ヨコハマトリエンナーレ2014イベント、BUKATSUDOで開催

Posted : 2014.09.12
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「まちにひろがるトリエンナーレ」を掲げるヨコハマトリエンナーレ2014(以下、ヨコトリ)。みなとみらいの新しいシェアスペース「BUKATSUDO」で出展作家マイケル・ラコウィッツのトークと料理のイベントが行われた。歴史や記憶、場のリサーチから作品をつくるラコウィッツの創作プロセスをじっくりひもとく、2日間の連続プログラムをレポート。
ディナー型パフォーマンス「ダール・アル=スルフ(和平の家)―あなたは消滅しかけている言語 を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」の様子  撮影:加藤健

ディナー型パフォーマンス「ダール・アル=スルフ(和平の家)―あなたは消滅しかけている言語 を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」の様子 撮影:加藤健

 

港町・横浜を象徴する造船ドックが、当時の姿のまま残る「ドックヤードガーデン」。その地下1階にこの7月プレ・オープンしたのが「BUKATSUDO」だ。みなとみらい駅から徒歩3分の好立地に、ワークラウンジやスタジオ、ホール、キッチンスペースを備える、いま注目のシェアスペース。去る8月27日・28日の2日間にわたり、ヨコハマトリエンナーレ2014の出展作家でイラク=ユダヤ系の出自を持つアーティスト、マイケル・ラコウィッツのトーク&上映会とディナー型パフォーマンスが「BUKATSUDO」のコラボレーションによって実現した。


歴史や記憶、場のリサーチから作品をつくる――マイケル・ラコウィッツ

マイケル・ラコウィッツは、イラク人の母とアメリカ人の父を持つ、アメリカ生まれのアーティストだ。自らのルーツに関わる中東とアメリカの関係に、作品を通じて言及してきた。8月27日に「BUKATSUDO」のホールで開かれたアーティスト・トークでは、ラコウィッツの作品の中でも今回のヨコトリのテーマにリンクするプロジェクトが紹介された。
そのひとつは2003年のアメリカによるイラク侵攻の混乱に際し、破壊され略奪されたイラク国立博物館の美術品を、リサーチし復元するプロジェクトだ。当時の館長との対話をはじめ、臨場感あふれるエピソードの数々に観客が引き込まれていく――。ラコウィッツが制作した美術品のレプリカは、中東の新聞紙や食料品のパッケージや包装紙を素材として復元しているのだそう。「目に見える中東の素材で、失われた文化を作り直している」とラコウィッツは語る。

現在、横浜美術館に展示されているラコウィッツの作品は大きく2つある。ひとつは、タリバンが破壊したアフガニスタンの古代遺跡、バーミヤンの石仏にまつわるワークショップを記録したドキュメント映像。それは破壊された石仏を作り直すのではなく、現地の人たちが復元しようと思った時に復元できる「技術」を伝えるワークショップだった。未来を見据えた構想と、その意義の深さに驚いた。もうひとつは1941年に連合国軍によって爆撃され、失われたカッセルの図書館の蔵書のうち数冊を、バーミヤンの石で復元した作品。ラコウィッツには、爆撃によって燃え朽ちた本が、石化してしまったように見えたという。そこから石を素材に本を復元しようという発想が生まれた。

「『モノ』そのものがトラウマを体現していることにショックを受けたんです。広島市現代美術館に招へいして頂いたことがありますが、その機会に広島平和記念資料館を訪問した際にも同じように、『モノ』そのものが記憶を持っていることを感じました。」(マイケル・ラコウィッツ)

自らのプロジェクトについて語るラコウィッツ。燃えて石のように見える本。

自らのプロジェクトについて語るラコウィッツ。燃えて石のように見える本。

 

失われゆく文化を伝える――イラク=ユダヤ料理のレシピ

特定の場にまつわる歴史や記憶、コミュニティと関わりを持ちながらプロジェクトを展開しているラコウィッツ。「料理」に着目したプロジェクトもそのひとつだ。8月28日には「BUKATSUDO」のキッチンスタジオで、イラク=ユダヤの料理を振る舞うディナー型パフォーマンス「ダール・アル=スルフ(和平の家)―あなたは消滅しかけている言語 を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」が開かれた。イラク系ユダヤ人であるラコウィッツの祖母のレシピを再現し、忘れられつつある料理を提供するプロジェクト。イラクにおけるユダヤ人コミュニティは消滅し、現在はこのレシピも絶滅しつつあるという。「ダール・アル=スルフ」には、ラコウィッツの和平への思いが込められている。

ラコウィッツによる料理の説明に、耳を傾ける参加者たち。ディナー型パフォーマンス「ダール・アル=スルフ(和平の家)―あなたは消滅しかけている言語 を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」の様子  撮影:加藤健

ラコウィッツによる料理の説明に、耳を傾ける参加者たち。ディナー型パフォーマンス「ダール・アル=スルフ(和平の家)―あなたは消滅しかけている言語 を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」の様子 撮影:加藤健

 

この日のメニューは、ラコウィッツが食べて育ったというイラク=ユダヤ料理の4品。テーマは「Umami(旨み)」。チキンとトマトライスの「Tbeet」や、マンゴーのサラダ「Amba Salad」など、この日のために結成された“ヨコトリスタッフ料理部”とラコウィッツが朝から腕を振るった手料理がふるまわれた! 1種類ずつ大皿に盛り付けて提供し、そこから取り分けて食べるスタイルだ。スパイスの効いたこれらのお料理、一度食べたら癖になりそうな美味しさ。でももちろん、ただ美味しかっただけじゃない。ラコウィッツとテーブルを囲んだ参加者たちは、ディナーを味わいながらその家族の歴史にも思いを巡らせる時間を共有したにちがいない。

ディナー型パフォーマンス「ダール・アル=スルフ(和平の家)―あなたは消滅しかけている言語 を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」の様子  撮影:加藤健

1種類ずつ大皿に盛り付けて提供されたイラク=ユダヤ料理、スパイスが効いた異国の味。ディナー型パフォーマンス「ダール・アル=スルフ(和平の家)―あなたは消滅しかけている言語 を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」の様子 撮影:加藤健

 

写真提供:横浜トリエンナーレ組織委員会


ヨコハマトリエンナーレ2014
アーティスト・プロジェクト
マイケル・ラコウィッツ

トーク&上映会
8月27日(水)18:30~20:00

《ディナー「ダール・アル=スルフ(和平の 家)あなたは消滅しかけている言語を亡霊の出す皿で食べている:和平の家 よりイラク=ユダヤ料理を提供する」》
8月28日(木)19:00~21:00

会場:BUKATSUDO(ランドマークプラザB1F)
共催:BUKATSUDO
協力:三菱地所株式会社