象の鼻テラス&パーク10周年! 市民のアイデアとアートで描いた未来の風景

Posted : 2019.07.26
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横浜港に臨んだ市民や観光客の憩いの場、そしてアートの発信地として親しまれてきた象の鼻パーク・テラス。2009年のオープンから10周年となる今年6月は、「フューチャースケープ・プロジェクト」と題してアーティストや市民の提案による100のプログラムが行われた。途中雨天に見舞われながらも、週末はパークのあちこちに出現した作品やパフォーマーと戯れる人々で賑わった。

横浜市民のクリエイティビティを結集

今回のプロジェクトではまず、具体的なプログラム実施の計画に先立ち施設利用者から「あったらいいな」と思うアイデアを募集。子ども、シニア、障がい者、外国人、たまたま訪問した人などいくつかのグループでワークショップを重ね、「海の生き物と触れ合いたい」「ぞうさんボートに乗りたい」「プロムナードから下りられる滑り台がほしい」といった100以上のアイデアスケッチが集まった。

これらから着想を得たものも含めて、象の鼻パーク・テラスをより快適で居心地良くするためのプログラムをアーティストや市民から公募し、実に100の企画が立ち上がった。

足りない設備をアート作品で

象の鼻テラスの大越晴子さんは、「このプロジェクトでやりたかったことは大きく2つあります。1つは、『環境整備で足りないものを、アートワークで補う』ことです」と話す。10年の月日を経て、さまざまな市民からのニーズに応えきれなくなっているという設備面の提案が、アート作品によって示された。

象の鼻テラスの大越晴子さん

 

中でもそのコンセプトが顕著に表れているのが、赤レンガ倉庫方面から山下公園へと延びるプロムナードの途中に仮設足場の階段を架けた持田敦子さんの「Steps」。今回実際に上れたのは途中まででプロムナードとは接続されず、安全性や制約との葛藤も可視化された。

(奥)持田敦子《Steps》、(手前)小泉アトリエ《Activity-Models》

 

また、象の鼻パーク・テラスの設計を手がけた小泉アトリエによる「Activity-Models」は、設計時に想定したというパーク内の人々のアクティビティを赤いマネキンで可視化。既存のサインだけでは誘導できていなかった行動を促した。

公共空間を使いこなす

2つ目は、「市民が自主的にこの場所を使いこなす」こと。象の鼻テラス内や屋上、港に停まる船の上、パーク内の隅々を使って、ライブ・合唱・ダンス・お笑いなどのパフォーマンスが行われた。また、これまでも象の鼻パークで活動してきた市民グループによるピクニック企画やガイドツアー、1日コワーキングデーなども開催された。

伊藤キム,フィジカルシアターカンパニーGERO《100人でする譜面のない合唱》100人が断続的に、観客を巻き込みながら象の鼻パーク全体を練り歩いた

 

藤崎健吾《歌と紙芝居「ビリーの物語」》

 

6月15日には、たまたま会場を訪れた人も巻き込む結婚式「OPEN WEDDING」第4弾を実施。横浜のクリエイターが集まって会場装飾や演出を手がけ、手伝う人や結婚宣言に立ち会う人も広く募集した。
式が始まると、直前まで展示を見たり、雨宿りしたりと人々が思い思いに過ごしていたテラスは、一気に祝福ムードに包まれた。

オープンウェディング実行委員会《OPEN Wediing!! 4「港の夏祭りウエディング」》

 

公共空間の多様な使い方のショーケースとなった今回のプロジェクト。今後の恒常的な設備の見直しや、市民の自主的な活用につながることを期待したい。

取材・文:齊藤真菜
撮影:大野隆介


象の鼻テラス 10周年記念事業
https://www.10thzounohana.yokohama