ものづくりの”今”

Posted : 2013.12.06
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ものづくりの“今”

手のひらサイズのプレートに糸や布を織り込んでいくだけで、簡単に丸くてかわいい織物が完成する「まるイロ」。これまでのスローレーベルのプロダクトにはない、道具や製法をアーティストが開発するという新しい試みに挑戦した井上唯さんに、アーティストから見たスローレーベルについてお聞きしました。

手の中におさまる小さな織機、「まるイロ」が生まれた理由

普段はアーティストとして作品制作を行っている井上さんが、なぜスローレーベルの「プロダクト」に関わることになったのか?きっかけからお聞きします。

私が徳島の神山で滞在制作をしているときに、別のプロジェクトで来ていた栗栖さん(スローレーベルディレクター)と出会っていて、スローレーベルの翌年のテーマが「織りと編み」に決まった際に、“織”への興味から制作をしていた私にお声をかけていただきました。

それまでのスローレーベルの仕事を見て惹き込まれたのと、普段自分がしている作品制作とは違い「製品をつくる」ということが新鮮でおもしろそうだったので、参加させて頂こうと。漁師さんたちが浜辺にしゃがみ込んで漁網を修繕している写真を見せてもらい、こんな風にみんなで集まって生み出すような何かを作ってほしいというのが栗栖さんからのリクエストでした。

そこで考えたのが、“まるい”織物ができたらおもしろそうだなと。四角いはずの織物が丸くなることで、モノにもコトにもいろんな方向性が生まれるんじゃないかと。

織物はタテ糸にヨコ糸を織り込んで作るのですが、通常は布の上下の始末が必要だったり、タテ糸の最初と最後の部分がムダになったりするのですが、それがもったいないしスマートじゃないなと常々思っていて、丸くすればそれも解消できるんじゃないかと。そんなことを思いつつ、試行錯誤を繰り返してできたのが「まるイロ」です。

編み棒があればどこでもできる編み物と違って、織物は織機をつかうのでどこでも手軽にというわけにはいかないのですが、これは手の中に収まるサイズなので、どこでも気軽にできます。しかも、“編み”ではつくれない“織り”ならではの表情が楽しめるようになっています。材料も、紐状になるものならなんでも使えます。私自身、普段からもったいないなと思って、キレイな色の紐やビニール袋なんかを捨てられないんですけど、そういうものも素敵な材料になります。

井上唯さん

アーティストの井上さん PHOTO:427FOTO



「まるイロ」テンプレート

「MARUIRO](プレート) 1,050円

 


みんなで作る大きな「まるイロ」

大まるイロ制作の模様

PHOTO:427FOTO

象の鼻テラスにどーんと敷かれ、訪れる人の目を引く、丸くて大きな織物。これも井上さんが中心となり、みんなの力を合わせて作ったものなのだそうです。

プロダクトとして完成した小さい「まるイロ」で仕組み自体が作れたので、円形状にタテ糸を引っかけるところをつくれれば、大きいものも作れますよと言ったら、じゃやろうか、ということになり、2013年の「ファクトリー」で大きな「まるイロ」をみんなで作るワークショップを行いました。公園の遊具みたいな感じで、みんなで全身を使って遊べる感じが楽しかったですね。

私1人で考えてるだけだったら、大きい「まるイロ」をやろうとは思わなかったかもしれません。みんなで意見を出し合いつつ、自分が想定していなかったところに着地したり出来るのが、スローレーベルで仕事をする楽しさの一つかもしれません。

 


藍染めを作る障碍者とのコラボ

まるイロで関係の深まった井上さんとスローレーベル。新たなプロジェクトにも取り組み、12月25日には新プロダクトのお披露目もあるそうです。

進行中の徳島発のスローレーベルプロダクトを制作するプロジェクトに参加しています。藍染めを作る障碍者施設とコラボレーションしているのですが、障碍者の方たちが作っているものの中には、ものすごく素敵だったり、衝撃的に面白かったりと、理屈抜きでいいな!と思う表現が多くて。また、作業するところを見ていると、それぞれの人にその人なりのリズムのようなものがあって。私たちはついつい頭でコンセプトとか考えながら手を動かしてしまいますけど、きっと自分の身体のリズムや欲求に純粋であるからこそ生みだせるものなのかもしれません。そうしたところは圧倒的にかなわないなと思うと同時に、とてもいい刺激になっています。

逆に商品を開発していくうえで盲点だったのは、当然、施設の担当の方に間にはいっていただくので、どうしても常識というフィルターが入ってしまうということ。こちらが面白いなと思った個性を、なるべくダイレクトに引き出すにはどうしたらいいかということは、今後関わらせていただくときの課題かもしれません。

 


今後、スローレーベルに期待するこ

アーティストとしての目線から、スローレーベルを理解し関わる井上さんが、スローレーベルに望むこととは?

以前に、瀬戸内海の島や徳島の集落などへ滞在制作で訪れている時から、おじいちゃんやおばあちゃんたちが持っている「知恵」みたいなものに興味があって、そういうことと作品制作をつなげていけたら面白いなと思っていまして。味噌作りってたいへんだけど、みんなで集まってワイワイやりながらやれば楽しいし、技も受け継がれていく…そんなみんなで何かをしながら知恵と技を共有していく場が作れるんじゃないかと。そういうこともスローレーベルだったらユニークで面白い提示の仕方で実現できるんじゃないかなと思っています。

まるイロづくりの模様

PHOTO:427FOTO

 

井上唯さん

●Profile アーティスト井上唯さん

愛知県出身。愛知教育大学造形文化コース卒業。金沢美術工芸大学大学院染織コース修了。”織” から始まった興味が、次第に空間へと広がり、特定の場に対してモノをつくることにおもしろさを感じるようになる。また移動生活を楽しむ一方で、ひとつの土地に根差してしかできないことがあることに気づき、湖と山と川に惹かれ滋賀県に移り住む。生活のなかでやりたいことと、制作とが繋がってくるとおもしろいなと思っている。

 

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