みなとみらいの風景に添えられた大きなハスの花。チェ・ジョンファの代表作が日本丸メモリアルパークに。

Posted : 2017.10.23
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日本丸メモリアルパークの芝生広場に、8メートルほどのハスの花が咲いた。国際的に活躍するアーティスト、チェ・ジョンファさんの代表作《ブレシング・フラワー》が10月15日より同広場内とYCC ヨコハマ創造都市センターの2カ所で展示されている。10月16日に開催されたアーティストトークでは、YCCのディレクター・長田哲征(ながた・てつゆき)をモデレーターに、過去の作品紹介とともに制作への姿勢やその根幹にある思いなどが語られた。

《ブレシング・フラワー》(日本丸メモリアルパーク芝生広場、横浜、2017)

 

日常の風景、まちの人たちが制作の源

チェ・ジョンファさんは、まちに溢れるイメージや韓国の文化をモチーフに、身近な素材やプラスチック製品などを使い、ダイナミックでカラフルな作品で注目を集める。世界各地で展示の実績を持つ韓国を代表するアーティストだが、日本でも全国各地で多数の展覧会やプロジェクトに参加している。横浜とも縁が深く、みなとみらい臨港パークにある《フルーツツリー》(2001)や、上大岡の《仮想の庭園》(1997)はともに15年以上前に設置され、横浜の地で多くの人に親しまれてきた。

《フラワー・ホース》(十和田市現代美術館、青森、2008)

《フルーツツリー》(みなとみらい臨港パーク、横浜、2001)

 

 

大学では油絵を専攻していたというジョンファさん。大学卒業後、絵は描かずインテリア会社を立ち上げた。やがてインテリア・デザインや舞台のアート・ディレクションなどを手がける傍ら、インスタレーション作品を発表し始める。絵を描くのをやめたのは、道端に放置されていた椅子、トラックの荷台に積まれた荷物、市場で売られる品々など、何気ない韓国の風景自体が美術作品に見えたから、という。
「大学の外と中では全く世界が違うように見えました。韓国のマーケットにいるおばさんたちが私の『先生』なのです」

ジョンファさんが韓国のまちでみかけ、影響を受けたという椅子。

 

 

世界中を旅する、“息をする花”

今回展示された2つの《ブレシング・フラワー》はハスがモチーフだが、自身は仏教徒ではない。
「ジョンファさんは自身の作品についてあまり説明しないですよね」と旧来の仲でもある長田。「私の作品の場合、実物があれば説明はいらないと思っています。見る人がそれぞれのことを感じてほしいです」とジョンファさん。
《ブレシング・フラワー》はこれまで、ヴェネチア・ビエンナーレ、キエフ国際現代美術ビエンナーレのほか、香港、韓国、フランス、ボストン、サンフランシスコ、ローマ、福岡など世界各国で展示されてきた。
「今回展示している作品も世界中を旅してきているので劣化もしています。ここが最終地になるなら、訪れた人の願いを書いてもらい、新たな作品になるといいと思っています」
これは仏教の考え方、「輪廻転生」でもある。

《ブレシング・フラワー》(YCC ヨコハマ創造都市センター、横浜、2017)

 

様々な作品を手がけるジョンファさんだが、なかでも近年小豆島で手がけた作品《太陽の贈り物》(2013)は自身でも気に入っているという。オリーブの葉を王冠の形に仕立てた彫刻で、葉の1枚1枚に、地元の子供たちが書いた夢が刻まれている。
「ここで私のつくったものは『物』ではありません。みんなの記憶をただ形にしたのです」

《太陽の贈り物》(「瀬戸内国際芸術祭2013」、香川、2013)

 

自分の作品も「みんなのもの」という考え方が彼の制作の根幹にある。トークの最後に制作の原点であり、終点でもあるというある言葉を紹介した。
「環境とは“私以外のすべてのもの”。そして宇宙とは“私を含む全てのもの”。環境と宇宙とのたった一つの違いは“私”。観察し、行動し、考え、愛し、楽しむ、私」
アメリカの思想家であり建築家、デザイナーでもあるバックミンスター・フラーの言葉だ。メールや電話が思考の妨げになってしまうため、スマホもパソコンも持たないというジョンファさん。だからといって気難しい印象はなく、おおらかで優しそうな笑顔で話していた。
花びらが息をするようにゆっくりと動く《ブレシング・フラワー》の展示は11月5日まで。日本丸メモリアルパークの作品はライトアップも。

(文:佐藤恵美)

 

【プロフィール】

チェ・ジョンファ
CHOI JEONGHWA

1961年、韓国生まれ。ソウル在住。韓国を代表する現代アーティスト。アート・ディレクションやインテリア・デザインも手がけるなど多様な分野で国際的に活躍するチェは、日常の中から作品の着想を得て、生活や文化と密接な関係があるモチーフやまちに溢れるイメージを用いながら、ダイナミックで非日常的な作品をつくりあげ、普段は気づかない、物事の別の側面をユーモラスに浮かび上がらせる。アジア、ヨーロッパ、アメリカでの個展、グループ展参加多数。
http://choijeonghwa.com

 

 

【展示情報】

Creative Waterway – 川と海でつなぐ創造の拠点
YCC Temporary チェ・ジョンファ

会期:2017年10月15日(日)〜11月5日(日)
時間
日本丸メモリアルパーク=期間中継続展示
YCC ヨコハマ創造都市センター=11:00-18:00
会場
日本丸メモリアルパーク 芝生広場内
YCC ヨコハマ創造都市センター(館内もしくはYCC周辺屋外)
※日本丸メモリアルパークでの展示について悪天候時は中断する場合がございます。
※YCCでの展示について、天候および施設利用状況に応じて展示を中断する場合がございます。
入場:無料

http://yokohamacc.org/yct/choijeonghwa/