「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」、BankART Studio NYKで始まる!

Posted : 2017.09.25
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今年で3回目を迎える日本の現代アーティストに贈られる賞「日産アートアワード2017」。選考過程の厳格さ、そしてグランプリ受賞者、及びファイナリストへの充実したサポートの内容は、注目を集めている。熾烈な第一次選考を通過したファイナリスト5人が新作を発表する展覧会がBankART Studio NYKで始まった。世界を代表する美術館館長クラスのディレクターが国際審査委員として集まる最終選考会も兼ねた本展には、一般の鑑賞者も投票できるオーディエンス賞が設けられている。この機会に多様な現代アートの表現の力に触れてみてはいかがだろう。

「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」 会場外観(撮影:木奥惠三)
Nissan Art Award 2017 exhibition venue Photo: Keizo Kioku

 

 横浜から世界へと飛び立つアーティストを育てるアワード

横浜はいま現代アートに触れる機会に満ちあふれている。横浜美術館横浜赤レンガ倉庫横浜市開港記念会館では「ヨコハマトリエンナーレ2017」、黄金町では「黄金町バザール」、BankART Studio NYKでは「BankARTLifeⅤ-観光」、などなど。そのBankART Studio NYKの2階を会場に9月16 日から始まったのが「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」だ。

日産アートアワード」は横浜・みなとみらいに本社のある日産自動車株式会社が、2013年の創業80周年を契機に立ち上げ、隔年で開催されている現代アートのアワードだ。現代アートの分野における日本人アーティストの国際的な活動をサポートすることを目指し、人々がアートに親しむ社会作りを目的にしており、この2年間の活躍が目覚ましかったアーティストに贈られる。
このアワードのファイナリストに選ばれることはすでに国際的な現代アートの最前線にアクセスすることを約束される。これまでのファイナリストは受賞を足がかに、世界各地の大型アートフェスティバルや国際展、アートフェア、有力アートメディアなどで盛んに紹介されている。例えば「日産アートアワード2015」ファイナリストのひとり、岩崎貴宏さんは5月に行われたヴェネチアビエンナーレの日本代表に選出された。

 

ファイナリストの栄光までの軌跡

今回の5人のファイナリストは、題府基之、藤井光、石川竜一、田村友一郎、横山奈美の各氏。インスタレーション、絵画、映像、写真など、さまざまな表現による新作を披露している。
ファイナリストに至る選考には多層的な視点が織り込まれている。国内外を拠点とするキュレーターや研究者、アートスペース運営者、アーティストインレジデンスプログラム従事者、アートNPOなどから成る10人の候補者推薦委員が個別に3人ずつを推薦。今回2017年は重複があったため最終的に25人の候補者がノミネートされた。そして5月、アメリカ・ニューヨークにおいて日本、アメリカ、韓国、フランスの世界的に名高い美術館の館長から構成される5人の国際審査委員が第一次選考を行い、この5人が選ばれたのだ。

国際審査委員のひとり、パレ・ド・トーキョー(フランス・パリ)館長のジャン・ド・ロワジーさんは「選考過程では、今の日本における創造の現場で何が起こっているかを発見することができた。抗う事に貪欲で、賢明、あるいは極めて詩的、物語性に富んだファイナリストの多様な内面世界が、現代日本の新たな表現や深淵を見せてくれるだろう」 と話す。また、同審査委員を務めたDIA美術財団館長(アメリカ、ニューヨーク)のジェシカ・モーガンさんも「現代アーティストが素晴らしいのは、常に予測不可能なところ。ファイナリストがどのような作品を制作するのかとても楽しみだ」と大きな期待を語っている。

さて、その期待を担っての5人を作品とともに紹介しよう。

スーパーの総菜や調味料、お菓子の袋や箱であふれた食卓、布団や洗濯物で埋め尽くされた部屋。色とりどりの日用品とそれらに囲まれてひしめくように暮らす家族を写し出す題府基之さんの一連の写真作品。近年の代表作である「STILL LIFE」から新作を発表すると共に、「Crushed Can(Andy Warhol)」では路上に落ちた空き缶を撮影したアラーキーこと荒木経惟の仕事を参照しながら自身の表現に昇華させた。

題府基之 「日産アートアワード2017」展示風景 《Crushed can (Andy Warhol)》2017 (撮影:木奥惠三)
Motoyuki Daifu, Installation view at Nissan Art Award 2017 Exhibition, Crushed can (Andy Warhol), 2017 (Photo: Keizo Kioku)

 

「日本人を演じる」と題する写真とビデオからなるインスタレーションを発表しているのは藤井光さん。このテーマで行われたワークショップの記録映像や解説文などを組み合わせ、参加者の持つさまざまな歴史認識や多様性に対する考え方や振る舞いが映し出される。鑑賞者にも問いを投げかけてくる。

藤井光 「日産アートアワード2017」展示風景 《日本人を演じる》 2017 (撮影:木奥惠三)
Hikaru Fujii, Installation view at Nissan Art Award 2017 Exhibition, Playing Japanese, 2017 (Photo: Keizo Kioku)

 

石川竜一さんは、生まれ育った沖縄を中心に人々の暮らしや風景を収めた写真作品を展示する。「home work」と題する石川さんの部屋のなかの様子や、窓から見える光景の写真には、沖縄の現在と日常が並んでいる。

石川竜一 「日産アートアワード2017」展示風景《home work》 2017 (撮影:木奥惠三)
Ryuichi Ishikawa, Installation view at Nissan Art Award 2017 Exhibition, home work, 2017 (Photo: Keizo Kioku)

 

「栄光と終焉、もしくはその終演/End Game」と題するインスタレーション作品を発表しているのは田村友一郎さん。栄光=グロリアという言葉から連想される80年代のポップ・ミュージックや、クラシックのピアノ曲を奏でるアップライトピアノ、高級車、ギリシャ建築。そして終焉を思わせるベケットの戯曲など、さまざまな文化や表現、無数の情報が交差する立体作品で、栄光とその終焉を描く。

田村友一郎 「日産アートアワード2017」展示風景 《栄光と終焉、もしくはその終演》 2017 (撮影:木奥惠三)
Yuichiro Tamura, Installation view at Nissan Art Award 2017 Exhibition, End Game, 2017 (Photo: Keizo Kioku)

 

「Story」「Sexy women」「Sexy men」など油彩作品7点を制作したのは横山奈美さん。ネオンの形をデザインし、実際にネオンを製造したあと、それをモチーフにして油絵の具で描くという方法で制作するのだとか。華やかな光を放つネオンに必要な配電線やそれを支える構造体など裏側の部分にも眼差しを向けて一緒に描いている。

横山奈美 「日産アートアワード2017」展示風景(撮影:木奥惠三)
Nami Yokoyama, Installation view at Nissan Art Award 2017 Exhibition (Photo: Keizo Kioku)

 

5人のファイナリストが鮮やかに切り取った「今」に出会うことのできる「日産アートアワード2017」展覧会。運命のグランプリの決定は、審査委員が展示会場で最終選考を行う9月27日(水)だ。来場者の投票によるオーディエンス賞も設けられた(投票受付は9月26日まで)。はたしてグランプリとオーディエンス賞は一致するのかどうかも気になるところだ。会期中にはファイナリストやグランプリ受賞者によるトークイベントやギャラリーガイドツアーも開催する。同時代を生きるアーティストたちの感性に肌で触れることができそうだ。

 


【イベント情報】

「日産アートアワード2017:ファイナリスト5名による新作展」

会期:2017年9月16日(土)-11月5日(日)10:00~19:00
会場:BankART Studio NYK、2F
住所:神奈川県横浜市中区海岸通3-9
アクセス:馬車道駅(みなとみらい線)より徒歩5分
休館日:第2・第4木曜日 ※9月27日(水)は、イベント開催のため一般入場ができません。
料金:無料
参加アーティスト(ファイナリスト):題府基之、藤井光、石川竜一、田村友一郎、横山奈美
主催:日産自動車株式会社

 

 

<関連イベント>

http://yokohamatriennale.jp/2017/event/2017/07/event15.html

1. ファイナリストによるアーティスト・トーク(定員:40名、要予約)

  会場:BankART NYK 2F ライブラリー
 (終了)9月16日(土)15:00-16:30 藤井 光、石川竜一、田村友一郎
 (終了)9月23日(土)15:00-16:00 題府基之、横山奈美

2. グランプリ・アーティストによるトーク(定員:40名、要予約)

 会場:BankART NYK 1F カフェ
 9月30日(土)15:00-16:00
 聞き手:木村絵理子(推薦委員/横浜美術館主任学芸員)

3. ファミリー・プログラム(対象:年長~小学校3年生の子どもとそのご家族、定員:20名、要予約)

会場:BankART NYK 2F 会場
(終了)ワークショップ 9月23日(土)10:30-12:00
ガイドツアー 10月14日(土)10:30-11:30

4. ガイドツアー(定員:20名、予約不要)

  会場:BankART NYK 2F 会場
 9月29日(金)16:30-17:15
 10月14日(土)13:00-13:45
 10月21日(土)13:00-13:45
 10月27日(金)16:30-17:15

 

 

<同時開催イベント>

YCC Gallery NISSAN ART AWARD COLLECTION
YCC Gallery 日産アートアワード・コレクション

西野 達 「ペリー艦隊」 2013 image: h. 90.0 × w.134.7 cm ライトジェットプリント
Tatzu Nishi “Perry’s squadron” 2013 image: h. 90.0 × w.134.7 cm Lightjet print
©Tatzu Nishi, Courtesy of URANO / Photo by Ichiro Mishima

 

2017年9月18日(月・祝)より開催する第二回目 の「YCC Gallery」では、「日産アートアワード2017」展に関連し、日産アートアワード2013にて、審査員特別賞を受賞した西野達「ペリー艦隊」のコレクション作品を展示している。
本作は、トイレ空間を出現させたインスタレーションの一部を撮影した写真と、空間内に設置されたタイルを額装した2点で構成されている。BankART Studio NYKとYCCは徒歩数分。「日産アートアワード2017」と併せ、ぜひ、この機会に立ち寄りたい展覧会だ。

会期:2017年9月18日(月・祝)〜11月5日(日)
時間:11:00〜19:30(最終日は17:00まで)
※施設利用状況に応じて休廊となる場合がございます。休廊日程は当ウェブサイトをご覧ください。
場所YCC ヨコハマ創造都市センター 1階ギャラリー
入場:無料
主催:YCC ヨコハマ創造都市センター(特定非営利活動法人 YCC)
後援:横浜市文化観光局
協力:日産自動車株式会社