関内外OPEN!リレーコラムVol.13

Posted : 2014.07.25
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こんにちは、LAUNCH PAD(ランチパッド)のリュウリンです。ご紹介いただいた齊藤さんと同じく、みなとみらいにあったシェアスタジオ「ハンマーヘッドスタジオ新・港区」にて写真家の主人とともに活動していました。現在、石川町5丁目でアトリエ兼ギャラリーを運営しています。

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新港のスタジオで孵化した想い

ハンマーヘッドスタジオ新・港区(以下ハンマーヘッド)では自身の版画制作メインに活動していましたが、講座シリーズ「ハンマーヘッドカレッジ」運営や毎月あったオープンスタジオなどで、色々なことをたくさんの方から学び、刺激を受け、充実した時間を過ごすことができました。そして制作のモチベーションをキープすべく、ハンマーヘッド後の制作拠点を探していた頃に、妹が経営していた元町のカフェギャラリーを、彼女の結婚を機に閉めることにしたと聞き、せっかく築いたアートコミュニティの拠り所をなくしてしまうのはもったいないと思い、自分の制作拠点にギャラリーを移転させて継続したいと申し出て、そして運良くちょうどいいサイズ感の建物を、元町から遠くない石川町に見つけました。3月末のカフェの閉店と4月始めのハンマーヘッドの撤収から、あまり期間をおかずに始めたかったので、大急ぎで準備し、5月16日に「LAUNCH PAD GALLERY」をオープンさせました。ハンマーヘッドで吸収したことは大きく、できるだけLAUNCH PAD GALLERYに反映させようと試みています。

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ハンマーヘッドでは、版画制作に没頭できる環境だけでなく、アーティスト同士のつながりとそれを支える場の大切さを実感していました。そのハンマーヘッド入居につながった、妹のカフェギャラリーでのつながりを保ち、さらに大きくしたいと願い、年齢やキャリアに関係なくやる気のある作家を応援するコンセプトは継承し、カフェのために控えていた部分は変えて、新生LAUNCH PAD GALLERYをアーティストによるアーティストのためのスペースにしたいと思っています。先にギャラリー部分に注力してしまったので、肝心のアトリエスペースが整備半ばですが、作業環境も心地良くして、写真や版画の工房として、自身の作品制作だけでなく、アーティストを制作の面でも応援できればと思っています。風通しの良い交流の場として、ハンマーヘッドも元町にあったカフェギャラリーも機能していました。その空気感を受け継ぎたいと心から願い、現在取り組んでいます。

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LAUNCH PAD GALLERYの特徴は多文化多言語環境にあると思います。横浜生まれ横浜育ちの中華街っ子の私は、横浜の持つ多様性と寛容さの恩恵をたっぷり浴びて育ちました。留学を機に住み始めた米国加州サンフランシスコ市の持つ、横浜をさらに多様で寛容にしたような環境にすっとフィットし、楽しく過ごしていました。結婚後、夫婦で帰省するたびに、主人の日本への興味がふくらみ、日本移住を決め、どこに住むか考えたとき、私の実家があることもありますが、やはり横浜が私たち的に一番しっくりきました。横浜市のアートに対する取り組みにもとても興味があったので、東京のどこかという漠然とした場所よりも、横浜の打ち出すはっきりした個性に惹かれました。私は日本と中国の習慣の混合の中で育ち、元町や本牧辺りのアメリカンな雰囲気にも接していたので、文化習慣のミックスが街を面白くすると感じており、国籍、世代、性別などでカテゴライズせず、面白そうなコトやモノを受け止め、それらをLAUNCH PAD GALLERYから発信したいと思っています。

作品制作と発表も自分の考えを伝えるひとつのコミュニケーションですが、考えや行動を言葉で説明するのもコミュニケーションです。ハンマーヘッドにて毎月開催されていたオープンスタジオで、実は作品についてのコンセプトよりも、制作方法を伝える時に、なかなか歯がゆい思いをしました。私はモノタイプという版を彫らない絵画のように一点ものの版画技法を用いています。主人は写真作品だけでなく、自作の写真を様々なものにイメージトランスファー(転写)した作品を作っています。難しいことは特にしていないのですが、版画なのに1枚しか刷れないことや写真の転写の仕方など、来場者になかなか伝わりませんでした。そこから、やってみるのが一番分かると思い、まずワークショップを開くことに興味がわきました。またそこから派生して、教えるということに興味がわき、いま子どもたちに教える機会を得て、奮闘中です。あの歯がゆさはまるで、ネイティブ同士の会話なのに言語が機能していない感覚でした。それを乗り越えたくて、いまコミュニケーションにこだわっているのだと思います。メッセージのコアをシンプルに伝える方法を練習中です。私たちの持つ多言語多文化な特徴を楽しんでもらうために、適切なコミュニケーション方法を作品やワークショップ、キュレーションなどで表現して、もっと横浜アートシーンに楽しく関わっていきたいと考えています。笑われそうですが、面白そうなことができそうな予感だけはなぜかあります。

山手、元町、石川町を周遊するギャラリーツアーコースが自然発生しています。うれしいことです。「今日はこことここをまわってから来たよ」とお客様から声をかけてもらいワクワクしました。石川町もこれからもっと面白くなりそうです。近くのギャラリーやアートスペースと連携し、共存共栄できるよう、色々と企画したり協力したりできればと思っています。

まだまだ私たちが理想とするコミュニケーションには遠く、二人でもがきながらなんとかやっていますが、自分たちの信じる、言語も文化も超えてつながることの大切さを、これからも大事にして、アーティストとしても、作品発表の場としても表現していきたいです。

次回は、スマートイルミネーション横浜2013でグランプリを受賞し、現在は宇徳ビルで活動している、ハンマーヘッドスタジオメイトの樫村和美さんです。樫村さんのワークショップで作ったエコライトは、LAUNCH PAD GALLERYの2階で今日も幻想的に光っています。

写真:フレッド・バフーベン

Ling-Portrait-rLIU LING(リュウ リン)
横浜市出身。版画家。米国カリフォルニア州サンフランシスコ市Academy of Art College(現Academy of Art University)美術科版画専攻卒。California Society of Printmakers会員。
現在、石川町5丁目にて「LAUNCH PAD GALLERY」を夫婦で運営。
ling-liu.com
launchpad-gallery.com
www.facebook.com/LAUNCHPADYOKOHAMA