春爛漫~桜とアート三昧 in 横浜

Posted : 2016.03.31
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上海出身のはまっ子、張 穎(チャン・イン)さんによる桜とアートのレポートです。読み応え、たっぷり♪

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日本人は桜が大好きで、桜にちなんだ地名はもちろん、駅名もたくさんあります。ちょっと調べてみたら、桜駅、桜井駅、桜岡駅、桜ヶ丘駅、桜川駅、桜坂駅、桜上水駅、桜台駅、桜町駅、若桜駅…はまっ子にとって、最も親しみのある「桜」の駅といえば、「桜木町駅」です♪

「桜木町」という地名は、明治4年に開作した「桜木川」に沿っているため名付けられたものです。「桜木川」はのちに「木」をとって「桜川」と改名され、その後、埋め立てられました。

明治5(1872)年、日本の最初の鉄道は新橋と横浜間に敷設されました。その初代横浜駅は今の桜木町駅にありました。1915年、鉄道(東海道線)の延伸で、横浜駅という名称が北に移動したので、初代横浜駅が桜木町駅に改称し、昨年、100歳を迎えました。

それでは、桜木町駅からスタートして、海・山・川の桜をめぐりながら、アート横浜を楽しみましょう♪

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海・桜&横浜美術館

桜木町駅からランドマークタワーへ、動く歩道でゆっくり進むと、右側に「帆船日本丸」の姿が見えます。今年初めてのすべての帆をひろげる総帆展帆は4月10日に開催する予定で、「太平洋の白鳥」の雄姿は見逃しなし。もう少し進むと、さくら色に彩られ、なが~い桜の道が続いています。それは、500メートルも続く「さくら通り」です。階段を下りて、海風を感じながら、桜のトンネルをくぐると、ある巨大な銀色のぐにゃぐにゃした不思議なオブジェに出会います。それは最上壽之氏の作品「モクモク ワクワク ヨコハマ ヨーヨー 」、風の通り道,流れを意識し、「たなびく雲」をイメージして作られ、ビルの谷間に強いビル風が吹くことが予想されたことから、その風の緩和という機能も備えているそうです。

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1989年11月3日文化の日に開館した横浜美術館はそのモニュメントの左奥にあります。丹下健三都市建設設計事務所に設計され、迫力のあるシンメトリーな外観と、吹き抜けの開放的なグランドギャラリーがとても印象的で、7つの展示室のほか、10万冊を超える蔵書がある美術情報センター、多彩なワークショップを行うアトリエなども揃う、日本国内でも有数の規模を誇る美術館です。 国際的な港町、横浜にふさわしい美術館として、1859年開港以降の近現代美術を幅広く鑑賞できるほか、年間を通じて、約1万点の所蔵品からテーマごとに展示を行うコレクション展、多彩な企画展は非常に見応えがあります。

撮影:張穎

撮影:張穎

 
村上隆とスーパーフラット・コレクション 撮影:平尾健太郎

村上隆とスーパーフラット・コレクション 撮影:平尾健太郎

 

今開催中の企画展(4月3日まで)「村上隆のスーパーフラット・コレクション―蕭白、魯山人からキーファーまで―」は2015年10月から2016年3月まで、森美術館で開催していた個展「村上隆の五百羅漢図展」と違って、コレクターとしての村上隆のもうひとつの顔を知る絶好のチャンスです。

1962年生まれの村上隆は、現代日本を代表するアーティストで、東京藝術大学にて日本画初の博士号を取得。現代美術と日本の伝統絵画、ハイカルチャーとポップカルチャー、東洋と西洋を交差させた極めて完成度の高い一連の作品で世界的に評価され、海外の著名な美術館で数々の個展を開催してきました。

スーパーフラットとは日本の消費文化独特の浅はかな空虚感をはじめ、日本における様々な時代の様々な種類の平面絵画、アニメーション、ポップカルチャー、ファインアート、キャラクター文化といったものを示す時に村上が使用する言葉です。

村上隆はアーティストとしての精力的な創作の一方で、キュレーター、ギャラリスト、プロデューサーなど多岐にわたる活動も展開しています。特に、近年、独自の眼と美意識で国内外の様々な美術品を積極的に蒐集し続けています。約5,000点以上、現在も増え続けている村上隆の美術コレクションから、既存の基準を超えて、独自の美意識と価値観で選ばれた約1,100点を、地域や流派といった既存のカテゴリーをとりはらい、感覚的あるいは機械的に並列するこの展示は、芸術や表現の豊かさ、不思議さを人々に感じさせながら、「芸術とは何か?」とも問いかけをしてくれます。

無料ゾーンであるエントランスホールは「彫刻の庭」に化し、入り口から入ったとたん、巨大なガラス・ケースに入った飛行機の残骸等を使って制作されたドイツ人アーティストであるアンゼルム・キーファーの作品《メルカバ》などに肝を抜かれました。そして、一目で中国人アーティスト張洹(ジャン・ホァン)の代表作である牛皮でできた巨大な古代生物のような彫刻を発見しました。

 2階の展示室に入ると、雰囲気が一変して、北大路魯山人旧蔵の陶製瀬戸狛犬「阿」「吽」に迎えられ、古代へのタイムスリップが始まりました。中国漢時代人物像俑、一休宗純の書「初祖菩提麿大師」、日本美術の奇想の系譜に位置付けられる曾我蕭白、白隠慧鶴らの絵画、ヨーロッパの雑器…美の根源を探索する村上隆の眼差しはこの「日本・用・美」でたどることができます。

「スタディルーム&ファクトリー」で、デイヴィッド・シュリグリー《ヌードモデル》をみた瞬間、思わずニヤッとしました。デッサン教室のような空間で、真ん中に裸のモデルが立ち、その足元にバケツが置かれています。おしっこ本当にでるの?いつでるの?という変な緊張感を持ちながら、カンヴァス前に座って、デッサンをしてみてください。ただ、出来上がったデッサンはお持ち帰りできません。それは、部屋の壁面に展示されます。

次は「村上隆の脳内世界」へ。グラフィティ絵画からアンティーク家具、陶製のビールジョッキやペタンクの玉まで。これはガラクタではないか?あれは本当に宝物?え、これは何?と「へ~ほ~へ~ほ~」と不思議ながら、「玉石混交」かつ「ノーロジック」な村上隆の脳内世界を体験していきます。

次のセクション「1950~2015」は、いつも横浜美術館コレクション展で使用される展示室の一部まで村上コレクションが展示されています。村上隆コレクション展はこれで終了だと思って入ったら、なんとまだまだ大量にあります!

アンディ・ウォーホル、荒木経惟、篠山紀信、ホルスト・ヤンセン、李禹煥、大竹伸朗、李尤松、フランク・ベンソン…「1950-2015」という時間枠は1962年生まれの村上隆の生きてきた時間でもあるので、これらの作品を通じ、村上隆の幼少時代の原体験や若き日に受けた影響だけでなく、既存の美術の流れとは異なる村上独自の美術史の文脈についても考えます。

彫刻の庭 キーファー、張洹 撮影:張穎

彫刻の庭 キーファー、張洹 撮影:張穎

 

 
日本・用・美 魯山人や一休宗純 撮影:張穎

日本・用・美 魯山人や一休宗純 撮影:張穎

 
スタディルーム&ファクトリー デイヴィッド・シュリグリー《ヌードモデル》2012年 David Shrigley, Life Model, 2012 Courtesy the artist, Anton Kern Gallery, New York and Stephen Friedman Gallery, London 撮影:張穎

スタディルーム&ファクトリー
デイヴィッド・シュリグリー《ヌードモデル》2012年
David Shrigley, Life Model, 2012 Courtesy the artist, Anton Kern Gallery, New York and Stephen Friedman Gallery, London 撮影:張穎

 

1950-2015 奈良美智など  撮影:張穎

1950-2015 奈良美智など 撮影:張穎

 

「神話とヌード」等の横浜美術館コレクション展を含めて全部見終わると、目の保養はもちろん、このアートの嵐は脳への刺激も絶大で、大量なエネルギーが吸い取られ、お腹がすっかりペコペコになるに違いないです。そんな時、おすすめするのはミュージアムショップに隣接する「カフェ小倉山」♪展覧会に合わせたオリジナルメニューも用意されたりします。もっとしっかり味覚の宴を堪能したいならば、美術館内のおいしいフランチレストラン「ブラッスリー・ティーズ・ミュゼ(BRASSERIE T’s Musée)」も素敵なチョイスです。

「村上隆のスーパーフラット・コレクション」展は間もなく終了しますが、これからの企画展は「富士ゼロックス版画コレクション×横浜美術館 複製技術と美術家たち-ピカソからウォーホルまで」(2016年 4月23日~6月5日)になります。写真印刷や映像などの「複製技術」が高度に発達・普及し、誰もが複製を通して美術を楽しむことができる時代に、ピカソをはじめ20世紀の欧米を中心とする美術家たちが、どのような芸術のビジョンをもって作品をつくっていったのかを、約400点を5つの章で紹介する展示です。2016年度第1期の横浜美術館コレクション展と合わせてぜひ見に来てください。

掃部山・桜&能楽堂

通常、横浜美術館で見学した後、そのままみなとみらいエリア、山下公園のほうへ進みますが、今回は知る人ぞ知るコースを一緒に歩きましょう。

美術館を出た後、桜木町駅のほうへ進み、ちょっと急な紅葉坂を登った神奈川県立音楽堂の裏手にお花見の穴場~掃部山公園があります。

掃部山はかつて「鉄道山」と呼ばれ、明治初期には鉄道建設のために来日した外国人技師たちの官舎が建てられていたほか、地下から湧く水を蒸気機関車の給水に利用していました。その後、横浜開港に貢献した、「安政の大獄」や「桜田門外の変」などで有名な人物である井伊直弼の記念碑が建てられ、のちに直弼の官位である「掃部頭」から掃部山と呼ばれるようになりました。

こじんまりとした公園内には約200本の桜が植えられ、ランドマークタワーなどみなとみらいを一望できます。お花見お弁当を食べたり、読書をしたり、春うららのうたた寝をしたりできる、静かで絶好のスポットです♪

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横浜能楽堂掃部山公園の隣にあります。能は日本の古典芸能で、敷居が高いというイメージがありますが、本舞台の利用のない時に限り、本舞台(2階席から)と能楽の装束や楽器などを展示する2階の展示廊を誰でも自由に見学できます。ガイド付きで、約一時間の無料見学ツアーは月に1回行われます。この4月は14日(木)、5月は12日(木)、予約不要で10:00に正面入口ロビーに集合すればよいです。

撮影:張穎

撮影:張穎

 

まず能楽堂に入ると感じるのが「ヒノキの香り」。開館から20年が経つ今もさわやかな香りが漂い思わず深呼吸したくなります。能舞台は通常、屋根や舞台、柱など、すべてヒノキでできていますが、この舞台には柱などに樅が使用されています。ヒノキは最高級の木材で、癒し効果があると言われています。

そして、室内なのに、なぜ屋根がついているのと誰もが疑問に思うでしょう。昔の能舞台はすべて屋外に設置されていました。今でも日本の神社、寺院などを訪ねる時、見かけたりすることができます。「能楽堂」は、1881年以降、つまり近代になって生まれた劇場です。能舞台を昔のままで、屋根のついた形で、別棟であった観客席や隔てとなっていた白州ともども、入れ子のようにすっぽりと建物の中に取り込みました。

では、本舞台を見てみましょう。この本舞台は1875年東京・根岸の旧加賀藩主・前田斉泰邸に建てられ、後に東京・染井の松平頼寿邸に移築されて、昭和40年まで広く利用されてきました。能楽堂の中にある能舞台としては、全国で一番古いものです。

能舞台の背景として使われている板は「鏡板」といいます。鏡板には、通常松の木が一本描かれており、これは、春日大社の「影向の松」(神仏の依代となる松)をうつしたものといわれています。この舞台の鏡板には松に加え、梅が描かれており、非常に珍しいもので、前田家の祖・菅原道真の梅にちなんだとされています。鏡板の手入れはされていますが、塗り直したりはしません。時代を重ね、変化する枯れ味は素敵ですから。

能と狂言は、古くはひとつの芸能で「猿楽」といわれていました。約600年前の室町時代に歌舞を中心とした能とセリフ劇である狂言に分かれ、明治時代以降に合わせて「能楽」という言葉が定着しました。

お能は音楽やダンスが入ることから「日本のミュージカル」ともいわれます。今のような姿になったのは江戸時代<1603-1867>中期。将軍や大名をはじめとする武士たちの威信をかけて磨き抜かれた能は、武家の精神と美意識の結晶といえます。
せっかくなので、建築物の見学だけではなく、公演日を選んで本物の能・狂言を体験してみたらいかがでしょうか。難しいから聞いても分からないというかもしれませんが、意味よりはまず感じてみましょう。音、声、装束、面、雰囲気…。

毎月第2日曜日は横浜能楽堂の「狂言の日」です。初心者でも気軽に能楽堂に足を運んでもらえるようチケットは2000円、解説付きの狂言2曲という公演です。この4月は通常の第2日曜の10日(14:00~15:45 2,000円)に開催。また、既に売り切れていますが、4月29日(金・祝)「横浜狂言堂」100回記念横浜能楽堂特別普及公演-狂言道(昼の部13:00~14:45、夕の部16:00~17:15 各部2,000円)が開催されいます。

大岡川・桜&黄金町アートエリア

横浜能楽堂の近くには入場無料の野毛山動物園もありますが、今回は割愛して、川・桜を追っていきましょう。

坂道を下っていくと、京急線の「日ノ出町」駅を見かけたら、大岡川・黄金町アートエリアはすぐそこです。約3キロのプロムナード沿いに約500本の桜に約2500個のぼんぼりが灯り、淡いピンク色の桜の美しさが圧巻です。今年の「大岡川桜まつり」は4月2、3日(土日)、模擬店やヨーヨー、アートブース、ステージイベント等、さまざまな催しものがあります。しかも、陸からの花見だけではなく、水上花見もできます。4月30日まで、日ノ出桟橋からは動力船に乗船するクルージング、桜桟橋からはSUPクルーズ、手漕ぎボート、シーカヤック等を体験できる「春爛漫・横浜クルーズ」もあります。コースやボートによって料金は違うが、約2,000円~4,500円です。

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撮影:張穎

撮影:張穎

 

第24回「大岡川桜まつり」
メインイベント: 4月2日(土)~3日(日)
ボンボリ点灯: 3月19日(土)~4月10日(日) 17:00~24:00
 
「春爛漫・横浜クルーズ」
3月12日(土)~4月30日(土)

大岡川沿いに玩具の問屋さん、鰹節屋さん、そば屋さん等レトロなお店がぽつぽつあります。そして、日常の空間を舞台に、アートによる町の再生、アートが溶け込む町~「黄金町エリア」があります。この地域密着型のアートエリアは線路下を活用し、昔の建物をアートスペースに変身させたりしています。

2008年から毎秋、国内外のアーティスト、キュレーター、建築家を招聘し、「黄金町バザール」というアートフェスティバルの開催をきっかけに、若手クリエーターの実験の場として街を開放し、地域コミュニティに新たな可能性をどんどん生み出しています。

2009年よりアーティスト・イン・レジデンス(AIR)プログラムを実施し、常時約50組のアーティストが拠点を構え、活動を行っています。そこに行けば、いろんな国からのアーティストと会話を交わし、アート作品の制作プロセスを身近で見ることも、実際の作品制作に参加することもできます。

いくつかのイベントや施設をご紹介します。

のきさきアートフェアat桜まつり
日程:4/2(土)、4/3(日)
毎月恒例のアートと食のイベント「のきさきアートフェア」は、4月は「大岡川桜まつり」にあわせて拡大版になります。こどもも大人も楽しめるアートの体験ブース、ワークショップ、日ノ出アートカフェ、アーティストの個展等、アートとたっぷり触れ合えます。

「額縁の中を愛おしく」鈴木紗也香の個展
会期:4月2日(土)〜4月19日(日)※月曜休 
時間:11:00〜19:00 
場所:高架下スタジオSite-Aギャラリー

黄金町アートブックバザール
美術書を専門とする古本屋さんです。アート、デザイン、建築、工芸、ファッション、写真集、展覧会図録、絵本、ポスター、ポストカード、アーティスト作品などを販売しています。

桜祭り期間中、模擬店等がたくさんありますので、グルメに困らないだろうと思います。普段なら、中国語対応もでき、地元の人に大人気の大衆居酒屋「和泉屋」はおすすめです。リーズナブルな値段でボリューム満点。おすすめは絶品唐揚げとお刺身等の海鮮料理です。

「和泉屋」
住所:神奈川県横浜市中区初音町3-62 TEL:045-231-4314
アクセス:黄金町駅から徒歩5分
営業時間:[月~金] 11:30~14:00、17:00~23:00、
[土] 17:00~23:00、[日] 17:00~21:00
予算:ランチ定食約1000円、ディナー約3,000円

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一日で、海・山・川の桜に、美術館・能楽堂・アーティストの制作プロセス・展示を身近で見られるアートエリアを回り、欲張りですが、アート好き・自然好きなら、きっと楽しんでいただけると思います。ちなみに、京急「日ノ出町・黄金町」から、大岡川・黄金町アートエリア→掃部山&能楽堂→海&横浜美術館という逆コースもおすすめです♪

移動時間の目安
・桜木町駅→横浜美術館 約10分
・横浜美術館→能楽堂  約13分
・能楽堂→黄金町        約15分


張穎プロフィール用写真【案内人プロフィール】
張 穎(チャン・イン)@Ying的絶対視感 
「好奇心」と「絶対視感」で毎日を楽しむ上海出身のはまっ子(^^♪美術館・博物館めぐり、舞台鑑賞、各地へ旅をしながら、日中翻訳・通訳、ライター・フォトグラファー、コーディネーター、MC等の仕事も満喫(^^♪