関内外OPEN!リレーコラムVol.2

Posted : 2013.10.25
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リレー形式で連載していくこのコラム、横浜コミュニティデザイン・ラボの五十嵐さんより2回目の執筆者としてご指名を受けました友川綾子です。私はフリーの編集ライターとして、『美術手帖』などでお仕事をさせていただいておりまして、最近の仕事で各方面からご注目頂いているのが、美術手帖×デザインの現場JOBという求人サイトの連載コラム「ART&DESIGNの仕事」です。アート業界を下支えする裏方さん達に光を当てるこのコラム、関内外OPEN!に関わっていらっしゃる方もご紹介しておりますので、ぜひご覧ください〜。と、宣伝はさておき、今回は私が2011年からスタッフとして関わっている、日本3大ドヤ街のひとつである横浜・寿町でアートを展開する寿オルタナティブ・ネットワークの活動をご紹介いたします。

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ドヤ街とは、日本各地や海外から出稼ぎにやってきた日雇い労働者たちの簡易宿泊所(通称:ドヤ)が集積している地域のこと。そのドヤ街のひとつである寿町には、力自慢の肉体労働者で、「宵越しの金はもたねぇぜ!」なんて言いつつ豪快に酒をかっくらうような、威勢のよい人々が集まっていたそうです。それはそれは、華やかで危険な香りに充ちた場所だったのだとか。危険の多い「大人な街」だったのですから、横浜で育った人は「寿町は危ないところだから行っては駄目」と躾られていたそう。

しかし、寿町の華やかかりし時代は今や昔。現在では日本各地から流浪してくる身寄りのない生活保護受給者達の終末の場となっています。街を歩くと、おじいちゃんばかり。肢体が不自由な方や、車いすの方を多くお見かけします。つまりは現在、寿町はその街自体が日本のセーフティーネットと言えるような、「福祉の街」へと変わっていっているのです。

寿オルタナティブ・ネットワークは、「福祉の街」「お金も身寄りものない人の終末の街」になりつつある寿町の変化に寄り添いながら、活動をしています。アーティストやスタッフが、寿町で出会う人々の姿から見えてくる日本の社会問題を知り、感じて、アートの担い手としてそこで何ができるのか、もっと言うと「アートには何ができるのか?」を自問自答しながら、実験的なことを多分に含むプロジェクトを展開しています。

アーティストによる先鋭化されたアートだけではなく、より柔らかいコンテンツとして地域の人々に気軽に楽しんでもらえる「寿灯祭」というキャンドルナイトを開催したり、ここ最近では「コトブキシネマ」という野外映画上映会もはじめました。

かつての華やかで危険だった寿町のイメージは根強く、一般の方にはまだまだ「怖い街」と思われている寿町。その寿町の現在を、アートを通じて多くの人に感じてもらうこと、アーティストやスタッフにとっての、アートの実験の場となること、寿町のドヤに住まう人生の荒波を乗り越えて終末の時を待つ人々にアートを通じて「ぬくもりを感じてもらえる何か」を届けること。そうしたことが寿オルタナティブ・ネットワークの活動です。

寿町エリアでおすすめのお店は「にのみや食堂」さん。コの字型のカウンターで、安くてボリュームたっぷりな定食を提供してくれる食堂です。昭和から時が止まっているような店内で食事をすると、山盛りの白飯に日雇い労働者が闊歩していた横浜の歴史が見え隠れしてきます。

さて、このリレーコラムのバトンを渡しますのは、宇徳ビルにオフィスを構えるNOGANです。NOGANの浅野さんと茂木さんは、2010年に寿町のキャンドルナイト「寿灯祭」を立ち上げた方々。横浜の創造代理店であり、ご当地クリエイターのNOGANさん、次回、よろしくお願いしま〜す!

(c)Kyoko Kawano

(c)Kyoko Kawano

友川綾子(アートライター / 編集者)
横浜市中区在住。アートギャラリー勤務や、3331 Arts Chiyoda 立ち上げスタッフなどを経て2010年よりフリーランスに。美術手帖やアートプロジェクトのニュースレターなどで編集・執筆を手がけるほか、アートプロジェクトのコーディネートや企画・運営など、現代アートのフィールドで活動を続けている。クリエイティブと地域をつなぐ手法として「地図」に興味を持ち、地図づくりワークショップなども実施。日本各地で制作されるユニークでぬくもりある地図の収集も。日本三大ドヤ街のひとつ寿町(横浜市)を舞台とするアートプロジェクト運営団体、寿オルタナティブ・ネットワーク スタッフ。