象の鼻テラスで異色のファッション展 “洋服の試着がアートに?”MITSUSHI YANAIHARAが新作発表!

Posted : 2016.09.26
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2014年春夏シーズンから4シーズンぶりとなる新作コレクションを発表するメンズブランド「MITSUSHI YANAIHARA(ミツシヤナイハラ)」。新作プロモーションとしては初めてとなる本拠地・横浜での展示会は、同じく横浜を拠点に活躍する建築家やデザイナーの力を結集した体験型インスタレーションだ。

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軽やかに自分をアイデンティファイする

 デザイナーの矢内原充志さんは、現在関内のアトリエを拠点に、アートから街づくりまで国内外のプロジェクトに携わる。地元・愛媛県今治市の「イオンモール今治新都市」のコンセプトデザインや、瀬戸内国際芸術祭シンガポール国際芸術祭での舞台公演の衣装デザインなど、ファッション業界から離れたところでさまざまな仕事を進めていた2年間のあいだに、社会の動きに触れる中でまとまってきたのが今回のテーマ「浮世に着る服」。自分という不確かな存在を、何か自分なりのこだわりを持って選んだ服を着ることで、自由にできるのではないか。何かに属することに頼らず、軽やかに自分をアイデンティファイ(明確に)することができるのではないか。そんな意味が込められている。

 「自分自身を自分で見ることはできないと、哲学の世界なんかでも言われますが、自分の表面だけをとっても、顔の目の下だとか、背中だとかは、見られないまま死んでいきます。そのぐらい、自分がどんなものなのか、何を考えてどうそこに佇んでいるのかっていうのは、自分ではよくわからないことなんですよね。その不安感みたいなものがあるから、ファッションっていうものが成立しているのかなと思ったんです。

 自分の持ち物や身の回りに、よくわからないおじさんの名前がいっぱい書かれていたら、本来気分悪いはずなんですけど、自分の一番近い所である服に他人の名前がクレジットしてあるのは、不思議と大丈夫なんです。誰かに『あなたはこうですよ』と言ってもらった方が安心だから。」

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過去のミツシヤナイハラコレクション

 

オープンな展示会に

 今回会場となる象の鼻テラスは、誰でも入れるアート展示のできる休憩所だ。矢内原さんは、これまで横浜でのアート展の経験はあるものの、自分のビジネスの核となっているファッションの新作コレクション展を横浜で行うのは初。業界の慣習として、東京でやるのが当たり前になっているプレスやバイヤー向けの展示会をホームの横浜に、そして誰もが入れるオープンな場所である象の鼻テラスに持ってきた背景には、「リラックスして開いたものをやりたい」という思いがあった。

 「普通、ショーも展示会も一般の人向けには閉じられているので、自分のことを知っている人にも知らない人にも見てもらえる状況の両立は、なかなか生まれない。でも洋服っていろんな人が着るもの。バイヤーさんやスタイリストさん、プレスさんは『そのタイミングで横浜行けるかわからないけど行けたら』みたいなリアクションになるけど、まあ一度肩の力をぬいて、自由にやりたかった。」

 自由な展示会は、気心の知れた横浜のクリエイターとの協同作業で形になった。今回、アートディレクションは河ノ剛史さん、空間構成はabanbastgk inc.が手がける。

関内のアトリエでのミーティングの様子

関内のアトリエでのミーティングの様子

 

 来場者は、2017年春夏コレクションを纏い、仕掛けが施された鏡やカメラの前に立つと、違う角度から見た自分や、歪んだ自分、10秒前の自分など、今までにない視点から見た自分に出会うことができる。私達は、日常の中でSNSに映し出された写真や言葉が、その人そのものであるように錯覚しがちだが、実はそこで見ていることは誰にとっても一側面の姿でしかない。この体験では、鏡に映るあなたの視点を時間的、空間的にあえてゆがめる(ノイズをいれる)ことで、今の社会が不確かな情報で溢れていることを気づかせてくれる。矢内原さん曰く 「人は、実際はかなり多面体。鏡の前のペラっとした自分が、本当にあなたですかと、ちょっと疑うということができたら。」だそうだ。

 

【イベント概要】

FLOATING LIFE展 “浮世に着る服”

期間:2016年9月28日(水)〜10月2日(日)my_17ss_a4_omote_160907jpg
時間:11:00〜18:00(最終日17:00クローズ)
会場:象の鼻テラス
住所:神奈川県横浜市中区海岸通1丁目
アクセス:日本大通り駅(みなとみらい線)徒歩3分
料金:入場無料

詳細はウェブサイトより
http://www.zounohana.com/schedule/detail.php?article_id=570

ファッションパフォーマンス@象の鼻テラス”フィッティングルーム”

日時:9月30日(金)17:00〜17:15
演出・振付:ストウミキコ
音楽:小島創太郎&宿谷一郎(fromサンガツ)
出演:天野悠二   Ayako

 

【プロフィール】

矢内原充志(ヤナイハラミツシ)

 1975年愛媛県生まれ、横浜在住。桑沢デザイン研究所卒。
 舞台衣装からファッションデザイナーのキャリアをスタートさせる。2002年〜2009年、舞台衣装から派生したレディスブランドで東京コレクションに参加。2011年からはメンズブランド「Mitsushi Yanaihara」を始動。2012年Tokyo新人デザイナーファッション大賞プロ部門受賞。
 ファッションが社会に出来ることを常に意識している。アーティストやディレクター、衣装製作家の活動の為に自身が運営するスタジオニブロール(2004年設立)では、野田秀樹・作「3代目、りちゃあど」、瀬戸内国際芸術祭など国内外の様々な舞台の衣装制作を手掛け、また、建築家伊東豊雄氏が営む「NPOこれからの建築を考える」理事、イオンモール今治新都市 コンセプトデザイン、はーばりー(原広司設計)内のカフェディレクションなど、アートから街づくりまで国内外のプロジェクトにも携わっている。
http://www.mitsushi-yanaihara.com

ストウミキコ

 振付家・ダンサー。桐朋学園短期大学芸術科演劇専攻卒業。ダンスカンパニー「キリコラージュ」を経て、2013年に「MICOLLABO」を始動。“あなたとわたしのコラボレーション”をモットーに、舞台・映像作品の振付、ワークショップを全国にて展開中。近年は音楽家とのセッションや美術家との共同企画など、多ジャンルアーティストとの作品創作にも力を入れている。第4回キッズワークショップアワード(NPO法人CANVAS)優秀賞受賞。
http://www.micollabo.com