障害の有無を越えて協働する「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」

Posted : 2017.05.26
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2014年にスタートし、今回展で2回目の開催を数える「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」。テーマに「sense of onenessとけあうところ」を掲げ、10月7日 (土) ~9日 (月・祝)をコア期間として展開する。象の鼻テラスと象の鼻パークを中心に、パフォーマンスプログラムや参加型のプロジェクトが行われる予定だ。去る17日に開かれた記者会見では、総合ディレクターの栗栖良依さんから今年のプログラムへの意気込みが語られた。

提供: 横浜ランデヴープロジェクト実行委員会

 

障害がある方の創作活動を支える環境整備に取り組んだ3年間

 「障害って何だろう?」という問いに向き合うことからはじまった「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」。アートの力で、多様な人々の出会いと協働の機会を生み出すフェスティバルだ。2014年の前回展を経て2回目を迎える今年、5月17日に開催された「テーマ発表&市民参加型イベント詳細」記者会見の会場・象の鼻テラスには横浜内外から多くの記者や関係者が詰めかけ、その注目度がうかがえた。

記者会見会場の様子。今年のパラトリで象の鼻パーク全体に広がるインスタレーションとして1万人の参加者とともに制作される、井上唯さんの《whitescaper》も展示された。

 

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」に共催として名前を連ねる横浜市は、健康福祉局と文化観光局の両局が本プログラムに関わっている。障害の有無に関わらず市民がともに参加できることを大切にする“福祉の視点”と、新しい芸術表現を横浜から世界へ向けて発信する“文化の視点”。このふたつのバランスを取りながらプログラムを展開している点が、パラトリならではのアプローチになっている。

今年のテーマに掲げた「sense of onenessとけあうところ」には、どのような想いが込められているのだろう?

「初回のパラトリエンナーレは“first contact”をテーマに、“出会いと挑戦”のフェスティバルになりましたが、障害のある方々が文化芸術活動に参加するうえでの“アクセシビリティ”が日本ではまだまだ低いという現実を突きつけられました。障害のある方と一緒にパフォーマンスをつくる海外の一流の演出家を招いてプログラムをひらいても、参加者が集まらないという状況に直面したんです。そこで障害のある方も芸術活動に参加できる環境をつくるために、彼らをサポートするアカンパニストやアクセスコーディネーターといった人材の育成から改めてはじめることにしました。このような環境の整備に2年以上の時間をかけて取り組んだことで、今、やっとスタート地点に立てたような気がしています。今年のテーマ“sense of onenessとけあうところ”には、互いの個性や特徴を活かし合い、一体感をもって社会にあふれる“壁”や“境界線”をとかしていく、そしてその瞬間を体感いただける場にしようという意図を込めています。」(総合ディレクター・栗栖良依)

 アカンパニストとは、障害のある方と一緒に創作活動を行う人。アクセスコーディネーターとは、障害のある方が創作活動に参加するための環境を整える人だ。パラトリエンナーレが2年以上かけて育成したアカンパニストやアクセスコーディネーターのなかには、昨年開かれたリオデジャネイロパラリンピック閉会式のパフォーマンスに招へいされた方もいる。このような大舞台を経験したことで、彼らのスキルに磨きがかかったそうだ。

障害の有無に関わらず互いの個性を活かし合い、あらゆる人がとけあう場としての表現を目指すパラトリ。前回展を経た今回展では、真に“協働”してつくり上げる芸術表現、パラトリの深化に期待が高まる。

 

ツアー型パフォーマンス、空間インスタレーションなどでにぎわうコア期間

 今年のパラトリは、複数のプロジェクトの「創作」に取り組む第1部(5月27日~9月末)、創作を経た「不思議の森の大夜会」を行うコア期間の第2部(10月7日~9日)、そして最後に発表をドキュメントとして「展示」する第3部によって構成されている。コア期間の見どころをいくつかご紹介しよう。

Photo: Kyosuke Asano

 

  • 1万人とつくる会場構成

象の鼻パークに<不思議の森>が出現。その森を構成するのはアーティストの井上唯さんが1万人の参加者とともにつくりあげる《whitescaper》という作品。巨大な「生命体」の細胞や血管のように広がるインスタレーションがお目見えするのが楽しみだ。その創作のプロセスは、子供から大人まで、多様な人が参加出来る。

 

  • パフォーマンス・ステージ

<不思議の森>の特設ステージでは、多様な出演者による個性の違いを活かしたダイナミックな現代サーカスが繰り広げられる。また、「ウサギ」に扮した市民パフォーマーが来場者を誘うツアー型パフォーマンスもあり、現在パフォーマーを募集している。「ウサギ」に扮してみたいという方は、5月30日(火)の公募〆切までにぜひご応募を!
http://www.slowlabel.info/report/2737/

パフォーマンス・ステージのほかに、障害のある方と多様な分野のプロフェッショナルによる現代アート作品が展開されるアート・ステージや、障害者施設とフードデザイナーが「大夜会」のテーブルを彩るフード・ステージもプログラムされている。

 

「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」キックオフイベント、5月27日(土)象の鼻テラスで

 前述の井上唯さんによる「1万人とつくる会場構成」のインスタレーション制作ワークショップや、「大夜会」で現代サーカスをつくる演出家の金井ケイスケさんによるサーカスワークショップに参加できるキックオフイベントが、5月27日(土)に象の鼻テラスで開催される。今年のパラトリのトレーラーなどが紹介される、プレゼンテーションや市民や学校・施設等の団体で参加できる各種プログラムの説明の時間も設けられているので、パラトリをより詳しく知りたい方にもおすすめのイベントだ。井上唯さんのワークショップは、事前申込み不要で、好きな時間に参加できる。

さまざまな側面から“協働する力”にアプローチをしているパラトリ。1万人のひとりとして、この機会に参加してみては?

パラトリのメインビジュアルを前に。左・栗栖良依(ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017総合ディレクター)、右・島田京子(同実行委員長、公益財団法人横浜市芸術文化振興財団 専務理事)

 

 

【イベント情報】

 キックオフイベント

日時:2017年5月27日(土)10時30分~17時
会場:象の鼻テラス
住所:神奈川県横浜市中区海岸通1丁目
アクセス:日本大通り駅(みなとみらい線)徒歩3分

  • プレゼンテーション 10時30分~12時
  • 金井ケイスケのサーカスワークショップ 13時~15時
  • 井上唯のあみあみワークショップ 10時30分~17時

 

詳細はウェブサイトから
http://www.slowlabel.info/report/2734/

 

ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017
sense of oneness とけあうところ

会期:平成29年5月27日(土)~12月下旬
会場:象の鼻テラス、象の鼻パーク、横浜ラポール、横浜市内各所
主催:横浜ランデヴープロジェクト実行委員会、特定非営利活動法人スローレーベル
共催:横浜市
助成:平成29年度文化庁文化芸術創造活用プラットフォーム形成事業
認証:beyond2020プログラム
公式HPhttp://www.paratriennale.net/