開幕!「黄金町バザール2016―アジア的生活」

Posted : 2016.09.30
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横浜のアートフェスティバル「黄金町バザール」が、本日10月1日から開幕する。今年は6ヵ国・14組のゲストアーティストに加え、黄金町拠点のアーティストも参加し、総勢54組が作品を発表する。大岡川沿いの下町を歩きながらアートと暮らしを楽しめるバザール、新たなプログラムも加わった今年の見どころをレポートしよう。
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今年の参加アーティストはなんと総勢54組! このたくさんのアーティストたちの存在が、黄金町の9年の歩みを物語る。 ALL Photos by OONO Ryusuke

 

国内外のアーティスト、“同時代”の表現を黄金町で

2008年からはじまり、今年で9回目の開催を数える黄金町バザール。京浜急行線「日ノ出町駅」と「黄金町駅」の間にある高架下のスタジオを中心に、まちなかでアーティストが作品を発表する毎年恒例のアートフェスティバルだ。ゲストとして迎える国内外のアーティストは皆、約2ヵ月間の滞在制作を行ない、時には街の歴史や物語、暮らしを作品に反映し発表する。アーティストたちの”今”ここでしか見られない表現との出会いがこのフェスティバルの魅力だ。

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京浜急行線の高架下のスペースに設営された、黄金町バザール2016の特設会場入口。ツァオ・ミンハオさん+チェン・ジェンジュンさん、栗原亜也子さん、西野正将さんが展示している。

 

会場となる建物の多くは、かつて違法な売買春を行なっていた店舗の跡地を活用している。黄金町バザールを主催するNPO法人黄金町エリアマネジメントセンターは、このような場をアーティストの創作や展示に使うことで、まちに活力を取り戻していく「アートによるまちづくり」という大きな課題に取り組んでいる。

 

今年のテーマ「アジア的生活」について

毎年ひとつのテーマのもと実施している黄金町バザール。今年は、日常的な生活とアートがどのように結びついているか? という問題意識のもと「アジア的生活」というテーマを掲げた。黄金町バザールのディレクター・山野真悟さんに、その思いを聞いた。

「生活のなかにアートがどのように介在できるか? という視点がある一方で、日常から生まれてくるアートに目を向けることもできます。“アジア的生活”と言ったときに、アジアの各地で活動するアーティストが、それぞれの国や地域で求められる役割も、決して同じではありません。より個別的な“アジア”を今回の展覧会をとおして見せられたらと考えています。」(黄金町バザール ディレクター・山野真悟)

公募によって選出されたゲストアーティストは、日本、韓国、中国、台湾、ベトナム、タイ、アジア6ヵ国の作家たちだ。山野さんが打ち出したテーマ「アジア的生活」に、それぞれの解釈で取り組んでいる。

今年のバザールを読み解く“ものさし”のような作品になるかもしれない、と山野さんが教えてくれたのが、ユ・ソンジュンさん(韓国)の作品だ。2階建ての会場「八番館」で、1階では黄金町の日常のなかで遭遇した物語を映像にした作品を、2階では韓国の生活と芸術の関係を考察した写真、インスタレーションを展開しているので注目してみよう。

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ユ・ソンジュンさん(韓国)の作品。映画のセットのように、韓国人の生活の一場面を再現した写真作品の連作を制作した。

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韓国の巫女さんの儀式の部屋を再現したインスタレーション。芸術・文化の要素がみられる。

 

長期レジデンスアーティストの参加と、新企画『バザール・コレクターズ』

黄金町エリアマネジメントセンターは、違法飲食店跡地を活用したアーティストの「長期レジデンス」プログラムを、黄金町バザールと平行して2009年から実施してきた。今年はこの「長期レジデンス」のアーティストによるウィンドウ展示やワークショップ、アトリエ公開が、バザールのもうひとつの柱として加わった。

「長期レジデンスの作家たちは、これまでも自発的にウィンドウをつくって、バザール期間中以外でも道行く人たちが作品を見られるような環境をつくっていました。そんな彼らが日頃の展示をすこし拡張する形でバザールに参加しています。」(黄金町バザール ディレクター・山野真悟)

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チェン・ティンチュンさん(韓国)、井上絢子さん、津川奈々さんの3名の女性作家の絵画作品が展示されたギャラリースペース。3名がともにこのスペースで制作を行った。

 

今回から取り組んでいる新たな試みが、新企画の『バザール・コレクターズ』だ。この企画はこれまでの約10年間の活動があってスタートしたと山野さんは語る。

「10年近く続けてきたことで、このエリアにおける『アートによるまちの再生』という面では、一定の評価をいただけるようにはなりました。しかし、アートとまちの距離はどのぐらい縮まったのか、地域の人たちは作品に対してどのような関心を向けているか――。そういったことをサーチしたいと考えたんです。『バザール・コレクターズ』では、作品を一定期間、地域の人たちの自宅やオフィスに展示していただき、生活をともにしてもらいます。一部は新しい世代の人たちにもお願いしました。アートがある日常を、今後のまちづくりを担っていくであろう若い人たちに体験してもらい、フィードバックをいただくことも狙いのひとつです。」(黄金町バザール ディレクター・山野真悟)

本企画は会期中、「高架下スタジオSite D」にて写真展として公開されている。

例年、展示をめぐるたびにアーティストの新鮮な視点にわくわくさせられる黄金町バザール。じっくり向き合うことで、じわじわとわかる作品もあるので、お時間に余裕をもってまわることをおススメしたい。たった500円のパスポートで、質の高い作品を何度でも楽しめるまたとない機会。11月6日(日)まで約1か月間の会期、この秋の予定に今すぐ黄金町バザールを組み込んでおこう。

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カン・ヤチュウさん(台湾)の作品。横浜とシルクの関係をリサーチし、シルクや和紙といった素材にこだわりながら、繊細で巨大なインスタレーションを制作した。

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カンさんの作品の一部。セミの抜けがらは「家」のメタファーのようでもある。滞在するアーティストが住む家のイメージも重ね合わせている。

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さまざまな人の心の傷を美術作品として描くプロジェクトで知られる渡辺篤さんの作品。会期中は、訪れた人の傷を会場で集めている。

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傷は円形のコンクリート版に書かれ、ヒビを入れて、その傷の縫合として金継ぎを行う。黄金町で集めた傷も、コンクリート版に制作するという。

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ファン・レ・チュンさん(ベトナム)の作品。伝統的な木版画の技法を用い、横浜の風景の木版画を制作。伝統と現代の表現の接続を探る。

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プラパット・ジワランサンさん(タイ)の作品。横浜や黄金町の風景をあつめ、20層にも及ぶコラージュにして表現したインスタレーション。

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西野正将さんのインスタレーション作品。黄金町の街をフィールドワークするなかで「暴力のない明るいまち」と書かれた壁画に着目し、再制作を行った。

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黄金町エリアに残る、売買春街だった歴史を刻む壁画。風化したような壁画の様子が、時間の経過を感じさせる。

 

(文・及位友美/voids

【イベント概要】

黄金町バザール2016—アジア的生活

期間:2016年10月1日(土)〜11月6日(日)
時間:11:00〜18:30
休場日:
10月3日(月)、11日(火)、17日(月)、24日(月)、31日(月)
会場:
京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外、他
料金:展示期間中有効のパスポート500円(高校生以下無料)

詳細はウェブサイトから
http://koganecho.net/koganecho-bazaar-2016