「横浜音祭り2019」多彩に開催中!英国連携プログラム『Anno』は、200年の時を超えた新しい『四季』の誕生

Posted : 2019.10.11
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「横浜音祭り2019」が開幕。多彩なプログラムが横浜市内のあちらこちらで連日にぎやかに開催されている。そのうち横浜にゆかりの深い英国との連携プログラムの様子を紹介しよう。

(c)Yoichi Tsukada

 

スコティッシュ・アンサンブル&アンナ・メレディス『Anno』を観る

「横浜音祭り2019」があちらこちらで開催される中、現代音楽とバロック音楽が溶け合い、映像と音が響き合うユニークな演奏会が横浜赤レンガ倉庫1号館で開かれた。初来日した英国を代表する弦楽アンサンブルのスコティッシュ・アンサンブルが奏でたのは『Anno』という日本初演の作品。

会場に入ると6面の大スクリーンが180度に広がっている。バロック音楽で使われる鍵盤楽器、チェンバロがスクリーン前の中央に据えられている。その隣にはコンピュータと電子キーボードが載ったテーブルが並んでいる。チェンバロ奏者とコントラバス奏者が椅子に着くと、コンピュータの前にひとりの女性が座った。この人こそ『Anno』の作曲者、アンナ・メレディス(以下、メレディス)さんだ。

(c)Yoichi Tsukada

 

照明が落とされた観客席の後方からヴァイオリンとヴィオラ奏者たちが静かに現れ、iPadを載せた譜面台とともに横一列に並んで演奏が始まった。スクリーンにはモノクロの映像が投影され、ノイズ感のある電子音と弦楽アンサンブルの響きが共鳴した。メレディスさんの作曲した短い楽曲の次に聞こえてきたのは、耳馴染みのあるメロディ、そう、バロック音楽で最も有名なヴァイオリン協奏曲、ヴィヴァルディの『四季』の「春」のメロディだ。気がつくとスクリーンにはパステル調の色彩でさまざまな形が踊りだしている。

(c)Yoichi Tsukada

 

メレディスさんが作曲した楽曲と、ヴィヴァルディの『四季』の楽曲とが、ほぼ交互に演奏されながらコンサートは進んだ。そこにさらに鳥のさえずりや雨の音などのサウンドエフェクトも加わり、まさに四季の自然が感じ取れる。200年前のヴィヴァルディの『四季』の豊かな弦楽合奏の音楽に、メレディスさんの独創的で現代的な音色が絡み合い、織り込まれていく。

音楽と呼応して、時に水墨画のような、時に色鮮やかなパターンのような映像に包まれる。映像はメレディスさんの妹、映像作家のエレノア・メレディスさんが制作したもの。

コンサート半ばには、ヴァイオリンとヴィオラ奏者がひとり、またひとり、歩き始めて反対側に移動するという、通常の弦楽アンサンブルのコンサートでは見られない動きに出会い、ちょっとびっくりする。演奏にも映像にも変幻自在な動きを感じる。

ヴィヴァルディの「冬」の楽曲の後、最後にメレディスさんの「冬」が透明感と静けさをもって演奏されてコンサートは締めくくられた。

会場はスコティッシュ・アンサンブルとメレディスさん、そしてコンピュータを操作していた映像のスタッフたちに対して、大きな拍手を送った。観客席にちらほらと見えた子どもたちも、映像と音に囲まれる経験を飽きることなく楽しめたようだ。

(c)Yoichi Tsukada

 

メレディスさんにミニ・インタビュー

日本初演を大成功で終えたメレディスさんにお話を伺った。

・ヴィヴァルディと自身の作曲作品を交互に演奏するというアイデアはどこから得たのですか?

——2016年にスコティッシュ・アンサンブルから委嘱を受けて作曲した作品なのですが、委嘱に当たってスコティッシュ・アンサンブルの芸術監督のジョナサン・モートンから提示されたアイデアです。彼が言うには、私とヴィヴァルディの作曲にはどこか似ているところがあると感じたのですって。それで私の作曲した楽曲とヴィヴァルディの楽曲とを織り交ぜながら音楽で一年間を作ることにしたのです。(Annoはラテン語で一年を意味する)

・実際に作曲を行ってみて、ヴィヴァルディには共感しましたか?

——200年前の作曲家のヴィヴァルディの楽曲を深く知るのは楽しいことでした。ヴィヴァルディと私に共通点があるなんて思っていなかったけれど、深く知った今はそういう気がしています。まるでヴィヴァルディと一緒に作曲しているかのように感じました。ヴィヴァルディのどの楽章を選択するのかは、私の楽曲と隣り合ってしっくりくるもので全体の構成がまとまるようにという観点で選びました。ヴィヴァルディとともに、21世紀の私たちの新たな「一年」という全体像を形作ることに挑むことは、私にとって有意義な体験でした。

・エレノア・メレディスさんの映像について、映像と音楽との関係をどのように考えていますか?

——妹のエレノアと試みたのは、聴衆を映像と演奏の両方で取り囲みたいということでした。これまでエレノアとはいくつかのプロジェクトで一緒にやりましたが、この『Anno』の映像はとても気に入っています。音楽のエネルギーと合致する熱量でバランスを取ることが完璧にできていると思います。

・横浜での日本初演、聴衆の反応はいかがでしたか?

——横浜は美しい街ですね。次の機会にはもっといろいろなところを楽しみたいです。
聴衆はとても積極的で驚きました。コンサートを楽しんでいただけたなら光栄です。

英国連携プログラム
「日英交流年UK in JAPAN 2019-20」

この『Anno』コンサートは「日英交流年UK in JAPAN 2019-20」の参加企画でもある。これは、駐日英国大使館とブリティッシュ・カウンシルが共同で展開する、日本と英国の固い絆を深めていく一年のことで、横浜とゆかりの深い英国と関連のあるプログラムが多彩に行われる。ラグビーワールドカップがスタートする2019年9月から東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される2020年9月までの一年だ。長きにわたり文化を通した友好な関係を築いてきた日本と英国。英国の豊かで多様な創造性が紹介されるとともに、日英のアーティスト、文化関係者の新たな協働が促進されるだろう。

10月14日(月・祝)には、英国近衛軍楽隊 グレナディアガーズバンドのパレードとコンサートが行われるので、ぜひ英国文化を体感してみてはいかがだろう。

(文・猪上杉子)


PROFILE

アンナ・メレディス
Anna Meredith

(c) Kate Bones

 

新しいクラシック音楽および電子音楽双方における最も野心的な作曲家の一人。現代音楽、アヴァン・ポップ、電子音楽と実験音楽流ロックの領域で活動。クラシック分野での功績は、BBCスコティッシュ交響楽団のコンポーザー・イン・レジデンスを務めるなどイギリスでは広く知られている。昨年に「もしもしレコーズ」から発売されたデビューアルバムである「Varmints」で評論家の称賛を得た。作品は、ザ・ラスト・ナイト・オブ・ザ・プロムス、ラティチュード・フェスティバル、プラダのファッションショー、高速道路のサービスエリアでのフラッシュモブ演奏まで多面にわたるイベントで、名立たるオーケストラや合奏団によって演奏されている。

 

スコティッシュ・アンサンブル
Scottish Ensemble

(C)Peter Dibdin

 

英国を代表する弦楽合奏団。グラスゴーに本拠地を置き、芸術監督であるジョナサン・モートンの下、 弦楽奏者を中心に構成されている。近年、アンナ・メレディス等の作曲家に新たな作品を委嘱している。今回は初来日。


コンサートINFORMATION

「日英交流年 UK in Japan2019-20」参加企画 
英国女王陛下の近衛軍楽隊コンサート

真紅の礼装と熊皮の黒い帽子をまとった凛々しい姿に、英国の伝統を思わす厳格な立ち振る舞い。一糸乱れぬ隊列に、栄光の輝きに満ち溢れた音色!バッキンガム宮殿を守る誇り高き英国近衛軍楽隊が、その気高き姿を神奈川県立音楽堂で披露する。 東京オリンピック・パラリンピックの開催を記念してオリンピック東京大会ファンファーレとマーチ、ロサンゼルスオリンピックファンファーレそしてイギリスの第二国歌「威風堂々」等、彼らならではのプログラムを予定している。さらには情緒溢れるスコットランド近衛連隊バグパイプ軍楽隊も出演。お昼には横浜元町ショッピングストリートにてパレードを、夜は神奈川県立音楽堂ホールにてコンサートを開催。

【街に広がる音プロジェクト 英国近衛軍楽隊 グレナディアガーズバンド パレード】
■日時:10月14日(月・祝) 12:30~13:30
■会場:元町ショッピングストリート
■出演:英国近衛軍楽隊 グレナディアガーズバンド 
■料金:無料

英国近衛軍楽隊コンサート
■日時:10月14日(月・祝) 18:00~20:00
■会場:神奈川県立音楽堂
■出演:英国近衛軍楽隊 グレナディアガーズバンド 
    スコットランド近衛連隊バグパイプ軍楽隊
■料金:S席5,000円、A席4,000円
■問合せ先:横浜音祭りチケットセンター(神奈川芸術協会内)
TEL:045-453-5080

PROFILE

英国近衛軍楽隊 グレナディアガーズバンド
1685年、英国国王チャールズ2世が近衛歩兵第一連隊に任命したことが始まりとされている。5つある近衛軍楽隊のうち、グレナディアガーズバンドは、325年間で15人の君主に仕え、王室の戴冠式、結婚式、葬儀などすべての主要な王室行事に携わってきた。