師:岡倉天心、そして紫紅、未醒、芋銭、溪仙
彼らとの出会いが巨匠「大観」を生んだ
今回の展覧会は、大観が筆法や色彩の工夫、構図の妙、主題の選択やその新たな解釈など、画題、構成、技法とさまざまな挑戦をしながら、モダンで伸びやかな作品を生み出した大正期に焦点を当てている。加えて、大観がそれらを生み出した背景にある、個性豊かな画家「良き友」たちとの交流に着目している点が興味深い。
大観は良き師・岡倉天心(おかくらてんしん)から薫陶をうけ、天心没後、大正期に共に歩んだ良き友4人、今村紫紅(いまむらしこう)、小杉未醒(こすぎみせい)・放菴(ほうあん)、小川芋銭(おがわうせん)、冨田溪仙(とみたけいせん)との交流から、作風を飛躍的に発展させた。
天心は横浜生まれの思想家で、大観は天心が創設に関わった東京美術学校に第一期生として入学。天心が同校長職を追われた際には、師の目指す理想に共鳴し、日本美術院の創立に参画、新たな絵画の創出に邁進した。
大正2年に天心が没すると、大観は日本美術院再興の先頭に立つ。制作においては「朦朧体(もうろうたい)」を脱し、東洋趣味の水墨表現、大胆な色彩表現や構図、形態のデフォルメなどに取り組み、のびやかな明るさをもつ作品を生み出した。
その背景には、革新的な描法や構図を示した紫紅、線の片側をぼかして物のボリューム感を出す「片ぼかし」の技法をもたらした未醒(放菴)、陽気な気分や飄逸(ひょういつ)さをたたえて特有の自然観を表す芋銭、南画的傾向と装飾性を融合させた溪仙、これら個性豊かな画家たちとの交流があったのだ。なお、4人は制作だけでなく、一緒に旅行し、酒を酌み交わし、語らう仲間だったという。
今回は彼ら「良き師」「良き友」との関わりを読みときながら、前・後期合わせて約140件の作品で明治から昭和初期までの大観芸術の魅力に迫る。
また、音声ガイドのナビゲーターを務めているのは俳優の竹中直人さん。映画『天心』(11月16日より全国公開)で主役の岡倉天心を演じている。大観が座右の銘として天心の言葉など、「天心」竹中さんならではの語りが聞ける。
会期は11月24日(日)までなので、お見逃しなく。
<横山大観展 ― 良き師、良き友>
会期 2013年10月5日(土)~11月24日(日)
会場 横浜美術館 〒220-0012 横浜市西区みなとみらい3-4-1
開館時間 10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日 木曜日
お問い合わせ Tel.03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://www.taikan2013.jp
主催 横浜美術館、朝日新聞社、神奈川新聞社、tvk(テレビ神奈川) 後援 横浜市、NHK横浜放送局
協賛 大伸社、あいおいニッセイ同和損害保険
協力 公益財団法人 横山大観記念館、國華社、みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン、FMヨコハマ、首都高速道路株式会社