越えたファブラボ関係者たちが集い、人種のるつぼのような様相に!
北仲BRICKには、ローランド ディー.ジー.などのメーカー企業や、日本や海外のファブラボのバックアップのもと、期間限定の「スーパーファブラボ」が登場。内覧会では、「ショップボット」という巨大なマシンが、実演付きで紹介された。パソコンとつないで使用するこのマシン、机や椅子などの3Dデータから、そのパーツを切り出してくれる優れもの。その気になれば、あなたも今日から家具デザイナーになれるかも!?  ファブラボの機材を適切に使えば、そんなミラクルも実現できるわけだ。

FAB9実行委員長で慶應義塾大学環境情報学部の田中浩也准教授は、YCCで開催された記者会見で、FAB9について語った。
「FAB9は学会でもなくビジネスミーティングでもなく、一週間にわたる『クリエイティブ・サマーキャンプ』みたいなもの。クリエイティブシィの横浜には、ファブラボと親和性の高い文化や人々が集まっている」。

ショップボットの実演

ショップボットで作った家具

日本で6番目・横浜初のファブラボが関内にオープン

FAB9期間中の8月26日には、横浜初のファブラボとなる「ファブラボ関内」が「さくらWORKS<関内>」にオープンした。さくらWORKSは、(公財)横浜市芸術文化振興財団のアーツコミッション・ヨコハマ(ACY)が、芸術不動産リノベーション助成によってサポートしたスペースのひとつ。2011年のオープンに際して、入居スペースをリノベーションする資金をサポートした。ACYは、アーティストや、NPO、市民、企業、学校などさまざまな創造の担い手をサポートするプロジェクト。アーティストやエンジニア、フリーランスの人たちが活動しやすい環境をつくることで、彼らに横浜に集まってきてもらおうとする事業だ。クリエイティブな発想を好む人たちが集まることで、都市の内発性が高まることを目指す。このような「人」の動きこそ、創造都市のダイナミズムを生み出すリソースになる。

ファブラボ関内の代表者のひとり古川英幸氏も、横浜でダイナミックな動きをみせている個人だ。さくらWORKSを運営する横浜コミュニティデザイン・ラボに、学生インターンとして関わり、自らの趣味だったものづくりへの興味をきっかけとして今回ファブラボの設立と運営に携わることになった。ファブラボの使い手だった個人が、気付いたらファブラボを運営する側になっている…。そんなフットワークを可能にする「環境」こそが、創造都市のポテンシャルなのだ。

8月26日(月)オープニングの様子(ファブラボ関内)

 

「ファブラボ関内」に行ってみよう!

ファブラボ関内には、3Dプリンター、ペーパーカッター、3Dミリングマシン、レーザーカッター、電子工作機器が備わっている。これらの機材を使ったことがない人が、ラボの機材を使ってオリジナルの何かを作りたい場合、どうしたらいいか?

ファブラボ関内は、メンバー登録制によって運営している。3か月間をタームとして、現在この10月から12月の利用メンバーを募集中だ。メンバー登録をして安全講習会へ参加すれば、オープン日(本文末の情報を参照)にはいつでもファブラボを利用できる! ファブラボ関内では、初心者の登録ももちろん歓迎。オープン日には、管理人のサポートもある。料金設定も、3か月間1万円プラス材料費で利用メンバーになれるというから、これはお得。ファブラボ関内ではワークショップや講演会なども企画していくので、もちろん利用メンバー以外にも開かれたスペースだ。
ファブラボ関内ではオープンに先立ち、この4月から上記の機材を徐々に揃えてワークショップを行ってきた。参加者とのコミュニケーションを通し、ファブラボを利用する人たちのニーズも見えてきた古川氏には、ファブラボ関内を「集中してものづくりができる環境」にしたいという想いがある。
ファブラボが面白いのは、コンビニやショッピングモールのように、どんな都市にも同じようにフランチャイズ出来るようなものではないところ。グローバルなネットワークがある一方、ローカルにファブラボを使う人たちが主役の場でもあるからだ。

ファブラボ関内は、どのようなキャラクターをもったファブラボになっていくのだろう?横浜でものづくりをする人たちの“ハブ機能”を担っていく役割を果たすのではないだろうかと、古川氏は考える。「これまでファブラボの文脈では活動していなかった人、横浜で活動しているクリエーターなどが、このラボをきっかけに繋がり始めたら面白い」。

「ファブラボ関内」にある機材

 1.3Dプリンター  3Dデータをもとに、プラスチックの素材を積層して立体物をつくる
 2.ペーパーカッター  紙やシールなどの素材をカットする
 3.3Dミリングマシン  3Dデータをもとに、木材やプラスチックなどの切削加工によって立体物をつくる
 4.レーザーカッタ  木材、プラスチック、アクリル、ゴムなどの素材をカットする
 5.電子工作キット  ハンダゴテ、ブレットボードなどの工作キット

3Dプリンター

レーザーカッター

ペーパーカッター

3Dミリングマシン

電子工作機械


かつて一家に一台テレビなどの家電が訪れたように、一家に一台デジタル工作機械が訪れる日もそう遠くはないのかもしれない。
「新しい自給自足」のライフスタイルは、すでにファブラボから始まっている。

<ファブラボ関内 基本情報>
オープン時間:土曜日・日曜日 12:00~19:00(現在10月~12月の利用メンバーを募集中)
メンバー利用料金:1万円/3ゕ月
Tel:045-664-9009
所在地:〒231-0012 横浜市中区相生町3-61 泰生ビル2F さくらWORKS<関内>
アクセス:JR関内駅 徒歩5分、みなとみらい線 馬車道駅 徒歩5分
URL:http://fablab-kannai.org/