関内外OPEN!リレーコラムVol.11

Posted : 2014.05.30
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みなさま、はじめまして。リレーコラムの第11回目を担当させていただく両見英世です。僕の尊敬する建築家の柳澤さんからのご紹介ということでいささか恐縮しております。僕は練馬区にあるタイププロジェクト株式会社というフォントを開発している会社に所属し、横浜で制作活動を行っています。今回は、僕の仕事であるフォントのデザインと横浜で取り組んでいることについて書いてみたいと思います。

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初めて出会った方に自分の仕事を紹介すると、フォントのデザイン?と不思議そうな顔をされる事がたくさんあります。それもそのはず、コンピューターや携帯電話を手に入れれば、そこには意識せずとも明朝体やゴシック体など多種多様な書体がすでにインストールされているので、なぜいまさら新しいフォントがいるのかといった疑問が沸き起こるのも無理がありません。

けれど、より細やかに文字と人との関係を眺めてみると、まだまだフォントにも工夫する余地や足りていないと思うことがたくさんあります。最近の事例ですと、これから増々進むといわれる高齢化社会を背景に、お年寄りにも読みやすく、遠くから文字を見たときの読み間違いを防ぐといったコンセプトのフォントが開発されていますし、テクノロジーの進化とともに、ディスプレイで文字を読む機会が増えたため、ディスプレイで表示する文字に対してデザインを最適化するといった試みも行われています。

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新しく開発されているフォントは、この2つの事例のように問題解決のアイデアを元にしたものばかりではありません。これまでにないニュアンスのデザインや、太さのバリエーションを工夫したもの、さらには特定の企業や団体、プロジェクトのために作られているフォントなどそのアプローチは様々です。

フォントの開発には様々なアプローチがありますが、僕が今取り組んでいるのは濱明朝体(仮)という横浜をイメージしたフォントです。横浜が開港150周年を迎えた2009年から取り組んでいて、かれこれ5年が経過しました。通常の日本語フォントのプロジェクトであれば、すでに完成していてもおかしくはないのですが、このフォントはいろいろなプロジェクトと平行して進めているので、完成まで少し時間がかかりそうです。

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濱明朝体(仮)のプロジェクトを開始して、すぐに仕事場を横浜に設けたいと思いました。練馬区にあるタイププロジェクトの事務所と当時住んでいた鎌倉の自宅を仕事場としていたのですが、せっかく横浜をイメージしたフォントに取り組むのだから少しでも横浜の空気を感じたいと思ってのことでした。

そんな思いを抱きながら、2010年にオンデザインが手がけた中華街のシェアスタジオ、八〇〇中心に仕事場を構えることができました。ちょうどその時に知り合ったノガンのTwitterで八〇〇中心の入居者募集のお知らせを見たのがきっかけです。入居にあたってはアーツコミッション・ヨコハマが実施しているアーティスト・クリエーターのための事務所等開設支援助成を受けました。

場所はJR石川町駅から歩いて5分、延平門をくぐったすぐのところにあり、僕を含めて8組のクリエーターが制作活動を行っています。冬と真夏以外は窓を開けてざわざわとしたまちのにぎわいを感じながら仕事をすることが多いですね。風がとても気持ちがよくて、お気に入りの仕事場なんです。ただ、ひとつ注意しなければいけないのは、美味しい料理を出すお店が目の前に沢山あるので、誘惑に負けて仕事を放り投げてしまいそうになるところでしょうか。

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2012年からは2年間限定でハンマーヘッドスタジオ 新・港区というシェアスタジオに参加しました。50組以上のアーティストやクリエーターが住人として参加し、様々な表現活動を行っていた場所です。普段、モノクロ平面の世界で仕事をする機会が多いので、他のクリエーターが作る色とりどりの作品にとても刺激を受けました。

新・港区ではクリエーター同士のコレボレーションがとても活発で、僕も少しですが、住人の方とコラボレーションをしました。中でも印象的だったのは、住人有志で運営する講座シリーズ「ハンマーヘッドカレッジ」に、ヨコハマ経済新聞 新・港区支局の齊藤真菜さんと一緒に講師を務めさせて頂いたことです。フォントのデザインのことや濱明朝体(仮)のことなど、参加して頂いた方と近い距離で対話できたのがとても印象に残っています。

© FuwariLAB

© FuwariLAB


それと、2年間という期間の最後に行われたハンマーヘッドスタジオ新・港区「撤収!」展(2014年3月28日から4月6日)で展示した濱明朝体(仮)のインスタレーションは、僕とアイボリィアーキテクチュア、劉功眞さんとのコラボレーションによるものです。壁面に制作中の濱明朝体(仮)を掲示したのですが、その空間デザインや施工をお願いしました。展示の様子は映像にまとめたのでよかったら見て下さいね。


これまでの5年間をふり返ってみましたが、今後は、この間に得た沢山の人からのヒントやアドバイスを糧に、様々な人とのコラボレーションを密かに期待しながら、濱明朝体(仮)を完成させるべく取り組んでいきたいと思っています。

さてさて、横浜で取り組んでいるフォントを中心に書いてまいりましたが、次にリレーコラムのバトンをお渡しするのは、ハンマーヘッドカレッジでご一緒した齊藤真菜さんです。ハンマーヘッドスタジオ 新・港区の終了後、元入居者のクリエーターと共に黄金町に新しくシェアスタジオを構えて活動されています。次回どうぞよろしくお願いいたします。

profile両見英世
1982年生まれ。千葉県出身。ウェブ制作会社を経て2007年タイププロジェクトに参加。タイププロジェクトが掲げる都市フォント構想の推進メンバーとして、「cityfont.com ― voice of a city.」の立ち上げに携わる。フォント開発とウェブサイト管理を担当。現在、横浜をテーマにした「濱明朝体(仮)」を開発中。