関内外OPEN!リレーコラムVol.14

Posted : 2014.09.12
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はじめまして! LAUNCH PADのリュウ・リンさんにご紹介頂きましたアーチストの樫村和美です。「ハンマーヘッドスタジオ新・港区」を経て現在、馬車道にある創造界隈拠点、宇徳ビルヨンカイで制作をしています。今日は横浜市が2011年にはじめた「省エネ技術とアートで創るもうひとつの横浜夜景-スマートイルミネーション横浜」への参加を中心にお話させてください。

SMART ILLUMINATION YOKOHAMA 2013 Photo:AMANO STUDIO

SMART ILLUMINATION YOKOHAMA 2013
Photo:AMANO STUDIO


Light Bottles Project のはじまり

スマートイルミネーション横浜2013では、「Light Bottles」という同じ作品を元に、2つのプロジェクトに参加しました。ひとつがスマートイルミネーション横浜2013アワード(以下アワード)、もうひとつはBankART1929の「電気を消してみましょう」配布ランタンの制作です。

以下昨年度の作品紹介文です。


マニラのスラム街で、電気が引けず料金も払えず「昼でも暗がりの家」の人々の生活を、劇的に明るくした技術があります。ペットボトルに水と漂白剤を入れ、屋根に穴をあけ取付けると、太陽光がボトルを通して部屋中に拡散するそうです。船の甲板から船底に光を送るデッキプリズムと同じ原理です。
なんてスマートな、持続可能なエネルギー利用かと思いました。この技術を応用し、太陽光発電の昼間蓄電した電気を使う「Light Bottles」を制作し、アワードでは、光る植物に見立て開港の丘に生やしました。
私たちの棲む横浜は街中に光が溢れ、夜でもとても明るい。このボトルひとつひとつの光はとても弱く淡いものです。けれど増幅させ増やして行けば、都市の景観になり得るかもしれません。
また、このボトルを家で使えるランタンに援用してみました。
BankART1929 さんの「電気を消してみましょう」プロジェクトで屋台に乗せお配りします。
このランタンはとてもささやかな光ですが、暗がりの中できっと楽しむことができると思います。

SMART ILLUMINATION YOKOHAMA 2013 Photo:AMANO STUDIO

SMART ILLUMINATION YOKOHAMA 2013
Photo:AMANO STUDIO

 

電気を消してr
「電気を消して見ましょう」屋台とランタン

「電気を消して見ましょう」屋台とランタン


実はわたしは平日、東京の建設会社で働いています。都市や地域と施設づくりのプランナー兼エンジニアを経て、今は社会の課題を解決する環境技術の企画が仕事です。

「なのにどうしてアーチスト? Light Bottles ?」とよく聞かれるので先に説明します。

企業が行う都市開発などのプロジェクトは、沢山の関係者がおり多くの事業費と労力を必要とし、ときに数十年単位の時間をかけ実現します。高度な技術も使いハードをつくります。

一方で長年、より簡易なアイディアや工夫で、社会の課題を解決する方法はないのか? そういう視点を表現するには? と考えていました。

そうして、たとえささやかでも、日常に今そこにあるもの-風や光、行き交う人々、身の回りの世界をとらえたくて、写真表現やリ・プロダクトを手探りではじめました。

ハンマーヘッドスタジオ新・港区(以下ハンマーヘッド)では、身近で手に入りやすい資材、現代の竹のようなもの-ペットボトルの可能性を試していて、そんな中アワード募集を知り、先述の技術を知りました。

つまりアワードへのチャレンジ-Light Bottlesの考案は、職業経験に加えたアーティストとしての自分の考えを表現する、またとないチャンスだったのです。

その上でアワード最優秀賞という結果を頂けたのは、数年前に素人から活動をはじめた私には望外の喜びでした。

創造都市横浜のプログラムで育つ

アーティスト、および横浜での活動のきっかけはともに、環境省による「感覚環境のまちづくり」を仕事にしていた2008年、BankART LIFEⅡ Landmark Project IVの「心ある機械たち」展の牛島達治さんの機械作品や「Open!パブリックスペース」展の横浜市庁舎の松本秋則さんの竹のインスタレーションを見たことです。都市空間の中で思いがけず体験する不思議な感覚に惹かれました。また横浜リエンナーレ2008の三渓園会場で出会った霧の彫刻家-中谷芙二子さんと仕事をご一緒し、アートと環境技術の融合を意識するようになりました。

しかし当時はつくりたいものが曖昧で制作技術もありません。そこでBankART Schoolで松本、牛島、両先生らに学び、BankART Studio NYKのスタジオアーティストから、ヨコハマトリエンナーレ2011の特別連携プログラムBankART LIFEⅢ「新・港村-小さな未来都市」への参加を経て、ハンマーヘッドに入居しました。

ハンマーヘッドの環境は素晴らしく、ここがなければLight Bottlesは生まれなかったと思います。理由は大きく3つあります。

ひとつは豊富な人材の集積とコミュニケーション。多様な「住民」がおり、制作スキルから社会との対峙法まで、日々の何気ない会話からヒントを貰う一方、こちらも社会の中での自分と表現を整理し説明しなくてはいけません。これにはとても鍛えられました。

2つ目は、地域に毎月開くオープンスタジオ。通常社会人アーティストの作品がプロと同時に人目に触れる機会はそうありません。プロや地域のリピーターに途中経過を見せては直接かえってくる反応が、制作の推進力でした。

3つ目は教えあうこと。講座シリーズ「ハンマーヘッドカレッジ」でリュウ・リンさんや斉藤真奈さんらの助けを借り、試作段階のLight Bottles ではじめてワークショップを行いました。この体験が繋がり、各所からワークショップに呼んで頂けるようになりました。

加えて物理的な環境。あの大空間があったから、短期間に、試行錯誤しながらも大量のボトル制作が実現しました。「電気を消して見ましょう」の屋台も、アーティストでシェアメイトの阿部剛士さんにより、ここで制作されています。

阿部さん屋台製作rスタジオテストr制作中ボトルr

そしてLight Bottlesの展示は象の鼻テラス(スパイラル/株式会社ワコールアートセンター)さんの大変なご指導ご協力で実現しました。文化観光都市横浜とスマートイルミネーション横浜の知名度から、数万人の来街・来場者に見て頂け、続ける勇気を貰いました。

スマートイルミネーション金沢(2014年10月4日開催)と宇徳ビルライフ

この数ヶ月は横浜と東京のワークショップ、また関東学院大学の建築・環境学部の関和明教授たちが担当する授業「Building WorkShop」にて、学生達による京急線の金沢八景駅周辺開発の地域交流広場「はちのば」の整備に参加していました。若い人とのライブ共同作業には教わることが多かったです。

その「はちのば」を拠点に金沢八景駅周辺にて10月4日(土)16:00~20:00 スマートイルミネーション金沢「海と街と語り合う、みんなでつくるあかりの八景」が開催。Light Bottlesも参加します。

再度スマートイルミネーションに呼んで頂き、また関内外からまちづくりの現場に入り緊張していますが、上記大学と横浜市立大学の金沢研究会の学生達を中心とした、金沢八景の方々のパワーを感じ、わくわくしています。

宇徳ビルヨンカイではアーティストの丸山純子さん、曽谷朝絵さん、HAMArt ! 編集員であり アート応援のウェブサイト to-co-to(トコト)を 運営している、いなむらはつこさんらのスタジオにいます。特にいなむらさんはアーティストの支援をされているため、キャリアの浅い私に親身に相談にのってくださり感謝しています。ヨンカイには、ヨコハマアパートメントのXmas展示やワークショップでお世話になった、建築設計事務所 オンデザインさんのスタジオもあり、ここでも横浜のクリエーターの集積力を感じています。

横浜でアートと人に出会いつくり始め、この数年一歩一歩行動しつつ、経験を積ませて頂いています。この街で知り合い、今も活動を支えて下さっている、お名前を書けなかった沢山の方々がいて本当に感謝しています。いつかそれを都市に還元できたらと願います。そして、そうした人の活動エネルギーもまた、都市の光のように感じます。その光に惹かれて今ここにいるのだな、と日々思っています。

IMG_3074r樫村和美 |artist
1991年筑波大学芸術専門学群デザイン主専攻卒。
2010年よりBankART school参加を機に表現活動を開始。
BankART AIR Program(2011)、『横浜プレビュウ』アペルト(新・港村/2011)。
スマートイルミネーション横浜2013アワード最優秀賞受賞。
ものづくりや写真を通じて、身近に日常そこにある「ありふれたもの」を「よく見て捉え直す」表現をめざしています。